10.
お酒に憧れはあった。現実世界の『井上真』は高校生。まだ法的にお酒は飲めません!サンライの世界では、もう飲める年齢のようだ。自分で自分の年齢を知らないってのも変だけど。カルロは雇用主だし、雇用している人間の情報くらい知っているんだろう。俺は知らない。
その夜、俺は人生初の酒となった。
「おい、マルコ!お前、酒に弱かったのか?」
「知りませ~ん。それよりも、あのプレゼンは何だったんですか?普段の商会長とは別人のようによいこちゃん」
「はぁ、こいつは絡み酒なのか…。プレゼンでよいこちゃんは当たり前だろ?相手の印象よくしないと採用されないんだからな!」
俺はそれから意識がなくなった。
「……眠っているようですよ?」
「仕方ないなぁ。俺がこいつを連れて帰るか。マスターまた来る。こいつも徐々に酒に強くなるだろ?」
「……ウォッカをボトルキープしますか?」
「そこまでしなくても……」
「……冗談ですよ」
何事もなかったようにマスターはグラスを磨き続け、店の中には心地よくウッドベースが響き渡る。
「また来る」
商会長のそんな声が遠くで聞こえた気がする。
結局、商会長はあんまり飲めなかったと翌日に愚痴をこぼされた。俺はというと、二日酔いなのか?頭がガンガンする。
「やっぱりなぁ。マルコ、お前は今日は部屋で休んでおけ、商会長命令だ!」
「いや…でも……気になるとこが……」
「め・い・れ・い」
「……はい」
俺はこういうのに弱いのかなぁ?使い物にならない……かもしれないけど、仕事場にくらいいたかったなぁ。
そんな事を思いながら部屋でベッドに横になり、ゴロゴロとしていた。寮母さんに心配されたけど、寮母さんもどうしていいのかわからなかったみたい。
夜も更けたけど、昼に休んでたせいか俺はちっとも眠れる気がしなかった。
トントントンと部屋をノックする音が聞こえる。
ここで部屋に来るのは寮母さんくらいのもの。なんだろう?
俺はドアを開けた。
「商会長⁈」
「おう。ちょっとはよくなったか?」
「おかげさまで、ちょっとは……」
本当に少しだけど。ガンガン頭が痛かったのが、カンカン痛くなったくらいの差だ。
「これから、出かけるぞ!あのバーだ。Sanctuary Silentだ。」
へ?
俺は言われるがまま部屋から連れ出されて、バーへと行った。
心地いいはずのウッドベースの音が頭に響く……。
「マスター、こいつ二日酔いなんだけどマスターならなんかうまいこと二日酔いのハーブティーとかできそうだなぁと思って連れてきた。こいつにはハーブティー。俺は、そうだなぁ……マスターのお任せで適当な酒を頼むよ」
二日酔いだっていうのによりにもよって、バーに連れて行く?
マスターの特製ブレンドだという二日酔いに効くハーブティーは爽やかな飲み口で、後味もスッキリ。頭がスッキリとして来るのがわかる。
カルロが飲んでるのは、アマーロ・サワー?
「……ストレスも溜まりそうだからな」
アマーロって胃にいいイメージ。マスター優しいな。寡黙だけどさりげない優しさが染みる。俺もスッキリしてきた。明日にはきちんと仕事が出来そう。ウッドベースの音も心地よく感じる。
「マスター、ありがとう。二日酔い良くなったよ。明日からまたいつも通り働けそう!」
「おいおい、ここに連れてきたのは俺だろう?」
カルロが持っているグラスの中の氷の音がカランと響く。




