パラケルススの万能薬・秘薬「アゾート」について 考察
パラケルススは奇跡の医師とか放浪の錬金術師としてつとに有名ですが、
この万能の天才の全業績をわたくしごときがここで述べ尽くすことなど不可能ですから、
ここではただ彼の作り出した伝説の
万能薬・秘薬である、「アゾート」についてのみ、考察してみたい。
彼はこの秘薬を常に所持していて病気で苦しむ人々に、わけへだれなく処方しては
画期的な効果を上げたといわれています。
そもそもこの「アゾート」とは、いわゆる錬金術によって合成された霊薬のことであり
錬金術の用語でいえば「エリクシール」です。
ウイキペディアにはこうありますね。
(以下引用)
「エリクサー(elixir、エリクシャー、エリクシール、エリクシア、イリクサ、エリクシル剤、エリキシル剤)とは、錬金術で、飲めば不老不死となることができると伝えられる霊薬、万能薬のことです。」
エリクシールとは語源はラビア語で4大元素の第一性質を凝縮したもので、賢者の石としばしば同一視されたりもする至高の物質です。
あるいは賢者の石は鉱物質であり、エリクシールは液体だともいわれます。
賢者の石はそれを触媒とすることで卑金属を黄金に変性させるし
エリクシールはそれを引用すればたちまち万病が劇的に治癒する。
かくして中世の錬金術師たちは競ってこの錬金術の最高物質である
「賢者の石」と「エリクシール」を作り出そうと苦闘したというわけである。
さてそうした錬金術師の中で万能薬を使って歴史に残っている人物といえば
真っ先にこのパラケルススが上げられるわけです。
すなわち先ほども述べた「アゾート」です。
ある時、、、
足の萎えた少女の治療にあたったとき、コンスタンチノポリスのザロモン・トリスモジンから処方を伝授されたと銘打った「アゾート」を与えると少女はすぐに深い眠りにつき、大量の汗をかいたという。
それを見届けるとパラケルススは、居間に移動してその家の人と食事をとったという。
しばらくするとなんとあの少女が眠りから覚めて自分の足で歩いて居間まで来たのだという。
居並ぶ人々は改めてパラケルススの偉大さに驚嘆したという。
こうした逸話に象徴されるように、パラケルススの「アゾート」の効力は絶大だったと伝わっているのだ。
以下ウイキペディアより引用
16世紀に、スイスのドイツ語圏の錬金術師パラケルススが、アヘンのアルカロイドが、水よりもアルコールの方によく溶けることを発見した。アヘンを様々な方法で調合して試してみたところ、パラケルススは特定のチンキにアヘンを混ぜたものが、鎮痛に大きな効果があることに気付いた。パラケルススはこの薬剤をローダナムと呼んだ、これはラテン語の「ローダレ」、称賛するという言葉から来ている[4] 。実のところ、ローダナムはアヘンとアルコールの混成物ならどのような調剤のものでもそう呼ばれた。パラケルススの調合したローダナムは、その後の17世紀に発明されたものとはかなり異なった基準で、しかも17世紀のものよりも優れていた。パラケルススのものはアヘン、砕いた真珠、麝香、琥珀、その他の物質が交ぜてあった[5] 。ある調査によれば、1618年に出版されたLondon Pharmacoepoeia には、アヘンでの丸薬の製法が付記されており、サフラン、ビーバー香、竜涎香、麝香、ナツメグを混ぜるとある[6]。
ところで、、
こうしたエリクシール(万能薬)はETA・ホフマンの小説にもしばしば登場しますね。
例えば彼の代表作「悪魔の霊液」(Die Elixiere des Teufels エリクシール・デス・トイフェルス)にも
メダルドウスが盗み飲む、聖遺物である「エリクシール」が登場します。
これはシラクサぶどう酒に似た瓶に詰められていて、栓を開けるとポット青白い火が燃えたつように見えて、すごい、心とろかすような芳香がするのだそうです。飲むと邪悪なパワーが満ちてきて、活力がわいてくるという代物です。
おそらく?今の覚せい剤❓みたいなものだったんでしょうか?
