表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

迷い・戸惑い・決意・裏山・目覚め

主人公、海道龍牙がついに罪を犯す…。

 (迷い)

 明くる日。俺は学校を休んだ。わざわざ仮病をして。

「・・・今日こそ真相をあばいてやる!」

俺の独り言はむなしく、かっこよく消えていく。俺は、今日・・・行く!裏山へと。

「怖くない・・・。俺一人裏山の謎を知らない方が嫌だぜ!俺が一番怖いのは・・・」

少し間があいて、再び俺は独り言を呟く。

「・・・仲間がいなくなる事だ!」

少し声がかすれる。裏山へ行けば裏山の真実がきっと・・・。俺は眼から落ちてきた何かを服の袖で拭く。

 きっと大丈夫・・・。俺なら死ぬもんか!100年罰当たり?そんなもん怖くねー!海道龍牙・・・ならいける!

「いけるよな・・・!」

自問自答・・・。寂しくはない。

ピンポーン

家のチャイムが響く・・・。

「誰?」

俺の体は本能で拒否する・・・。このまま待っていればいつか引き返してくれるだろう・・・。

「・・・早くどこかへ行ってくれ。」

俺は小声で呟き祈る。

ガチャン

・・・だが祈りは一瞬にして消えた。

「海道龍牙ー!いるんだろー!わざわざ隠れなくても分かってる。」

俺の体は動かない。足の震えが止まらない。

玄関を開けた!?

(怖い・・・?)

「あがるぞ!いるのは分かってる。」

声の主は家にあがってきた。誰なんだ?この声は・・・。

・・・足音が近づいてくる。

「海道龍牙だな。・・・警察だ!」

「・・・・・・!?」

警察?こいつは・・・警察。

背が高くて・・・。ハンサムで・・・。何か怖い・・・。

「俺は富山健とみやま たける・・・。東山警察の上官として働いている。」

こいつには笑みがない。笑みのない自己紹介・・・。暗いわけではない・・・。ただ何かが怖い・・・。

「・・・海道龍牙・・・です。」

「何だ・・・。喋れるではないか。」

「当たり前喋れる。・・・警察が俺に何の用だ?」

すると、富山は一段と鋭い目つきになり、煙草を取り出す。

「お前も吸うか?」

「俺の質問に答えろ・・・!それに、家の中で吸うのは普通遠慮するんじゃないか?」

俺の震えは未だに止まらない。

「上司に口をきくときは今は敬語を使わないのか・・・。おかしな世の中になったな・・・。」

富山は遠慮もせずに平気で煙草を吸っている。

「・・・すみません。」

なぜだろう・・・?こいつに逆らうといけない・・・何か起こりそうな気がする・・・。自然に俺は謝ちまった。

「ここにきたのは・・・。単刀直入で言うと・・・」

何十秒も間があいたような気がする。たった数秒なのに・・・。 

「・・・大川十流が死んだからだ。」

おお・・・かわ・・・・・・・とう・・・・・る?

俺の頭の中には悪い記憶が再び蘇る。数日前に会ったあいつの記憶が・・・。

「何で・・・。それを俺に・・・?」

「大川が死んだのが一昨日の夕方・・・。あなたはその時どこにいた?」

「一昨日は紅川にいました。」

「大川が死んだ所が・・・紅川下流・・・。バスと一緒に崖からドボン・・・。」

ゴクリと生唾を飲み込む。あのときの下流からの音は・・・。      


「だがな・・・おかしいんだよ!」

・・・おかしい?

