プロローグ 『10年前の古城にて』
(ようやく私たちの願いは叶う。
ようやく私は彼らに顔向けすることができる。
ようやく私の「正義」を実行することができる。
君たちにとっては、私の「正義」はどんな物よりも酷く惨い悲劇であるだろう。
そりゃあそうだ。
君たちにとってこれは滅びの運命でしかないのだから。
悪逆非道の限りでしかないのだから。
君たちには本当に申し訳ないと思っている。
だがこうすることでしか成し得ることのできない
「正義」もあるのだ。
・・・これは正義と呼べる代物なのか?
大勢の生命を切り捨てるこの行為が?
程なくしてこの世界には滅びが訪れる。
ああ、君たちの事を思うと本当に心が痛む。胸が引き裂かれそうな思いに駆られる。
だが私が君たちに対しこんなことを想うのは偽善を通り越して邪悪な道化でしかない。私には憐れみすら赦されてはいないのだ。
ではどうすれば!
どうすれば私はこの形容しがたい罪悪感から開放されることができるのだ!
私は・・・!
・・・とうに引き返すという選択肢は失っているというのになぜ今更私はそんな無意味な考え事をしているのだろうか?
やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。やるしかない。
そうだ、私にはこの罪悪感よりも遥かに堪える痛みを知っている。
私は必ず事を成す。成さなければならない。
こういう時になってうじうじ考え事をするのは私の悪い癖だ。
大丈夫だ。彼らを救うために私はここに来たのだ。
もう迷わない。
―只今準備が完了した
さあ、ようやくだ…ようやく―
…足音が聞こえてくる。ちっ!)
「とうとう此処まで来たか!迎え撃って―」
彼が足音の主と目を合わせたときには彼の身体は既に地に伏せていた。何が起こったか考える余裕すらなく、仰向けに倒れた。
「貴様が『魔王』だな。そのまま無様に死ぬが良い。貴様の目論見は直に全て崩れる。」
片方の目の瞳孔が真っ赤な男はまるでゴミを見るような目で地に伏せた男を見下している。
「魔王」と呼ばれた男は
薄れゆく意識の中で深い絶望と「罪悪感」に苛まれながら、
遠い昔に聞きなれたその低い声に淡い懐かしさを感じながら、
今まさに見下している男の顔によく似た顔の男のことを思い出しながら、
声も出せずに消えていった。
初投稿どころか小説を書くのすら初めてです。
小説と呼ぶには少々短すぎる気がしますが、素人以下でありますのでそこはご容赦を。
こんな稚拙な文章をここまで見てくださった皆様には感謝しかありません。
もしこの続きも見ていってくださるならば私にとってこの上ない喜びです。