ちなみに「悪魔の美酒」という邦訳もありますが、エリクシールの訳は「霊液」か「霊薬」が正訳でしょうね。「エリクシール」は、、「美酒」じゃあないのですから。
さらに、ホフマンの「イグナーツデンナー」という短編では、トラバッキオという悪魔の医師が処方した
万能薬が登場します。その処方とは、ホフマンの暴露した処方によれば
≪自分の血を分けた赤子が9か月の時にその心臓を抜き取りそこから絞った血液を主原料として≫
それにいろいろと混合して作るらしいですね。それ以上は詳しく書いてないので詳細は不明ですが。
「イグナーツデンナー」ではもちろんこの魔の薬の処方は隠されたままで、人々は、つゆ知らぬままに、
処方されて、、劇的に治癒して、
トラバッキオはこの万能薬で奇跡の医師と言われて巨万の富を得たといいます。
もちろんこれはあくまでも、ホフマン描くところの、フィクションですよ。
さて話をパラケルススに戻します。
アゾートの成分とでは、では?なんだったのでしょうか?
ある種の薬草酒?だった言う説もあります。
当時の修道院では修道僧が山野の薬草などを仕込んだ薬草酒がありました。
これらが発展して「アブサン」とか「ベルモット」などの西洋薬草酒になったのですね。
ちなみに、「アブサン」には「ニガヨモギ」が仕込まれていてこれは幻覚作用があり、
ベルレーヌ、ロートレック、ゴッホが愛飲したことでも知られていますね。
ちなみに、、今現在のアブサンにはニガヨモギは入っていませんよ、
さて本題にも戻ります。
アゾートはこういう薬草酒系?ではなかったようですね。
ある研究者によればアゾートの主成分とは、
阿片であり
アゾートは≪阿片ちんき≫だったというのです。
確かに阿片、であればあの、、足なえの少女がもしも心理的な心のトラウマで歩けないという固定観念であったとするならモルヒネの至福感、開放感,弛緩作用などによって心のわだかまりが取れて歩けるようになったということは十分考えられるでしょう。
あるいは「覚せい剤」だったということも考えられますがでもこの時代に覚せい剤は、まだなかったですよね。
あるいは民間に伝承した「幻覚キノコ」のたぐいをパラケルススが処方した?という説もありますね。
まあいずれにしろ、本当はなんだったのか
アゾートの成分は霧のかなたです。
一番有力なのは≪阿片ちんき≫説ですね。
以前書いた「神薬」とかその前身である「コロダイン」にもその始まりには、
阿片ちんき、クロロホルム、エーテル、やらが当初の処方には入っていた、確かにこれを飲めば一時的にはその作用で、ストレス解消?になり、ひいてはほとんどの病気に、劇的に?効いた?であろうことは間違いないでしょうからね?
治った?かと言われれば、治ってはいなくても、一時的にただ、楽になった?だけですがね。
アゾートからコロダインそして、、神薬へと、
そしていま現代の鎮痛薬や睡眠薬、向精神薬へと、
こうした万能薬、エリクシールの伝統は連綿として
続いているんですね。
これらの薬に共通するのは
「原因を突き止めて、根本的に治ったのではない。
ただ表面的な症状を開放・緩和・抑える。まぎらわす、、だけ。」
です。
まあこれが薬の限界というか、うさん臭さというか
今も昔もほとんど変わらないという真相なのでしょうね?
痛ければ、、鎮痛剤
かゆければ、、かゆみどめ
咳が出れば、、咳止め
不安なら 安定剤
不眠なら 睡眠剤
まあ
これでは
本当に治ったといえますか?
ただまぎらわし
ごまかしてるだけじゃないですか。
薬やめれば
すぐ
痛くなり
咳が出る
不眠で
不安になる。
ま
これが薬の限界なのでしょうね。