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新生児室に誰かが入って来た。

 あーあ、何とも言えない虚脱感と解放感と、幸福感と、自己嫌悪と共に、これから先の人生展望について考えていると、コツコツコツと音が聞こえた。どうやら廊下から聞こえてきているらしい。

 ガチャ! というドアを開ける音が聞こえて、誰かが部屋の中に、新生児室の中に入ってきた。

 コツコツコツという音は部屋に入って来たことにより、先ほどよりも大きく聞こえるようになっていた。そしてその音はだんだんと更に大きくなってきて、俺の方へ近づいてくるかのようだった。

 まさか、俺の顔を見に来たんじゃないだろうな。でも、一体誰が……?

 俺の心は不安が渦巻いていた。

 それが俺を生んだ親ならば、まだいい。というか安心出来る。しかし、俺がここにいる理由が未だに分からない今は、まだ俺が、この世界に輪廻転生したのではなくて、何者かによって赤ちゃんにさせられた可能性だってまだあるのだ。

 俺は吉と出るか凶と出るか、頭の想像の中でコインを弾いて、宙に飛ばし、裏か表かを予想した。ちなみに裏が母親で、表が俺を小さくした悪者だ。俺は想像コインを手でキャッチする。

 俺の視界の先に若い女の顔が見えた。裏だ。

 よっしゃーーー!! 

 勝ったーー!! 

 俺はガッツポーズを上げた。

 すると、俺のその行動を見た母親が少し、驚いた後、にこりと笑った。

「すごいわ。この子、もうガッツポーズをしているわ」

 母親がしきりに感心している。

 そこで俺は気づいた。あっ、俺の初めましての、かーちゃん、日本語を話している。

 ようやく俺は少しずつ、自分の状況を理解することが出来るようになってきた。

 まず、俺はやはり、転生したということ、そして転生した先は異世界ではないということ、前世のはっきりとした記憶こそないものの、俺が日本語を喋れるということは、俺の前世は日本人で、そして今俺の目の前にいる母親も、日本語を喋れるということは、つまり母親も日本からの移民や、日本語を勉強した外国人とかではない限り、日本人ということになる。

 俺は母親の顔をじっと眺めて観察した。

 それは中国人や韓国人というよりは、やはり日本人に近い感じの顔に思えた。つまり普通に考えると、俺の母親は日本人ということになる。よし、一つ理解したぞ。

 しかし、母親はかなりの確率で日本人ということは分かったのだけれど、俺の父親はどんな人なのだろうか。俺はちょっとだけ、わくわくすると同時に、怖くもあった。でも、この母親はとても笑顔が素敵な人に思えたので、悪い人を自分の旦那にするようには思えなかった。まあ、それはいずれ、のちほど分かってくるだろう。そして俺に姉や、兄貴などはいるのだろうか。そこの所も多少だが、気になった。しかし、今は俺は赤ちゃんなので、今は自分のことで一杯一杯おっぱいというのが、現状だった。ああ、くそ、赤ちゃんだから、無意識の内におっぱいって言ってしまったぜ。しかしそれは赤ちゃんにとっては重要な食事でもあるので、仕方がないと言えば、仕方がなかった。そして、俺自身やはり、今現在、おっぱいはただの食事としてしか思えなかった。それが赤ちゃんというものなのだろう。たぶんな。でも、うんちに関しては羞恥心があったので、赤ちゃんとしての本能と、自分の羞恥心などとの心のバランスはまだ現時点では自分では、よく分からなかった。まあ、これから少しずつ分かって行くことだろう。

 俺はそう思い、母親のことをじっと見つめた。

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