「死に方が、落ちたにも関わらず軽い外傷のみ・・・。そして死体がバスの外に投げ飛ばされて川の中・・・。溺死かと思えば外傷がないのに大量出血・・・。例の罰当たり事件と同じ死に方だ。」

その言葉が合図で俺の心音は騒がしさを増す・・・。  


 (戸惑い)

「そういや、お前の親御さんはいないようだな・・・。」

それが、このページの始めの言葉・・・。東山警察の富山・・・。富山健が言ったのだ・・・。

「俺の親は深夜から午前中までしかいませんよ!・・・午後からは仕事です。」

もう午後1時・・・。とっくに親はいなくなってる・・・。

「子供を残して仕事か・・・。ずいぶん酷い親だな!・・・親は何の仕事をしている?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

俺は知らない。親の仕事を・・・。

・・・親の仕事を聞いた事もなかった。だって俺の親は・・・。

「・・・まあいい!・・・いっとくが別に俺はお前を疑っているんじゃないぞ!」

「じゃあ、何で?」

俺が問いかけると富山は自分専用の灰皿にタバコを捨てる。少し間があく。

「ここ最近、大川に会ったのが・・・。お前の親父さんだからだ!」

「・・・えっ!?」

俺は驚きが隠せない。そんは、親父が大川に・・・?いつ?どこで?何であんな奴に?

「海道龍一・・・。職業不明・・・。こいつが最後に大川に会ったのが・・・。一昨日の深夜・・・。この時間帯的に仕事帰りか何かだな・・・。」

「ちょっと待ってください!人違いだろ!俺の親父が大川なんかに会うはずがない!」

俺の叫びは窓ガラスをも震えさせる。そして、俺の体も震えが増す。

 そうしてる中、富山は自分のかばんから小型ノートパソコンを取り出した。

「路中のビデオカメラの映像だ!・・・これが大川のバス!・・・ここで、一時停車をする。・・・そして停車した時に人影が見える・・・」

そうやって富山は説明をするが・・・。この人影はどう見ても、親父だった。

ガタガタ・・・。

震えが止まらない。・・・何故だろう?あの時・・・。バスで東山に来た時に・・・。親父はもしかして・・・。

殺人計画を立てていたんじゃ・・・?


俺は親父を疑ってしまう。

「警察はお前の親父を指名手配中。」

親父が・・・?そんな・・・?

「・・・ありえない。」

「・・・ん?」

俺の口が勝手に動く。自分でもびっくりしている。何を根拠にありえないのか自分でも分からない。

・・・そして、また俺の口が動き出した。

「ありえないんだよ!・・・親父が例え犯人だとしても・・・死亡時刻も12時間以上経っている!」

俺は次々と口走っている!なぜだかとっても・・・怖いのに。

「それに、少ない外傷なのに殺人を犯すことじたい難しいだろ!」

俺の叫びの後は静けさが戻った。

静けさが戻ると富山は再び、口を開く。

「薬物を使えば別だ!」

くそ!警察めー!くそくそ!大嫌いだ!ここまで親父を犯人にしたいのかよ?

「くっくくくくくく!ふっはははははは!」

なぜだろう・・・。俺は笑ってしまう。前もこんなことなかったけ・・・?

「何がおかしい?」

富山は表情を変えずに俺に問いかける。・・・腹の底からむかつく野郎だ。

「むかつくよ!警察の中でもお前は一番むかつく!・・・だから言ってやるよ!」

そして、俺は立ち上がって大きく息を吸って叫んだ!

「お前らの捜査じゃ!絶対、100年罰当たりの謎は解けない!・・・解くことができない!・・・俺が裏山に行って、全ての謎を解き明かしてやらぁー!へぼくそ警察野郎が!」

ほぼやけくそだった!たが叫ぶことによって怖さは消えた。

ガシャン!

玄関へ逃げて・・・外に出ても逃げた!富山が追って来ると思ったから!

だが、富山は追ってこなかった・・・。

「行く・・・か!」

独り言はまたむなしく、かっこよく消えた。俺の足は裏山へと進み出した。


 (決意)

 日の光がじりじりと照りつく夏・・・。もう秋とも言ってもいいのかな?木々の葉はもう緑から違う色へと変わりつつある・・・。

「・・・着いた。」

俺の呟きを消してくれるせみ達・・・。嬉しいのか寂しいのか分からなかった。ただ、俺一人なのは変わりない。

 そう、俺は一人、月光寺の階段の下で寺を見上げてるのだ・・・。

「はーー・・・。」

ため息ではない・・・。深呼吸をしただけだ!と自分自身に言い聞かせる。どう聞いてもため息にしかならないのに・・・。

トタ・・・トタ・・・。

俺は階段を1段ずつ上っていく。寺からは2時の鐘が鳴り響きはじめた・・・。

・・・この鐘が何かの始まりを告げているのだろうか?

