12.レオハルト=デ=オルクス
レオハルト=デ=オルクスは、物心ついた頃には王となるべく育てられてきた。1番幼い記憶は乳母の読み聞かせの声だが、読み聞かせられていたのは帝王学の教本だった。基本的には、帝王学と歴史が多かった。次いで、諸外国の歴史。絵本というモノを知ったのは、サイラスが従者になってからだった。
「よし、こっそり市井に降りてみよう。」
「いやいや、何を仰っているんですか?こんな良い服を着た子供が街を歩いてたら、ゴロツキの恰好の餌食ですよ!」
「ゴロツキ?」
「あー、ゴロツキというのは、なんて言うか、、、うーん。。。」
「ゴロツキか。恰好の餌食ということは、このまま行けば、会えるということか。」
「いやいや、待って!待って下さい!!父さんに怒られるから!!!」
初めて街に降りたのは、確か5歳の時だった。サイラスの父親でもある執事長にばれないように、綿密に頭の中だけで構想を練って唐突に実行に移したのだ。
それからもしばしば市井に降りるようになり、徐々に人目を気にしないようになったが、いつの間にか黙認されるようになっていたので問題にはならなかった。それを良い事に、堂々と領地を跨いで遠出というか旅をしたこともある。というか、実は冒険者ギルドに登録もしている。
友人のイーサンに冒険者ギルドでばったり会った時は、さも有りなんと思ったものだが、ティグリスとトレアに会った時には流石に驚いてしまった。武人肌なイーサンが実戦を求めるのは当然の帰結だと思ったが、学者肌の2人がというのは意外だった。理由は遺跡巡りと薬草採取のためと、意外でも何でもないものだったが。
「ロキは、何でも屋で会ったことがあるのには、気付いてないみたいだな。」
「まぁ、アイツ、いっつも脇目も振らずに仕事してまわってましたからね。そういうレオハルト様も、学院に入学してきてるの、気付いてなかったじゃないですか。」
「1年とはほとんどすれ違うこともないだろう。」
苦しい言い訳だと解ってはいるが、取り敢えず弁解してみた。数日前にアレース侯爵家に雇われた侍従のロキは、かなり幼い時分から何でも屋に出入りしている冒険者だ。この街に初めて来た年から3年は経つが、あまり背丈は変わらないように感じる。学院と学院の外とではロキの周囲にいる人間の背が違う上に、レオハルト自身の背丈もずいぶん伸びているので、存分に主観が入ってしまっているが。
「そもそも格好があまりに違い過ぎる。特に、あんなに目深に布を頭に巻き付けていたら、人相も髪の色もなにも判らないだろう。逆に、お前もアストレア嬢も、よく気付いたな。」
「なんか、目についちゃうんですよね。チビだからですかね。」
街で見かけたロキは、鼻と口元以外ほとんど見えないくらいに幅広の布で覆っていた。何でも屋では珍しくはない風体ではあるが、幼児がしていると違和感が凄かった。
「ポイポス家の不正を暴くのに、ロキの協力は不可欠だが、さて、どうやって信用を得ていくべきか。」
「レオンは、無駄に堅い雰囲気だからなぁ。余計に警戒されてたりして。」




