20.食いしん坊
プラトンに戻ってきて4日。
今日は街中の雪かきを終え、街道沿いの雪をどかしている。いや、融かしていると言った方が良いかもしれないが。とにかく雪かきをしつつ街道を北上している。街道から少し道を逸れたところに雪塩草の群生地があるためだ。
「あ、雪鶏だ。どうします?」
「また敬語になってるぞ。まぁ、雪鶏くらいなら嵩張らんし、獲っても良いんじゃないか?」
1人だけ敬語だと冒険者仲間に偽装している意味がないと言われ、絶賛敬語禁止中です。ちなみにペルシア様は雰囲気的に許されるらしい。解せぬ。
「私が仕留めてあげるわ。」
「丸焦げにする気か。雪鶏は高値で取引される高級食材だぞ。」
「売るより、カエデに何か作ってもらっても良いんじゃないかしら。」
「えっと、多分、仲買人が絡んでくると思うから、情報を取るのに使ってもイイと思う。」
威勢の良いお嬢様に、意外と食い意地が張っていたペルシア様が続く。放置すると、レオハルト様が若干可愛そうになるくらいに脱線していく2人だということも既に解っている。女3人寄れば姦しいとはよく言ったもので、家でもカエデさんと3人であっちこっちに話題を変えながらずっと喋っている。
「ロキ。手本を見せてやってくれるか?アレじゃ、炭にしそうだ。」
お嬢様は火力こそ全てとでも言いたいのか、よく火系魔術を使われる。ついでにデカイ。雪を融かすには良いが、食材に向ける火力ではない。レオハルト様が仰る通り、炭になれば良い方だと思う。
雪の降る季節は、周りに水の精霊が大量にいる。ただ、寒いと動こうとしてくれないので、少しだけ火の精霊を一緒に呼ぶ。火の精霊は、寒くともちゃんと動いてくれるのだ。というか、水の精霊だけ動いてくれない。教科書には氷の精霊とか言っていたけど、単にものぐさなのか凍っているかのどちらかだと思う。
水の針を雪鶏の脚元に廻らせ、風の精霊に頼んで、周囲の空気を薄くしながら氷の樹に釣り上げる。雪鶏が驚いて暴れなければ、意識を失っているということなので、風の刃で喉元と踵を切って血抜きする。雪鶏の血は珍味でもあるので、下に氷で受け皿を作っておくのも忘れてはいけない。
「湯は沸かしているぞ。」
「なんで貴族なのに鶏の締め方なんか知ってるんだよ。」
「ちなみに準備したのは、ペルシア嬢だ。」
おっとりした雰囲気の貴族然とした方だと思っていたら、ただの食いしん坊かよ。お嬢様に締め方とか前処理の仕方とか教えてるし。
突っ込みドコロが多過ぎて、どこから指摘するか迷った挙げ句、結局、血抜きが終わるまで、ひたすら雪かきを行った。