「・・・・・・・・・・・・・!?」

俺は階段を上り終えて気づく。

(月光寺か・・・。この前来た時は何も感じなかったが、すげーきれいだな・・・。月光寺が太陽に照らされ金色に輝いてやがる。)

どこのどんなきれいな場所よりもきれいだ!まさに日本の美とも言えるだろう・・・。

だが、やはり・・・きれいな場所にもあるんだな。俺の目的の汚い場所が・・・。

寺の端にある立ち入り禁止の1本道・・・。裏山への道が・・・。忌々しく(いまいましく)あるのだ。

「行かないと・・・!おいてかれちまう。せっかくできた仲間に・・・。友達に・・・。俺の宝物に・・・!」

俺は足を進める・・・!裏山へ・・・!身を潜めながら・・・。

「あーあ!行っちゃうのね・・・。信じてたのに・・・。」

!!?

後ろから声・・・?見つかった・・・?

「・・・君は、あのときの?」

俺の後ろにいたのは・・・仮面の少女。バスの窓から見えた・・・。フードと仮面を着けた少女・・・。あのときのままだな・・・。

「お前が行きたいなら好きにしろ・・・。私は止めはしない。言っても無駄だからな・・・。」

少女は仮面の隙間から冷たい目線で俺を睨む。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

俺は言葉が出ない。金縛りにあった様に動けない。

「・・・お前の甘えがそうさせたんだ・・・。根性なしが。」

なぜだか少女の言っていることが分からないのに心が痛くなる・・・。なぜだろう?

「私ががんばったところでお前の力がなければ意味がない・・・!もう、すべてがおかしくなる・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

「これもすべて、お前が甘えすぎたせいかもしれない・・・。じゃあな、根性なしの馬鹿者が!」

そう言って、少女は去っていく・・・。

「俺の甘えか・・・。」

俺の心は揺れることもなく・・・裏山へと足を進めた・・・!


 (裏山)

ガーガー!

 かれた鳴き声のカラスがバサバサと飛び立つ。

 俺は今、裏山にいる・・・。もちろん、一人。

「裏山か・・・。確かに、薄気味悪いがな。・・・ここで、人が死ぬのか?」

裏山は人気がなく、風と木々が揺れる音、動物達の鳴き声が響き渡っている。

「これは、ただの肝試しに近いな!確かに夜に行ったらこえーけど、太陽が照っている内は全く怖くねー!」

俺は一人・・・!心細かったが、怖くはない!むしろ、みんなは何を怖がっているのかが分かんなかった。

「・・・よし!」

 そうして、俺の足は自然に奥へ奥へと進んで行く。

                  ・

                  ・

                  ・

 あれから何分経っただろう?奥へ行っても、同じような景色が広がっていた・・・。辺りは日が少し沈み始めて暗くなる・・・。

「結局何もねーじゃねーか!来て損した!やっぱり裏山説は嘘だったか・・・。」

俺は、そう言って、元来た道を戻り始める・・・。

骨折り損のくたびれもうけってやつだな・・・。

「あれ・・・?ここ通ったけ?」

そう思っていた俺だがどうやら、道を間違えたようだ・・・。次は逆の方を行く。

「・・・?」

あれ?こっちでもない?

どうやら、迷っちまったようだ・・・。こういう時は360度見渡すと・・・!?

「あった、あった!」

やはり、あったな道が!

・・・俺はそこまで猛ダッシュする!だが・・・?

バタン!

「・・・痛って!」

何かにつまずく・・・。一体何だってんだ?こんな所に・・・?

