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三日目 8

「懐かしいわね。君とこうやって並んで歩くのも……」

「そうですね。でもさっきまで割と並んで歩いていたような……」

「君が思い出す前と後じゃ何もかもが違うのよ」

「……そうですか」


 俺の緊張感と罪悪感も嘘をつく前と後で何もかも違っております!

 胃がキリキリするような感覚を堪え、次にどんな言葉をかけられるかを全力で予測を立てる。


「ねえ、覚えてる?君が小さい頃から私に懐きすぎて、私が家に帰ろうとすると泣きじゃくっていたこと」

「あはは、いくらちっちゃい頃だからってそこまでだったっけ?」

「あら、これは君が小学5年生のころの話だけど……」

「…………」


 そこそこ大きい頃の話じゃねえか!

 なんかめちゃくちゃ恥ずかしいわ!

 俺が覚えてないのって恥ずかしい思い出封印しただけじゃね!?


「泣きながら『お姉ちゃん帰らないで!何でもするから!他には何もいらないから!すべて捨てるから!ぼくを全部あげるから!』って叫ぶ君の顔は今でもはっきり覚えてるわ」


 どんなLOVE PHANTOMだよ!そりゃおぼえてるだろうよ!ていうか、そんなの今すぐ忘れてほしいんだけど!!


「そ、そういえばそんなこともありましたね……」

「ええ。そんな君が今ではこんなに大きくなっちゃって……初日離れる時は昔みたいに泣き叫ぶんじゃないかと心配したわ」


 そんな奴の事誰が好きなんだよ。生涯笑われるレベルの黒歴史じゃねえか。

 色々考えながら歩いていたら、いつの間にか金閣を眺められる場所まで来ていた。

 きらびやかなその外観は、今の気分にはそぐわないが、それでも教科書に載るような有名な場所に来れたという達成感と、観光客の賑わいがつくる高揚感につられるように、少しの間目を奪われていた。


「綺麗ね」

「そうですね」

「そこは『君のほうが綺麗だよ』と言うべきじゃないの?」

「さ、さすがにそれは恥ずかしくて……」

「小学3年の頃はあんなに言ってくれたのに」

「マジで!?」


 何考えて生きてたんだ俺は!もしかして小学生時代に、常人の人生1回分ぐらい黒歴史量産してたのか!?


「そんなことも忘れてたのね。まったくもう……」

「ま、まあ、今は修学旅行を楽しもうよ、ね!?」

「確かにそのとおりね。思い出は振り返るものではなく、作るものよね」


 おおっ、なんかいい感じの言葉が出てきた!このままうまいこと、新しい思い出をたくさん作る方向で行けば何とかなりそうな気がしてきた。

 この時の俺はそれが甘い考えなどと欠片も考えていなかった。

 


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