三日目 1
「ねえ、お姉ちゃん!おっきくなったらボクと結婚して!」
「いいわよ」
「やった!!」
********
「……何だ、今の夢」
夢にしちゃこっ恥ずかしすぎる。あんなのクラスメイトに見られたら赤面どころじゃすまない。いや、見られる心配なんてこれっぽっちもないんだけど。ていうか、本当にどうした、俺。欲求不満だからといって見るような夢じゃないだろ。
時計を見たら、もう朝の5時半になっていた。
起きるにはまだ早いが、寝直すには微妙な時間だ。仕方ないからボーッとしながら今日の日程について思いを馳せることにしよう。
……さすがにあの人は出てこないよな。
いや、これじゃあ期待しているみたいというか、なんかフリみたいになってる気がする!
すると、まるで狙いすましたかのように携帯が震えた。
「び、びっくりしたぁ……なんだ、メールか」
いや、待てよ。こんな朝早くからメール?
スパムの可能性を考えながら確認すると、相手はやはり……
『おはよう』
……スパム扱いでいいよな。
すると、再び携帯が震えた。
『スパム扱いしないように』
「……読まれてやがる」
とりあえず……今日も賑やかな1日になりそうな気がした……。
********
「それでは皆さん、今日は楽しい1日にしましょうね!」
『はーい!!』
「…………」
おい、何でウチの班だけツアーコンダクターみたいなのがいるんだよ!しかも班の奴らも普通に受け入れて小学生ばりの元気な返事してやがるし!!
「あの、先生……この状況は放置していいんですか?」
「可愛いは正義です」
ダメだ、こいつ。はやく何とかしないと……いや、もう無理か。
てか、もうタイトル崩壊してないか?なんてメタな事を考えていると、元バスガイドさんはにこやかな笑みで近寄ってきた。
「今日はよろしくね」
「キャラ変と転職のスピードが異常すぎる……!」
「何事も思いきりが大事よ」
「あんたはよすぎるんだよ」
「嬉しそうな顔が隠しきれてないわよ」
「やかましいわ!」
ぶっちゃけ、ちょっと嬉しいから否定できない。
……いや、こういうのはあまり素直に認めないほうがいいのだろうか?ええい、考えるのはやめよう。なんかこっちの心境を読み取ってそうな笑顔がうざいし!
あとそろそろ聞いておきたいからな。何故やたらと絡んでくるのかを。
ふと空を見上げて見ると、雲一つない晴れ渡った青空に今さら気づいた。
……とりあえず視界は良好らしい。
騒がしいけどいい一日になるはず……だよね?
「はやく行くわよ。キリキリ歩いて」
「さっそく仕切るのかよ……」