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区役所勤めの魔王様  作者: はるくぼ
第2章 異世界準拠の当たり前

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第18話 魔王様の電話対応②

「では電話が来たら、いつもどおりまず私が対応を見せますね」


佐藤は、メモを反芻している魔王に言った。


「承知した、今回もそのように頼みたい。

なんせ電話の使い方が覚えられる気がせんだ」


「最新機器になかなかついていけないおじいちゃんみたいですね」


「いや、ご老人のほうが我より使いこなしていることはよくあるぞ?」


「え……ダルクさん機械音痴ですか?」


「いや、我の世界にこのような機械なかったからな

慣れの問題である!」


「なんでちょっとムキになってるんですか」


いつもどおりの他愛ないやり合いをしていると、

待っていた電話が鳴った。


「じゃあ、私が出ますね」と佐藤が電話を取る。


「お電話ありがとうございます、区民課 佐藤でございます」


佐藤はメモ用紙を準備し、落ち着いた声で受話器を取る。

ダルクはすぐ隣の席で、その様子をじっと見ていた。


「――はい、はい。助成事業の契約書の件ですね。担当者の名前はおわかりですか?――承知しました。

恐れ入りますが、担当の山本に変わりますので、少々お待ちいただけますでしょうか」


一拍置いて、保留のボタンを押す。


「……今のが、外線だな」


小さな声でダルクが言った。


「はい、そうです」


佐藤は頷きながら、机の上のメモ用紙を片手に、内線電話に切り替える。


「お疲れ様です、区民課佐藤です。

山本さんに、A社の〇〇さんから助成事業の契約書の件でお電話です。外線4番お願いします。」


そういって、受話器を置いた。


「こんな感じです。

 名乗り、用件の確認、担当への引き継ぎ。焦らなければ、難しいことは何もありませんよ」

 

 ダルクは腕を組み、しばし沈黙したまま、机の上の電話機を見つめていた。


「……思っていたよりも、儀式に近いな」


「儀式?」


「うむ。順序を守り、言葉を定め、役割を違えぬ。

 実に理にかなった形をとっている」


「そこまで大げさなものじゃないですよ」


苦笑しながらも、佐藤は完全には否定しなかった。


「でも、ダルクさんならすぐ慣れますよ」


「そうか?」


「はい。ちゃんと相手の話を聞いてますし、メモも正確ですからね」


ダルクは一瞬だけ目を細め、それから視線を電話に戻した。


「……ならば次は、我がやる番か」


「ええ。次に鳴ったら、出てみましょう」


佐藤がそう言うと、ダルクは手元のメモに視線を移す。


「……佐藤殿」


「はい?」


「最初の言葉は、なんと言えばよい?」


「――『お電話ありがとうございます、区民課 ダルクでございます』です」


「承知した」


ダルクは深く頷き、今聞いた言葉を反芻する。


そうしていると、またしても区民課の電話が鳴った。


「よし、ダルクさん、いざ実戦です」


「うむ、任せよ」


そういって、少しだけ不器用な動きで、受話器に手を伸ばした。


「お電話ありがとうございます、区民課 ダルクでございます」


ダルクは、先ほど取ったメモと電話用のメモを並べながら対応している。

(器用なことするなぁ)


「――はい、…はい。内容、理解しました」


ダルクはゆっくりと言葉を選びながら、メモを取っていた。


「お引越しに関しての提出書類についての確認ですね」


『はい。今日持って行こうと思うのですが何が必要でしょうか?』


「確認しますので、少々お待ちください」


ダルクは保留ボタンに指を伸ばしながら、目線で佐藤に確認を取る。

合ってますよ、と佐藤も頷いて伝える。


保留状態にしたダルクが佐藤に話しかける。


「佐藤殿、この者、引っ越しの書類が必要だそうだ

この場合は区民課で回答するのであろうが……一体誰に繋げばよいのだ?」


(おぉ…)

佐藤は感心しながら、回答する

「この場合はご自身で答えられる内容であれば答えちゃっても良いですよ

もし難しい場合は私などに確認して電話変わってもらうなりすればOKです」


「ふむ、承知した。

では佐藤殿のお願いしようと思う。要件は引っ越し時に提出する書類が確認したいそうだ

今日来るようでな、手元に準備しているものが合っている確認したいそうだ……


引き継ぎの内容としてはこれくらいで大丈夫だろうか?もっとメモしていることはあるのだが、要点としてはこれくらいだ」


「これ以上書いてあるって、一言一句メモしてないですかね、それ……

内容としては今いただいた情報で十分ですよ」


そういって、佐藤が受話器を取る。


「はい、お電話変わりました――」




電話を終えた佐藤は、そっと受話器を置きながら、ダルクの方を見る。


「ダルクさん、先ほどのお電話ですけど――」


「うむ、どうであったろうか」


ダルクも気になっていたようだ。

佐藤も思ったことを素直に伝える


「全体的に丁寧な対応でした、バッチリです。

特に良いなと思ったのは、要件を聞いたあとすぐに誰につなぐか確認したところですね。

あの場面で誰につなぐか含めて自分で考えてしまいがちな人もいるので、素直にすごいなと思いました」


「そうか。それなら、よかった」


「はい。次も、鳴ったら出てみましょう」


「うむ」


区民課の電話は、まだ鳴らない。


佐藤は書類に視線を戻し、

ダルクはメモ帳を、もう一度だけ確認した。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


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