-Prologue-
今日、私・千秋愛美は死んだ。
恋人にフラれたショックで。
・・・というと、大袈裟に聞こえるかもしれない。
だけど、端的に言えばそうだ。
つい数時間前の出来事。
あと一週間で25歳の誕生日・・・という日の今日、
会社帰りに話があると恋人の日高康成に呼び出された。
真面目な顔をして目の前に座る彼の顔を見つめ、
もしかして、もしかすると・・・なんて淡い期待を抱いた。
だけど・・・
彼の口から出てきた言葉は・・・
「俺と別れてくれ。」
・・・信じられなかった。
私は頭が真っ白になった。
フツーならここで「なんで?」と聞くんだろう。
けど、そんな事すら忘れるくらい何も考えられなかった。
いつ彼が目の前からいなくなったのかさえ・・・。
気が付けば私はどこに向かっているかもわからない状態で
ふらふらと歩いていた。
そして・・・
そのまま道路に出ていったところを車に跳ねられて即死・・・。
今・・・お父さん、お母さん、妹の綾音、弟の瑛悟が私を囲んで泣いている。
私の遺体を囲んで。
それを私は少し離れた所から傍観してる。
・・・私は魂だけになった。
そして・・・魂だけになった私は一緒に泣いた。
自分の遺体の前で自分の死を悲しんでくれる家族と一緒に泣くのは
なんかヘンな感じだけど・・・。