23.塩問屋の事情
プラトンの街に戻ってきて7日。
塩問屋のモニークさんが、雪塩草の依頼取下げにた来た。
隠れるようにやってきたモニークさんとは少し時間を開けて店に行き、雪塩草を納品しながら小声で事情を訊く。
「今まで雪塩草は家畜のエサとして説明していたんだ。実際、ココ以外ではそんな扱いだしな。この前、調味料として卸してるのがバレちまって、、、」
「しかし、家畜のエサとなるのも事実。取下げさせる理由にはならないはずだ。」
「お上の考えは解かんねぇよ。オレも最初はそう言ったんだ。」
よく見れば、モニークさんの手は震えていた。
先代の親仁さんが亡くなって、最近店を継いだばかりのモニークさんはまだ20代だ。だが、昔から別に喧嘩が強いというわけではないのに、揉め事の仲裁や街の警備なんかもやっているので、今更小さなことで震えて引き下がることなんて早々ない。
「アイツ等、解ってねぇんだよ。これがなくなったら、どれだけの家が塩を買えるか。買えなくなるのか。」
「裕福な家なら別に。普通の家だと他を絞ればだけど、そうしない家や収入が少ない家は多分買わない。」
レオの問い掛けるような視線に答えるが、レオはあまり驚いた様子はなかった。お嬢様は確実に驚いた顔をしているが、ペルシア様も特に驚いているようには見えない。
「塩を摂らなきゃならないことを理解しているヤツがどれだけいる?そんなこと考えて料理しているヤツがどれだけいるってんだ。上は解ってねぇんだよ。」
「家畜の餌としての売買は禁じられなかったの?」
「もちろん禁止された。罰だとよ。」
ヤギやウシ等の家畜は塩を意図的に与えなければ、体液の調整や体内の消化吸収、神経伝達がうまくいかなくなる。徐々に食事量が減り、乳が出なくなって、やがては死んでしまう。
「それを理解していて、何故、、、」
「オレだって、もうどうしたら良いのか判らねぇんだよ。」
お嬢様は言葉通り理解不能だとありありと態度に出ているが、レオとペルシア様はどこか思案気な顔でモニークさんを見ている。そんな中、小さな小さな掠れるような声が耳に届いた。
「昨日遊びに出てから、帰らないんだ。」




