表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
区役所勤めの魔王様  作者: はるくぼ
第一部 異世界からの転職者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

第8話 魔王様とランチ

魔王様も少しずつ区役所勤務に慣れてきたある日ーー。


キンコンカンコーン


「お、佐藤殿!お昼の鐘だぞ!」

「ええ、お昼の時間ですね。交代の方が来られたら、私達も昼食にしましょう。」

「うむ!」


この魔王様、だいぶこちらに染まってきたな。

仕事の合間の昼休憩が楽しみとか……。


交代の人に窓口業務を引き継ぎ、二人はお昼休憩へと向かう。

元々昼食は持参するタイプではなかったため、ダルクが来てからは二人揃って食堂に行くのが日課となっていた。


「ダルクさんは今日も日替わりですか?」

「うむ!毎日同じメニューであるというのに、内容が違うというのはなかなかおもしろいものだな。」

「日替わりのメニューがなにかに思いを馳せるのも醍醐味の一つですからね〜

今日の日替わりはたしかーーー」

「待ってくれ佐藤殿。それは食堂についてからのお楽しみにしたい」


染まり過ぎでは?と一瞬思ったが、こちらに馴染めず暴れだすより遥かにマシだ。

他愛もない会話をしているうちに食堂に到着した。


「私は何にしようかな。たまには日替わり以外のメニューにしてみるか?

よし、決めた」

「佐藤殿もお決まりか?では並ぼう

今日の日替わりはハンバーグだぞ!!」


区役所の食堂はよくある食券タイプではなく、配膳所で希望のメニューを伝えてその場で代金を支払うタイプだ。

ふと、佐藤は思った。


「そういえばダルクさんって、勤め始めてまだ一月経過してないですよね?

お金とか大丈夫なんですか?」


「おお、そのあたりは心配無用だぞ。

なんせ鎧が思いの外高く売れてな。給与の支払いまで問題ない。」


「えっ!?あの鎧売っちゃったんですか!?

大丈夫ですか?大事なものとかではなかったです?」


「うむ。あれはただの鎧であるからな〜。我、鎧より素の肉体の方が強いし。

……あ、日替わりA定を頼む」


「へ〜、じゃあ何でこっち来たとき鎧着てたんです?

……あー、私は麻婆麺セットで」


「威厳だぞ?鎧着てたほうが強そうに見えるらしくてな

ただまぁこっちでは不要であるからな。早いうちに糧にしようと思ってな〜」


「なるほどです。まぁ、困ってないならよかったです。」


それぞれのメニューを受け取ると、空いている席を探す。

今日もそれなりに混んでいるが、海が見える席が空いていた。


「お、いい席が空いているではないか

我この席は結構好きだぞ」

「私もです。オーシャンビューっていいですよね」


「「いただきます」」


「この食堂、侮れぬな。

毎日戦場の合間にこのような糧が得られるとは」

「戦場じゃないですし、糧って言い方もやめましょう」


そう言いつつも、佐藤自身もこの食堂は気に入っている。

安くて早くて、それなりに美味い。

役所勤めにおいて、かなり重要な要素だ。


ダルクは箸を置き、ふむ、と低く唸った。


「佐藤殿」

「はい?」

「昼休憩というのは、完全撤退の時間であるな?」


「……はい?」

「我の世界ではな、一度戦場を離れた者に、

その日のうち再び戦いを命じることはない」

「それは……だいぶホワイトですね」


佐藤は思わずそう返した。


「昼食を終えた後、また窓口に立つのであろう?」

「立ちますよ。午後の業務がありますから」

「信じられぬ」


ダルクは本気で驚いた顔をしている。


「糧を摂り、心を整え、再び戦場へ……?

それは酷使ではないのか?」

「いえ、普通です」

「普通……?」


魔王は箸を持ったまま、しばし沈黙した。


「では、この世界の者たちは、

一日に二度も戦場へ赴くのが常なのか」

「だから戦場じゃないです」


そう言いながらも、佐藤は少し考える。


(……でも、気持ちは分からなくもないか)


「まぁ、忙しい日はそうですね。

午前と午後で、全然別の顔になりますし」

「ほう……」


ダルクはゆっくりとうなずいた。


「ならば昼食とは、

戦の間に与えられる“猶予”なのだな」

「猶予、ですか」

「うむ。完全な休息ではないが、

折れぬための間」


その言葉に、佐藤は少しだけ目を瞬かせた。


「……意外と、いいこと言いますね」

「魔王であるからな」


ダルクは誇らしげに胸を張った。


佐藤は箸を止め、ふと思い出したように言った。

「そういえばダルクさん、来週から人が増えるかもしれません」

「ほう?」


隣の魔王が、ピクリと反応した。


「区民課の後輩が、里帰りしてたんですけど、

そろそろ戻ってくる予定で」

「なるほど。新たな戦力であるな」

「戦力……まぁ、そうですね」


佐藤は言葉を選びながら続ける。


「私が教育係をやってた子で、

仕事もできるし、しっかりしてますよ」

「うむ。佐藤殿の配下ならば、さぞ優秀であろう」

「だから配下じゃないです」


ダルクは満足そうにうなずいた。


「では、我と同じ窓口に立つこともあるのだな」

「え、そうですね。たぶん」

「楽しみであるな」


「……ダルクさん」

「なんだ?」

「えっと、その子、ちょっと警戒心強いかもしれません」

「警戒?」

「はい。人見知りというか……」


ダルクは少し考え、

そしていつものように胸を張った。


「問題ない。我は話せば分かる魔王である」

「……そうだといいんですけど」


ダルクは気にする様子もなく、最後の一口を平らげた。


「ごちそうさまであった!」

「ごちそうさまでした」


トレーを返却口に運びながら、

佐藤は小さくため息をついた。


(……大丈夫かな)


午後の業務。

そして、来週。


区民課は、また少しだけ騒がしくなりそうだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


よろしければ高評価・ブックマークのほど、よろしくおねがいします

今後の活動の励みにさせていただきます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