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16.嫁の貰い手的な話はNGで

 お嬢様の従者になって24日。お暇を頂いて1日。

 朝から情報過多で、お腹いっぱいです。

 領主の悪事を暴く手伝いをしろと言われていたはずなのに、実は領主は仲間で黒幕は別にいるという。ポイポス領主の悪政により物価が高止まりしているのだと思っていたら、領主が依頼主とか、もう頭がこんがらがってきた。


「ロキ。混乱してるようだが、我々がやることは基本的には変わらない。この街を苦しめる悪政を正す。ポイポス家全体が味方というわけではない。」

「ナルシス叔父様達は味方に決まっているではありませんか。」

「アストレア様。ポイポス家が動けないのは、主家がとかが理由ではありませんわ。気付いていながら、正せない。必ず裏切り者が近くにいるはずです。」

「取り敢えずは、仲買人に接触するのが先決だ。アレは確実に指示を受けているはずだし、ポイポス家によるものでもない。」


 お嬢様は納得いかないようだが、レオハルト様とペルシア様は黒幕や裏切り者を突き止めることから始める気のようだ。お嬢様の身分はレオハルト様より低い上に、お嬢様はレオハルト様の言であれば素直に従う傾向がある。ペルシア様はお嬢様より身分は低いが、やはりお嬢様は素直になる。率直に言えば、二人にはいいように掌で踊らされている。これがオフィーリア様だと、からかわれてムキになる傾向がある。ただ、オフィーリア様の場合、それを解ってやっているようなので、やはりいいように踊らされる。考えてみると、お嬢様が単純過ぎなことに気付いた。貴族社会でやっていけるのかと不安になるが、おそらくペルシア様とオフィーリア様が上手く手助けしているのだろう。今思えば、学院でのお茶会もそんな感じだった。


「ロキ。顔に出ているぞ。」


 苦笑するレオハルト様が正確に考えを推し量れているとは思わないが、その姿に少し焦ってしまう。お嬢様の様子を確認すれば、明らかに疑問符を浮かべている。これは白を切るのが一番だろう。


「ロキ。貴方、何か失礼なことでも考えたのではなくて?」


 白を切ったつもりが、なぜかお嬢様に勘付かれたらしい。説教は勘弁してほしい。


「と、取り敢えず、やることは変わらないとのことですが、結局、これから何をすればよいのでしょうか?」

「そうだな。取り敢えず、その敬語はやめろ。これから我々はただの冒険者として出歩くことになる。敬語は不自然だ。」

「え?皆さんがですか??」

「カエデは家内を切り盛りしてもらうつもりですよ。」


 ペルシア様の返答から考えると、レオハルト様とお嬢様とペルシア様は冒険者をするということになるのだろう。尊大な態度が板につきまくっているレオハルト様と少々高飛車な感じが滲み出まくっているお嬢様、おっとりとした両家の子女感丸出しなペルシア様が、冒険者とは冗談が過ぎるのではないだろうか。一般人にさえ溶け込める気がしない。良くて大店の息子、、、も無理だな。貴族感が半端ない。


「アストレア嬢は確かに登録もしていないが、私もペルシア嬢も冒険者登録はしているぞ。」

「私はB級ですが、レオハルト様は確かS級でしたかしら?」

「いや。まだA級だ。流石にS級ともなると、他の貴族たちにもばれるしな。」


 冒険者登録は誰でもできる。それこそ3歳以上であれば可能だ。登録だけなら。

 そこで活動しようと思えば、荒くれ者達の中に紛れて依頼を探し、時に怪我を負い、時に泥にまみれて仕事をする必要がある。実力があればそういったことを飛び越えて、ということはできない。登録直後は必ず最下級の仕事を複数受ける必要がある。そうでなければ、一般的な冒険者の仕事を受けられないのだ。B級ともなると、魔獣の討伐実績が問われる。A級は言わずもがなで、そこに遺跡調査等に求められる知識が問われる。


「ちなみに、俺やサイラス、イーサン、それにティグリスとトレアはお前と会ったことがあるぞ。何でも屋で。」

「は?」

「お前、街では顔を隠すように頭に布を巻いているだろう?学院では巻いていないが。」


 確かに街では布を巻いているが、学院では巻いていない。学院で巻いていると目立つのだ。

 布を巻いている姿は、街で会ったお嬢様くらいしか知らないはずだ。お嬢様がレオハルト様にそんなつまらないことを話すとは考え難い。


「登録名はレオだ。他は皆、そのままだな。」

「レオハルト様以外は特に知られても問題はないですからね。」

「そうか?女性であれば、問題が出てもおかしくないのではないか?」

「私は伯母様のことがありますし、オフィーリア様はご実家がご実家ですからね。あぁ、オフィーリア様のご実家は辺境地なので、魔獣が非常に多くて、オフィーリア様も討伐に出る必要があるのですわ。私のほうは、パラス家は代々神力との相性の良い人間が多くて、伯母も姫巫女という役職を賜っている関係で、神力を鍛えるために冒険者になることを神殿から求められますの。」


 説明を付け足してくれたおかげで、とんでもない事実を知りました。姫巫女というのは、神殿で一番偉い人の一人で、一般の民衆の支持だけで言えば神官長はもちろん王様より人気の人だ。天災や人災を不思議な力で防いでいるといわれている。神力というのは姫巫女を筆頭に神殿でも一部の人だけが使えるという不思議な力のことで、魔術と違い、人心や精霊に関与することができるといわれている。


「では、私もアストレアのままで良いですわ。愛称にしてしまうと、トレアと被ってしまいますし。」

「そうですわね。学院に行っている上に、私やオフィーリア様と懇意にしていらっしゃるので、アストレア様も既に魔獣を打倒したことがあることになっていますものね。」

「実際に倒したことはありますわ。お父様と遠出した時のことですけれど。」


 ペルシア様やオフィーリア様のような理由がないお嬢様は嫁の貰い手的な問題が生じるのでは、と思うが、そんな繊細な話題を出した時の女性陣3人の反応が怖い。レオハルト様と目があえば、静かに首を横に振られた。


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