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14.それじゃない感

 お嬢様の従者になって23日。

 ようやく雇い主に呼び出されました。結局、この2日間は厩番の爺さんの手伝いをして過ごしました。執事長も、「取り敢えずソレを続けるように」と仰ったし。

 お陰様で、口調が昔に戻ってしまった気がする。爺さんと話してると、何でも屋の親仁と話してる気になってくるんだよな。何でも屋の親仁の方が、爺さんの子供でもおかしくないくらい若いのに。


「どうだ、王都を満喫しているかね?」

「、、、移動魔法陣を使わせて頂き、ありがとうございます?」


 侯爵の質問の意図が解らない。世間話的なものから本題に入るつもりなのかもしれない。


「移動魔法陣なぞ、なんの面白味もないように思うが、、、他に気になるものはないのか?」

「食事も十分過ぎるものを頂いております。ありがとうございます。」


 侯爵の表情を見る限り、この返答はお気に召さなかったらしい。何が聞きたいんだ、このおっさん。

 レオハルト様やサイラス様との会話が懐かしい。


「、、、遊びに行く金がないのか?」

「給金は十分に頂いていると思います。」

 そのお金で遊びに行くかは別として。

「では、何が問題なんだ?」

 こっちが訊きたい。


「ダグラス様は、王都で何をして遊んだか、どんな店に行ったかなどを訊いておるのだよ。」

 執事長の言葉で今までの質問の意味を理解できたが、何故そんなことを訊くのかが理解できない。


「特にお屋敷を出ておりません。」

「街歩きは好まんのかね?」

「いえ、どちらかと言えば好きです。」

「王都が好きではないということかね?」

「いえ。よく知らないので、特に嫌いということはありません。」


「ダグラス様は、何故、街で遊んだりしないのかを訊いているのだよ。」


「あぁ、それは単に、お休みを頂いていないからです。」


 普通に答えただけなのに、何故か驚いている侯爵と執事長。今の返答に、驚く要素があっただろうか。レオハルト様、サイラス様、解説をお願いします。


「いやいや、今、学院は長期休暇だろう。」

 分かりきったことを訊いてくる侯爵に、気持ちが表情に出てしまった。

「侯爵は、長期休暇中は羽根を伸ばして構わないとお考えだったのだ。、、、侯爵、ロキは恐らく、この2日は厩の仕事をしていたのだと思います。」

「どういうことだ?」

「先日、厩の手伝いを申し出てきたので、私が許可しました。」

「厩番がいるだろう。」

「厩番はいつもの仕事を熟されてますよ。私がしたのは、簡単な厩の修理なんかの普段、手が回らないところです。」

 実際には爺さんの手伝いもしていたが、それを言ってしまうと爺さんが仕事をしていなかったと捉えかねられない。


「なるほど。状況は解った。私としては、学院の長期休暇中は従者の仕事も休みとして考えている。学院では四六時中仕事なのだから、ここでしっかり英気を養って欲しいということだ。もちろん、給金は据え置きだ。給金は固定給として契約しているはずだからな。」

 報告だとか今後の計画とか指示とかを仰ぐために、王都まで呼び出されたわけではなかったらしい。休みなら、プラトンの街でいつも通りに過ごしたかったと言ってはいけないのだろう。


「お父様!お話は聞かせて頂きましたわ。」

 勢いよく扉を開けて、お嬢様が部屋に入ってきた。一歩ずれていたら、扉に激突されるところだった。危なかった。


「レオハルト様の仰っていた通りだなんて、私、とっても恥ずかしいですわ。仕事の報告とか今後の仕事の指示とか、王都でも何らかの役回りがあっての召喚かと思えば、王都で英気を養えですって?」

「トレア?何をそんなに、、、」

「怒りもしますわ!報告も指示も、ロキの教育まで何もかもレオハルト様にお任せして、果ては慣れない王都で休めてすって?ロキにはロキの都合というものもあるのです。」

 これは本当にお嬢様なのだろうか。レオハルト様が変装してるとかじゃないよね?


「ロキ!貴方は王都にいたいのですか?それともプラトンへ戻りたいのですか?」

 お嬢様の剣幕に圧されて背筋がピンと伸びはすれど、流石に雇い主を批判するような返答はできなかった。しかし、そこはお嬢様。自分の中で既に答えをお持ちだった。


「ロキにはプラトンでやることがあるのです。お父様の依頼されていることも、ロキが王都にいるよりプラトンにいた方が捗るかと思いますし。王都でのことはお父様の方でなんとかなさって下さい。お父様方の目が届き難いところは、ユリシスやオフィーリア様が対応してくださいます。」


 勇ましく言い切るお嬢様に、部屋に元々いた面子は呆然とするしかなかった。立て板に水と言わんばかりに、言葉を挟む空きもない。


「ロキ。下で馬車が待っています。急いで支度をなさい。良いですわね?お父様。」


 侯爵が首を縦に振る前に、反射的に「はい」と答えてしまってました。言っていることはお嬢様らしくないのに、従って当然と言わんばかりの態度がお嬢様らしくて、別人説はたち消えました。

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