俺は、赤ちゃんになった……のか?
「そんな、馬鹿な……。本当に俺は生まれたての赤ちゃんになったって言うのかよ」
呟いた所で俺はふと気づいた。
でも、記憶はあるのか? 言葉は発することが出来るっていうのか?
思い立って、記憶の糸を辿る。
辿って辿って、辿って行く……。しかし、記憶の糸の先はこんがらがっているのか、あるいは切れているのかは分からないが、思い出すことは出来なかった。
「思い出せない。自分の名前も、自分の前世も全く思い出すことが出来ない。思い出すことが出来るのは、いや覚えているのは日本語と、ごく僅かな知識だけっていうことか……」
ちなみにその僅かな知識というのは、油分を取るのに、コンビニのビニール袋で手を拭くとか、炭酸が抜けないようにするには、ペットボトルを逆さにするとか、そんな豆知識だった……って、もっと大事なことを覚えておけよ! 俺! くそが! クソ野郎が!
自身に突っ込みを入れるが、赤ん坊の俺が言っても客観的にみると、何だか意味がないというか、ただ可愛いだけな感じだったので、どことなく、恥ずかしかった。
くそ、これから俺はどうなって行くっていうんだよ。まるで変な薬を飲まされ、子供になった漫画のキャラみたいだ。
思った所で、俺はハッ! とした。
思い出した。漫画のキャラを高校生名探偵のあの漫画を。よし、よし、少しずつではあるが、記憶が戻っているのかもしれないぞ。
俺はこれから自分の記憶を取り戻そうと心に決めるのであった。
それにしても、もしかしたら本当に俺は漫画の展開と同じで、ある薬で子供に、いや赤ちゃん戻されたのかもしれないぞ。
そんな、漠然とした不安が襲ってきて、心の中にパトカーが来て、ファンファンと音を鳴らした。不安だけに。