20.
「全く、今回も俺ばかりがあっちこっちに移動して大変だったんですよ!商会長はその間何をしてたんだか」
俺はまた一人でSanctuary Silentに来ていた。
寡黙なマスターに、店内に響くウッドベースの音がなんとも心地いい。
カランと俺は一人でカンパリ・ソーダを飲んでいた。
カランカランと扉が開く音がする。
「あら?今日はあなた一人なの?」
「俺と商会長はセットじゃないですよ!」
「マスター、私にはアマレットをお願い」
商会長の元カノ。俺の方がなんだか気まずい……。
「はぁ、グランデ商会の改革って楽じゃないもんねぇ。古い慣習を捨てて新しくって難しいわ。これなら、ゼロから新しく紹介作る方が楽よ」
そう言ってアマレットを飲む。
確かになぁ、貴族様重視を捨て去る。ってこれだけでも重労働。何よりも街の人がグランデ商会は『貴族様ばかりを気にする』ってもう色眼鏡で見ちゃってるからなぁ。
カラカラとグラスの氷の音を鳴らすレオナからマスターはグラスを取り上げた。
「……飲み過ぎたんだろう」
マスターに言われてレオナは帰ることにした。
? まだアマレット1杯だと思ったけど?
レオナと入れ替わるように商会長が入ってきた。
「マスター、アマーロ・サワーを頼む」
「商会長。正直、俺が海の上にいる間とか何してたんですか?」
「仕事だ仕事!全く、マルコがいないってだけで使えねーやつばかりなのな。そんなやつ雇った覚えないのに」
ちょっと嬉しい。
「仕事って何です?」
「あー、マルコだし、あとはマスターしかいないからいいか。香辛料を使った新商品の試作。マスターのハーブティーにどんなに胃が救われたことか!」
「それは大変ですね。で、完成したんですか?」
俺もグラスの氷を鳴らしながら、聞いてみた。さりげないだろうか?
「ブハッ、お前。わざとらしさがありありと。わかりやすいなぁ。まぁ、それは置いといてだ」
置いておかれた――――‼
「まだ完成してないんだよ。俺の胃はまだ危険な状態にいる」
「そんな状態なのにアマーロ・サワー飲んでいいんですか?」
「ストレスだって溜まるんだ。酒だって飲みたくなる」
煽るようにアマーロ・サワーを飲んだ。
「……そんなに乱暴に飲むような酒をここに置いた覚えはない」
「悪い……」
商会長はチビチビと飲み続けた。
香辛料を使った新商品?
えーっとここはイタリアっぽいところ。
「商会長、新商品の狙う購買層は?女性とか年代とか」
「割と若者向け。庶民からどこまでも」
酔ってる……。
買い食い系か?カフェで食べる系?持ち歩ける方がいいのか?あ゛―‼商会長が酔ってるから話を詰めれないじゃんか!




