第四話 透の日常
根本的には間違っていない、というのはどういう意味だろうか。その推論の仕方は全くダメという訳ではない、という意味だろうか。
透は少し考え、本人に聞けば良いことに気付き思考を切り替える。取り敢えず宿題を終わらせなければ。
ドタドタ
と階段を誰かが登ってくる音がした。
ガチャ
「兄ちゃん風呂沸いたよ」
妹の静香がノックもせずに部屋に入って来た。名前に反して欠片も静かじゃないあたり、子供とは親の思い通りに育たぬものだと思う。
「静香、他人の部屋に入る時はノックをしろと言ってるだろう。」
幾度となく言っているので半分くらいは諦めつつ一応釘を刺しておく。
「何、妹に見られたら困ることでもあんの?あー。分かったー。お兄ちゃん彼女居ないからって一人寂しくオナニーしてるんでしょ。」
もう少しオブラートに包んだ言い方は出来んのかね妹よ。
「お前ももう中二だろ?そろそろ恥じらいと言うものを覚えろ。年頃の女がオナニーなんて言うもんじゃない。」
まあ風呂が沸いてるなら宿題をキリのいいところで区切って入るか。
風呂に入ってさっぱりした透は食卓についた。今日の晩御飯のメニューはササミ玄米ご飯とサラダらしい。意識高過ぎじゃないかい?ボディービルダーでも目指してるのかな?
「戴きます」
「ところで透。今日少し遅かったけど部活の見学でもしてたの?」
「ああ、そうじゃなくて、授業の質問してたんだ。」
「授業の質問だけでそんなに遅くなるはずがないでしょう。白状しなさい。」
ええー!?嘘ついてる前提?酷くない?俺そこまで下らない嘘つく息子じゃなかったよねぇ…?
「いや本当に。色々教えてくれたから遅くなっただけだよ。」
「嘘おっしゃい。ネタはあがってんのよ。」
その後なんとか理解して貰えたが、納得していないようだった。訳が分からないよ。
朝。ホラー映画の復讐シーンで流れる音楽で意識が現実に戻る。うん。今日もいい朝ですね。
着換えを済ませ、スマホを開いて夜に溜まったゲームのスタミナを消費すると
ガチャ
「兄ちゃん、朝ごはん。」
静香が入って来た。だーかーらー!
「ノックをしろと以下省略」
「そういえば兄ちゃん、昨日怒られた?」
「うん。先生に質問してたって言ったら一応納得してくれたけど、やたらと問い詰められたな。」
「私がお母さんに『お兄ちゃんが知らない女の人とデートしてたよ』って言ったんだけど、逃げ切ったか。」
「ハァ?なんで?」
犯人お前かよ
「昨日兄ちゃんが帰って来た時女の匂いがしたから。デートしてないの?」
「質問したのが女の先生だったから、そのせいだ。いい迷惑だからやめろ。お前のせいであらぬ疑いをかけられただろうが。」
「えー。お兄ちゃんに女の影があったら報告するのが妹の義務でしょうー。」
なんなのお前のお兄ちゃんへの執念は。怖いよ。ラノベ的な兄への恋愛的好意からやってる訳じゃないところが更に怖いよ。
取り敢えず朝ごはん(豚肉の生姜焼き、玄米ご飯、味噌汁サラダ、そして牛乳、に見せかけたプロテイン。正直朝ご飯にしては重い。)を食べて自室へ。そろそろ僕も普通のご飯が食べたい。筋トレガチ勢じゃないので美味しさよりPFCバランスを重視したご飯は卒業したい。
学校の準備も終え、登校。因みに高校は自宅からの直線距離の近さで選んだのだが、自転車で40分以上掛かるのでやや選択を間違えた感は否めない。ヘルメットとグローブをきちんと着用し、あまり信号のない道を飛ばして到着。タイムは43分51秒。よし、昨日より2秒短い。誤差じゃないかって?細かいことは良いんだよ。
朝礼の1時間前に着き、範囲の先取り。俺の生活は、普通かどうかはさておき割とまともな方だと思う。
自習を終え、授業の準備を始める。担任が教室に入って来た。
キーンコーンカーンコーン
「きりーつ!」
今日も一日が始まる。