表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

三日目 12

「弥生お姉ちゃん……そうだ、俺……」

「えっ、何?どうしたの?もしかして……」

「うん、思い出した……」

「えっ、マジで?どんなタイミングかしら?」

「すいません」


 まじまじとこちらを見つめるツアコンさん、もとい弥生お姉ちゃん。

 やがてその表情にはこらえきれない喜びがにじみ始めた。


「やったぁ!」


 そう言って思いきり抱きついてきた。

 過去にこうされていたこともまざまざと思い出すことができた。

 きっかけはさっき写真を撮ろうとしたあの瞬間。

 俺は確かにこの景色を見たことがあった。

 小さな頃、二人で親がテーブルの上に置きっぱなしにしてあった旅行雑誌を見た時……


『ここきれいだね〜』

『そうだね〜、翔太くんはこういう場所行きたいの?』

『うん!絶対お姉ちゃんと一緒に行く!』

『そっか。じゃあ おっきくなったら一緒に行こうね』

『うん!』


「……ごめん、弥生お姉ちゃん」

「いいのよ。後でたっぷり償ってもらうから」

「うっ……」


 償ってもらうって……なんか強めのワードが出てきたんですけど……。

 汗が背中を伝う感触にぞわぞわしていると、弥生お姉ちゃんがぷっと噴き出した。


「冗談よ、冗談。そんな怖がらなくてもいいじゃない」

「いや、教師の弱みを握りまくってる人から言われると恐怖が止まらないというか……」

「それはそれ、これはこれよ。思い出してくれたなら言うことはなし」

「ならいいですけど」

「あ、でもクラスの子と浮気しようとしてた事に関しては後でゆっくりと聞かせてもらうわよ?」

「……はい?」


 あれは浮気に入るのだろうか?ていうか俺達の関係はもうそういうことになっちゃってるのか?展開がアレすぎてついていけてないんだけど。


「まあ、それは向こうに帰ってからきっちりやればいいわね」

「そ、それより、観光してこうよ!せっかくの京都なんだから楽しまなきゃ!」

「うふふ、それもそうね。楽しみは後にとっておかなくちゃ」

「楽しみとか言っちゃったよ……」

「大丈夫。痛いことなんてしないから」

「それ多分痛いやつですよね。そうですよね?」

「大丈夫、痛いのは私のほうだから」

「いやいや、未成年相手に何どストレートな下ネタかましてるんですか!」

「あら、いけない。喜びが溢れ出しちゃったわ」


 今溢れだしたのは単なる欲望だと思うんだけど……。

 そんなことを考えていたら、さっきみたいに手を繋がれた。


「じゃあ後1時間位は一緒に楽しみましょうか」

「……はい」


 そんな無邪気な笑顔を向けられたら、もう頷くしかないじゃないか。

 夜の京都はほんのりとした灯りの中でぽつぽつと人が行き交っていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