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「銀河シアターモード」シリーズ

ロボットの憂鬱

作者: 巫 夏希

これは『ロボットと少女』の続編にあたるものです。ぜひ、そちらもご覧いただけると嬉しいです。

 ロボットという存在がいた。

 人という存在がいた。

 時代は違うかもしれない。構成は違うかもしれない。だが、“生きている”ことには変わりはない。

 ただ、生まれた時代が違い、構成されているものも違い、感情も紛い物かもしれない。

 それでも。

 ロボットが少女を愛してることに変わりはない。

 気付かない間にロボットは少女のことを好きになっていたのだ。

「すき、ってどういうこと?」

 ロボットが尋ねると、あるロボットは言った。

「誰かのことを誰よりも何よりも大切にすることさ」

 ロボットはそのロボットが言ったことが解らなかった。解ろうとしても、分かれなかった。

「つまり、誰かをいろんなものから守れば、それは愛と言えるのか?」

「難しい質問だな。そうとも。ただ、その意味を履き違えることだってある。まぁ、そんなことはプログラミングされた頭脳を持つ我々が言うことじゃないのかもしれないがな」

「どういうこと?」

「つまりは簡単な話さ。我々はこの惑星を離れたニンゲンという高性能なタンパク質生命体によって作られたコンピュータ『アリス』がロボットを作り上げた。つまりは、我々はロボットから作られたロボットなんだよ」



 “彼”はそんなことを思い出しながら、夜の空を眺めていた。ネオンが暗闇だった空に弾け、キラキラと輝いているのが解った。

「ここは世界一の絶景だよ。100万ダイスの夜景とも呼ばれている」

 ふと後ろから声がかかり、彼は振り返った。

 すると、そこにいたのは彼と同じロボット。だが、彼と比べて少し錆びつき始めていたのも解る。

 ロボットは錆びる。それは空気に触れる、否、酸素に触れる物が持つ宿命ともいえよう。ロボットたちは自らの肉体を悔やみ、学び、そしてあらたな形を作りあげた。

 『レイバー』と呼ばれるそれは言わば彼が作り上げられた時に製法を確立した合金である。作り方は多数メーカーによる寡占(ただ、現時点では一メーカーによる独占が続いているのだが)を防ぐ為に他言を禁止している。だから、誰にもその方法は解らない。ロボットにだって、解らないことは沢山あるのだ。

「どうした? そんなに私の身体が珍しいか?」

「いえ、」そう言って彼は恭しく笑う。

「ロボットは昔もこんな錆びる身体だったんだよ。酸素というものは少なくともゆっくりだが確実に我々の身体を滅ぼしつつある。そこで『レイバー』なるものが生み出された。ロボットは錆びなくなり、そして我々の“祖先”であるニンゲンがいたという大地へたどりついた。遠い昔、ニンゲンもこの夜空を見ていたのだろうな」

「……ご老人、と申すべきだろうか? まあ、ご老人。一つ、仮にですが、聞きたいことがあります」

「なんだね?」

「もし、ニンゲンが生きているとして……ロボットに出会うなんてことは有り得るでしょうか?」

「……ふむ。面白いことを言うね」

 老人は笑っていた。彼の言うことには間違いなどなかった。だが、老人にはそれが嘘にも思えた。

「……ニンゲンはだいぶ昔に別の星へ身を移したと言われているんだ。

 居ないと思えるし。現に移住の理由が空気の汚染だから、もう滅んでいるんじゃないのか?」

「……そうですか」

 彼はただ空を眺めて、それだけを呟いた。


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