二日目 3
二日目に泊まる宿に到着すると、バスガイドさんは今回は宿には入ってこず、バスに乗り込んでいた。どうやらここでお別れのようだ。
……いざ離れるとなると寂しいもんだな。
するとポケットの中の携帯が震え始めた。
画面を確認してみると、バスガイドさんと名前(?)が表示されていた。ああ、さっき連絡先交換したばっかだった。最早知り合いみたいな関係になっちゃってる。
とりあえず電話に出ると、何故か深呼吸みたいな音が聞こえてきた。
「……あの、もしもし?」
「よかった。繋がったわね」
「まあさっきも確認してましたけどね」
「これで心ゆくまで修学旅行をサポートできるわ」
「一回もサポートされた気はしないんですけどね」
「気遣いとはわからないようにするものよ」
「じゃあ今言わなきゃ満点でしたね」
「それはそうと今日は楽しかった?」
「話題の変え方雑!!……まあ楽しいは楽しいですよ。こんな修学旅行を過ごしてるのは日本どころか世界に一人でしょうからね」
「世界一楽しい最高の修学旅行ね。よかったわ」
「かなり自分に都合のいい解釈をされたような気がするんですが……」
「あ、もう時間ね。それじゃあ」
「えっ?あっ……なんだったんだ」
電話だけで無駄に疲れた気もするがまあいい。
俺はしばらくバスの遠ざかった方向を見てから、宿に入った。
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「なあなあ」
「?」
消灯時間になり、真っ暗になった部屋でうとうとしかけていると、急に肩を叩かれ声をかけられた。
「……どした?今せっかく寝れそうだったんだけど」
「お前さ、あのバスガイドさんと仲良すぎじゃね?」
「あー……気のせいだろ」
「いや、さすがにそれは無理があるだろ」
「どこがだ。バスガイドとの距離感なんてみんなあんなもんだろ」
「んなわけあるか!お、お前、もしかしてあのバスガイドと……」
「すー……すー……」
「おいっ、寝たふりすんな!」
「消灯時間は過ぎてるぞ」
「あっ、はい!すいませんでしたー!」
まったく……んなわけないだろうが。
だが、余計なことを言われたせいで、しばらくはバスガイドさんが膝に乗って時の感触を思い出してしまい、しばらく眠れなかった。
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「ねえ、どういうこと?バスガイドの制服着たら欲情するんじゃなかったの?」
「そんなこと一言も言ってない。昔バスガイドさんに懐いた話をしただけ。ダメなら他の服着ればいいじゃない」
「タイトル崩壊しちゃうじゃない」
「何の話よ。とりあえずもう寝なさい。おやすみ」
「あっ……仕方ないわね。明日こそは……!」