16.
「湖の風ですか……。ここ数年の水質汚濁でしょうか?このような仕事をしていると水というのが重要なのですがよい水に出会えるかどうかがバーとしてうまくいくかどうかなのですよね……」
マスターが長く話した。それだけ重要なんだろう。と思う。今、飲んでる酒の氷にしたって、良い水から作ったものは澄んでいる。当然の話。水がキレイならよい酒ができる。
俺はまじまじと手元にある自分のリモンチェッロ・ロックを見た。商会長もアマーロ・サワーを見ている。
「水質汚濁かぁ。こればかりは政治の話になってくるから得意なのはグランデ商会だよなぁ」
「呼んだかしら?マスター、私にも一杯もらえる?」
レオナが現れた。
「ふーん、水質汚濁であの湖の水が感染源ねぇ」
アマレットが入った小ぶりのタンブラーを包むように両手で持ち、氷の音を鳴らす。はぁ、俺はレオナよりも子供っぽいのかぁ。
「これって貴族様に働きかけなきゃとかなのね?それはグランデ商会が得意だと?」
「まぁ、俺達はそう結論付けたんだが違うか?」
グラスを傾け飲む仕草もカルロはカッコいいなぁ。その喉仏!絶対そこらへんの女なら口説ける。
「そうね。やってみるわよ。ここ失くしたくないし」
「へ?最後の方なんて?」
「聞こえなかったなら、いいわよ!」
レオナはアマレットを飲み干すと、帰っていった。
「しかしなぁ、感染ルートと感染源をなんとかすることはできそうだ。今感染している人を救うことはできないのか?」
マスターは渋々という感じで、昔の自分のメモを見せた。
「昔、同じような疫病が流行ったことがあったんですよ。私はそのとき大事な人を失ってしまいましたが、当時のメモが残されていました」
そこに書いてあったのは、痒いところに貼ると効果があるというハーブ。
「マスター、だからハーブティーとか詳しいのか?」
「違いますよ。失った人がハーブに詳しい人だったんですよ」
何かを隠しながら話をしているように感じるのは俺だけだろうか?商会長とマスターの会話は何か不自然な感じがする。
「マスター!助かった。これからこのハーブを買い占めつつ、情報を流し、感染の拡大を防ぐ!」
なんだろう?カルロには言えないのか?俺が一人で来た時にでも問いただそうか?
翌日、早速教わったハーブを買い占めるような方向で動き始めた。同じタイミングで、ハーブが疫病に効果的だという情報を流した。
これに対し、グランデ商会は全くのデマだというように声明を発表。しかし、市井での支持がなかったグランデ商会は街の人には相手にされなかった。街の人がハーブでどんどん元気になっていった。
「どういうことだ?あんなハーブで良くなるはずがないと言うから、我々は我慢をしていた。老齢の者が亡くなるのは仕方がない。しかし、今家を継ぐ若年層すらも感染しているではないか!私もいつ感染するのやら…」
など、グランデ商会に貴族からの話があり、なおかつカルロ商会からハーブを買う事態となった。果てはT国大使までもがカルロ商会のいうハーブを使うようになった。
カルロ商会としては買い占めていた分結構な儲けを出すことができた。俺としては街の人には安く売ることもできたんじゃないかなぁ?などと思う。




