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三日目 6

「ふぅ……」


 精神統一をはかり、記憶の糸を一本ずつ手繰り寄せ、その輪郭がはっきりしてくるまで意識を研ぎ澄ませ……無理だな。そんなんできるならとっくにやっとるわ。

 もしかして、この京都の街に秘密があるとかじゃないよな?

 だとしたら今から行く場所にも何らかの意味があるはず!

 ……これまで行った場所にも何かあったかもしれんけど。

 もし見落としてたらどうしようと思いながらも、俺はこの先の目的地に思いを馳せた。


********


「金閣か……」


 京都有数の観光名所に到着し、いざ実物を目の前にしてから、記憶と結びつけようとしても何も思い浮かばない。


「随分悩んでるようね。観光地で見せる顔じゃないわよ」

「誰のせいだと思ってるんですか」

「君がはやくケリをつけないからよ」

「……それはそう、なんですけど」

「下心に突き動かされてもその程度なのね。ED?」

「んなわけあるか!」

「じゃあ、まだ頑張れるわね。あ、ちなみに京都とかは関係ないわ」

「…………は?」

「私、京都に来るのはまだ3回目だし。旅行で来た思い出しかないから、どれだけ京都の事考えても何もうかばないわよ」

「何やて!?」


 思わず関西弁でツッコんでしまった。

 俺はなんて無駄な時間を……いや、まだそんな時間も経ってないか。

 ツアコンさんはじーっとこっちを見ながら、さりげなく足を踏みつけてきた。


「ごめんなさい。わざとよ」

「潔すぎてびっくりです」

「はぁ……君の記憶力の悪さにはびっくりね。成績大丈夫?」

「上の中くらいです」

「……今日一番の驚きだわ」

「ナチュラルに失礼!一応真面目ないい人で通ってるんですけどね」

「何そのモテない代名詞みたいな評判。ちょっとお姉さん泣けてきたわ」

「やかましいわ!」

「昔からそういうところは変わらないのね。……危ない。うっかり思い出話しちゃうところだったわ。なかなか誘導尋問が上手いわね」

「何一つ誘導しようとはしてないんですが……てか、今の言い回しだと……あっ」

「えっ!?も、もしかして……」

「すいません、トイレ行ってきます」

「……置いていくわね」


 その言葉が冗談であることを祈りながら、俺はまっすぐにトイレへと向かった。


 ********


「あっ、もしもし、母さん?聞きたいことがあるんだけど……」

「なるほど、お母さんに聞こうとするとは……よく考えたわね」

「な、何でいるんですか!?ここ男子トイレですよ!?」

「今だけ男」

「今日びババアでもその言い訳しねえよ!」

「あら、アンタ今弥生ちゃんと一緒にいるの?」

「……………………えっ?」

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