19.レオ
プラトンの街にこっそり戻ってきて3日。
ロキの様子が面白い。
やはり何でも屋ですれ違った事があることには全く気付いていなかったようだ。冒険者だと明かしたら、明らかに驚いていた。さらにペルシア嬢も冒険者だと教えると、口がポカンと開いていた。
何でも屋で見かけた時は幅広の布を目元が隠れるくらい深く頭に巻いていたため分からなかったが、素のロキは面白いくらいに感情が目に顕れる。可愛げがないと噂に聞いていたため、余計にそう思えるのかもしれないが、目以外はあまり目立った変化はないのが少し笑える。
その後、何でも屋から出て一緒に雪かきを始めれば、やはり驚いた顔をしていた。街に出るにあたって頭に布を巻いていたが、見慣れれば目元が隠れようとも判りやすい。
しかし、自らスコップを持って雪かきをするのが貴族の常識から外れていることは解っているので、特に不思議というわけではないが、そろそろ貴族の常識から外れていることに慣れないものか。ロキの抱いている典型的な貴族像が間違っているわけではないが、少し面白くない気持ちになることがある。
「ロキは雪かきが上手いな。」
「レオハ、、、レオも、手慣れてる感があるよね。」
「そうか?まぁ、やったことがないわけではないからな。何かコツはあるのか?」
「コツっていうか、魔力を全身に流しつつやると、軽くなる気がする。」
「フム。ソレは身体魔術の基礎だな。魔力を循環させることで、無意識に身体魔術を使っているのだろう。」
またもや呆気にとられた顔をしているロキを微笑ましく思いつつ、身体魔術を教えるのではなく、筋力という意味での力とは別に、一定量魔力を循環させた方が良いだろうと助言した。
楽に雪かきをやろうとするとより力がこもる場所に重点的に魔力を流した方が効率的だが、何も意識せずとも自然とそうなることが多い。それより、その自然に反して一定量循環させた方が魔力制御の練習になる。
「うわっ。コレ、なんかさっきよりしんどい。」
ジト目で見上げてくる割に魔力が偏る様子はない。
十分な説明をしなくともコチラの意図を察するだけのアタマと循環魔力を一定量に保つだけの技術力。恐らくロキは、それが如何に難しいものか理解していない。
「おう、見ない顔がいるじゃねぇか。」
雪かきをしていると、3年前にこの街を訪れて以降懇意にしている冒険者仲間のオヤジ達が話し掛けてきた。
オヤジ達と歓談していると、ロキは明らかに戸惑っていたが、途中でオヤジ達との間に割入ってくれた。恐らく、オヤジに絡まれたと思って助けに入ってくれたのだろう。
しかしこの街の冒険者達とは3年以上付き合いがあるので、今更絡まれることはほぼない。これ幸いと、オヤジ達と存分にからかってやると、少し不貞腐れていた。
コレは仕方ないことだ。
何故なら、オヤジ達は自分達以上にロキを昔から気に掛け、常にからかうタイミングを探っていたのだから。幼い頃からチマチマ動き回るロキは、一部の大人達にとっては見ているだけで微笑ましい存在だったらしい。昔、話を振った時に、延々と話してくれた。
今回オヤジ達が話し掛けてきた理由の半分は、ロキをからかうためである。否、明らかに孫でも見るかのような目をしている者もいたことを考えると半分以上かもしれない。
不貞腐れた様子がさらにオヤジ達の目尻を下げさせているが、本人は確実に気付いていない。
サイラス達に送る報告書にも書いてやろう。
後日、また不貞腐れるのが目に浮かぶようだ。




