三日目 3
「べ、別にあんたの為に行くんじゃないんだからね!」
「いや、さすがにそのキャラ変は無理があるでしょ」
突然転職した挙げ句、キャラ変までされては最早別作品だろう。
しかし縁結びか……うっかり学年一の美人と遭遇して……
『あれ、君もここに来たの?』
『うん。偶然だね』
『もしかして誰か縁を結びたい奴がいるとか?』
『うん、実は……あなたと』
『えっ?』
『ずっと……好きでした』
「稚拙な妄想ね。今日び中学生だってそんな都合いいヒロイン思いつかないわよ」
「何で人の妄想を当たり前のように読んでるんだよ!」
「頭上に表示されてるわ」
「マジで!?」
「もちろん嘘よ。でもそんなにみっともなく口元緩ませてたら顔に書いているようなものよ」
「ぐっ……」
そう言われては反論することができない。実際緩んでいた自覚はある。だって男の子なんだもん。
……とまあ楽しい妄想はさておき、あの人は一体何を考えているんだ。
……もしかして……いや、もしかしなくても……。
色々考えそうになるが、いつの間にか皆が遥か先を歩いていたので、慌てて追いかけた。
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貴船神社は平日にも関わらず(京都の観光名所はどこもそうだが)観光客がかなりの数散策している。
これまでと違うのは、その雰囲気がどこか色めき立っていることだ。海外からの観光客も事前に調べているからか、同じような雰囲気を纏っていた。ちなみに俺もだ。
本殿へ向かう参道はパンフレットやネットで見た通りの緑の綺麗な外観で、ここだけでも来た価値を見い出せる。
その道すがら、自然と横に並んでいたツアコンさんが話しかけてきた。
「君は部活とかやってるの?」
「いえ、帰宅部です」
「そう、だから彼女がいないのね」
「それ関係あんの!?」
「無関係とは言えないわね。やっぱり先輩後輩の関係を作りやすいのは大きいわ」
「…………って、いやいやいや!今そんな話いいから!」
修学旅行で……しかも観光地でする話題じゃないだろ。話し方に妙に説得力あって、つい頷いてしまったわ。確かに先輩後輩の知り合いはいないけど。
ただ、今そんなことを考えても仕方ないので、少しでも景色を胸に焼き付けようと目を凝らしてみる。あぁ、青春だよなぁ。
……いや、待て。
何故俺は自然とツアコンさんと並んで歩いている?今に始まったことではないかもだけど……。
こういう時はさりげなく普段話さない女子とも話をして……
「あの子達好きな人いるわよ」
「…………は?」
「ガールズトークで聞き出したわ」
「…………」
俺は目の前が真っ暗になった……。