そうして俺はその何かを見た!それは・・・

「・・・うわーーー!」

俺の目はおかしくなっちまったのか・・・?俺の目の前には・・・木の根でも、小石でもなく・・・。何かの障害物でもない・・・。人だったのだ・・・!血だらけの・・・。

「えっ!?何だこれ?目の錯覚?」

ゴシゴシと目をこすってそれをまた見る。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」

消えない・・・。本物だ!間違いなく本物だ!

 俺はここから逃げようと立とうとした!・・・だが、腰が抜けて立てない。

 血だらけの人は動かない・・・。死んでいるようだ・・・。

「・・・傷がない!?」

俺の目は今日は真実を写してくれないのだろうか・・・?死体には傷が・・・。血が全体から吹き出しているのに、多きな外傷がないのだ・・・。

「助けて・・・助けて・・・!」

俺の叫びは山びことなって響く。人気がないのに助けを求めても無意味・・・。

ずしゃ・・・。ずしゃ・・・。

落ち葉を踏んで近づいてくる足音が聞こえる・・・。

耳までおかしくなったのか・・・?

すーー!

俺の意識は・・・暗闇へと消えていった。


 (目覚め)

 夜・・・。俺は自分のベッドに眠っていた・・・。時計は9時になろうとしている。

「えっ・・・?裏山は?」

何が起こっているのか分からない。記憶が・・・。記憶が飛んでいる・・・。

「えっと・・・確か、裏山に行って・・・。」

そう言って俺の頭に漢字2文字の言葉が浮き上がる。

「・・・死体?」

・・・思い出した!裏山で見た物を・・・。

「あの時の死体は・・・?例の100年罰当たりの・・・?」

傷はなく・・・。血が大量に・・・。

「思い出せない・・・。あの後の事が・・・。俺はどうやって家に帰って来たんだ?」

俺の声は外の暗闇へと吸い込まれる。

ガタン!

その時、下のリビングから物音・・・。

「この時間に親はいないはずじゃ・・・?」

気になった俺・・・。いや、怖い俺は近くにあった、工作用カッターを持って、こっそりと階段を下りる。

ひたひた。

リビングの前まで来た。

「ゴクリ・・・。」

唾を飲んで・・・。リビングのドアを勢いよく俺は蹴り開ける・・・。

バターーン!

少し,勢いが強過ぎて、ドアが開くどころか倒れっちまった。

「・・・誰だ?」

そんな事、俺は気にせずに叫ぶ・・・!

「あら・・・。龍牙じゃない・・・?どうしたの・・・?」

そう。そこにいたのは、お袋だった。何か雰囲気が違う・・・。

「お前・・・誰だ?」

俺はそいつにカッターを向ける。

俺の問いに驚きを隠せない、そいつ・・・。カッターに怯えているのか・・・?

まぉ、どっちにしろ、こいつお袋じゃない!?

「お袋じゃないよな!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふふ!」

そいつは不気味に笑うだけ・・・。特に何もしようとはしない。

「俺の質問に答えろ!お前は誰だ!?」

「あなたのお母さん!って言えば分かるかしら?きっひひひ!」

そいつの笑いはまるで・・・悪魔のようだった。

「お袋じゃねーだろ!」

「そう、じゃなかったら?」

「殺す!」

俺の声が反響する。

「じゃあ、仕方ないわね・・・。きっひひひひ!」

そいつは、そう言うと、台所に足を進める。

ガチャ!

「きっひひひひひひひひひひ!」

そいつは包丁を取り出した。不気味な笑いと共に・・・。

「何をする気だ!」

「お前を殺すんだよ!キッヒヒヒヒ!」

包丁を持ったお袋・・・いや、お袋の姿をした悪魔は俺に近づいて来た。

「殺せないよ!」

今頃気づく・・・。こいつはお袋本人だ!悪魔に心を乗っ取られれているんだ!だって、指輪をつけている!世界に1つだけの親父が作った、指輪を・・・。

「お袋ーーー!」

悲しみは・・・始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