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7:門兵:ジャバウォーキ(2)

 2機の機体が門扉前の広場で対峙する。

 ジャバウォーキが操る獣機「ジャバウォーキ」は中型にしては背の高い獣機だ。全高は8mほど、薄緑がかった鈍い銀色の機体は2足歩行をした蜥蜴のような外観だ。前傾気味の姿勢、2脚は太く、関節は鳥のような逆関節の「くの字」型、足部には鋭い爪。体躯は細く、腕はより細く、ゆえに腕力は弱い、武装は軽めの鶴嘴ピッケルだ。ただ前傾の強靭で長い首部を持つ頭部は別だ。上部でゆらゆらと揺れながら激しく打ち付け噛み付くことのできる固い頭部は、中型や小型の機体にはとても脅威となる。かつ「ジャバウォーキ」には頭部とパランスを取るように太く強靭な尾を持ち、足と尾の組み合わせで機体としては驚異的な跳躍力を有する。連続できるものではないが、その跳躍は低い城壁の上にならば飛び乗ることもできるほどで、その一瞬の俊敏性は相手に不意の一撃を与えることができる。

 城壁前は軽い斜面。

 長い旅路の末にこの街へたどり着いた来訪者は、常に上に向かって武器を振るう必要がある。対して門を背に立つこちら側は下に向かって叩きつけることが出来る。立ち位置の優位性に加え、やや崩れやすい岩ばかりの地面に対し、足爪を持つジャバウォーキはがっちりと下半身を固定できる。

 長い首を持つジャバウォーキは向かい合って対峙し、一気に突撃をかまし、ピッケルはブラフで、頭部をハンマーのごとく振り下ろすことで勝利の果実をむさぼってきた。相手の機体がよほど背の高い大型機でない限り、頭上からの強烈な一撃を受けることになる、それも3連撃、まず通常の中型機では凌ぎきれない。重装甲の剛腕型なら耐え忍ぶこともできるかもしれないがそれでも次が続かない。腕、肘、手首、肩、もしくは膝などに間違いなく損傷ダメージを受ける。そこにとどめの一撃で勝負は終了。それがジャバウォーキの必勝法だった。


「いくぜ――」


 頃合いを見計らい、小さな合図と同時に突撃。脚力にものを言わせて一瞬での接敵。

 古風な中型機、特徴のない中型機、だらりと腰部に長槍を構える老朽機おんぼろ、決まりだ――ジャバウォーキは強烈な一撃を繰り出した、それを砂色の中型機は驚異的な跳躍で回避した! 速い! 飛びずさりの反応速度に驚きながらもジャバウォーキは振り下ろした頭部をそのまま一気に突き込んだ、後方回避直後の不安定な姿勢を小突いて倒すのもジャバウォーキの得意技だ。しかしそれすらも回避された! 相手は飛びずさった後も体勢を維持、素早い足さばきで突き込んだ頭部に対し体を左に傾け再度の回避――そこに、伸びきったジャバウォーキの首部下部に激しい衝撃が来た、長槍を下から振り上げて打ち付けてきた!?

 信じられない強力な衝撃にジャバウォーキの顎は高く上がり上体は反り返る。砂色の中型機は滑るような足さばきと強力な踏込による追撃を加えてきた。くるりと回転させた長槍の石突きで、ジャバウォーキの腹部に強烈な衝撃。ジャバウォーキの両足は完全に地面から離れ、もんどりうって背中から地面に倒れこんだ。轟音と土煙。もはやジャバウォーキは腹を見せた情けない姿で仰向けに倒れこんでいる。城壁と山肌に反響する衝撃音、身を縮ませる観客たち、ぴくりとも動かないジャバウォーキ、やがてどよめく観衆――勝負は? 勝利の宣言は? 砂色の中型機は動かない。いや、長槍を再度腰だめに構え、すり足でジャバウォーキの周囲を半円回り込む。頭頂部側に位置取り再度の警戒。そして両者ぴくりとも動かず。


 ――ちくしょう。


 ジャバウォーキはいまだぐらつく視線で意識を保つため軽く首を振った。

 糞が。そのまま寄ってきてジャバウォーキを片足で押さえつけ、勝利宣言でもしようものなら、尾の一撃で脚をすくって大逆転を決めてやれる十八番おはこだというのに、コイツはなんて警戒心が強いんだ。何がお人よしの古びた機士じじいだ、とんだ古強者ベテランだったという訳か。だから機士は嫌いなんだ。ジャバウォーキは大きく息を吸い込んでから身体から力を抜いた。糞が。


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