25.誘拐は日常ではありません
プラトンの街に戻って、8日。
塩問屋から帰ってくると、ペルシア様がすぐに寝室へと向かわれた。なんでも、ペルシア様には夢見という特殊な術が使えるらしく、それで誘拐されたモニークさんの娘さんと犯人とを探すらしい。
「塩問屋の娘の夢を覗くことで、犯人や居場所を特定できるだろう。」
「会ったこともないのに、それがモニークさんの夢だって判るんですか?」
「ペルシア嬢曰く、視点が違うんだと。」
「じゃあ、仲買人も夢で判ったりしないですか?」
「誘拐は探し易いんだとさ。なんでも、夢には特徴があるらしく、完全な空想と実際あった事、これからやろうとしている事とかも区別がつくらしい。そうした時、商談、謀略、脅迫なんかはありふれたもの過ぎて、特定するのが難しいんだと。」
「その点、誘拐はまだ数が少ないから探しやすいんですって。特に私達で慣れてるし。」
「慣れてる?」
お嬢様曰く、貴族は出先はもちろん、家にいても誘拐の危険があるらしく、誰しも一度は覚えがあるものらしい。貴族、怖。
そんな環境なのに、侯爵様は会ったばかりの人間をお嬢様に任せて、危機感足りなさ過ぎじゃないか?何でも屋の親仁が推薦したとしても、少しは疑えよ。レオハルト様も他人事みたいに笑うところじゃないから。
「だって、誘拐が一番対応しやすいのよ。夢に見なければ、つまり殺されているということだもの。相手は夢見のことを深く知らないから、不意をつけるし。」
「誘拐の場合、身体的な外傷がないことも多いしな。」
「ロキさん、普通は誘拐も大事です。コチラのお二方が異常なだけです。」
流石はペルシア様の侍女、カエデさん。
この非常識2人に普通を教えてあげて下さい。庶民にとって理想の貴族女性と思っていたペルシア様にも、最近チラホラ奇行が見えてた気がしていたので、カエデさんも疑ってました。ごめんなさい。
「塩問屋には悪いが、この綻びを上手く手繰れれば、かなり進捗するだろうな。少なくとも、仲買人を追い出して、市場を正常化できるやもしれん。」
「私達はどうしましょうか。」
「いつも通りだ。仕事を受けて、他に動きがないか探る。」




