【EP3】模擬戦
戦場では、もはや人と機械の区別はない。
パイロットと機体を神経レベルで同調させる《シンク・システム》。
それを扱える者だけが、最前線に立つことを許される。
俺——大田カケル。
そして、相棒の《アークゼロ》。
共に戦場を駆けるために造られた正式な戦闘ユニットだ。
今日は模擬戦。
だが、これはただの訓練じゃない。
“俺たちの始まり”を証明する戦いだ。
訓練フィールド——砂煙が舞う広大な空間に、赤いマーカーが等間隔に並ぶ。
今日は、俺と《アークゼロ》にとって初めての模擬戦。
相手は同期の中でも特に評価の高いパイロット——羽賀アカリ。
彼女が操るのは、女性型のパートナーロボット。
長身のスリムなボディ。手はなく、全身を包むような緑色のエネルギーマントが揺らめいている。
その姿はまるで“戦場の魔女”だ。
マントの中から放たれる青白い光は、すべて攻撃。しかも防御力も異常に高い。
「マスター、あの個体……異質です。」
アークゼロの声が通信越しに響く。胸部の青い光が脈打つ。
「わかってる。接近戦で仕留めるしかない。」
俺はヘルメットを装着し、意識をリンクに集中させる。
——視界が光に包まれる。
アークゼロの感覚が流れ込む。
風の抵抗、砂の粒、関節の駆動音、モーターの震え。
すべてが俺の体の延長線上にあるように感じた。
教官の声が響く。
「模擬戦、開始——!」
次の瞬間、アカリのロボットが滑るように前進。
マントを翻し、無数の青白いエネルギー波を放つ。
その軌道は予測不能——一瞬の油断で焼かれる。
「マスター、回避が限界値に近いです!」
「構うな、突っ込む!」
アークゼロが地を蹴り、弾丸のように走る。
砂が爆ぜ、衝撃波が空気を裂く。
弾幕をスライドし、回転し、ギリギリでかわす。
通信が入る。
「……近づくだけで満足? その機体、当たらなければ意味ないわよ。」
アカリの声は冷たく、挑発的だった。
「当たらなければ、勝てばいいだけだ!」
アークゼロが跳躍し、空中で姿勢を反転。
マントのエネルギーを裂くように、真下へと急降下する。
「マスター、左翼に反応低下を検知!」
「そこだ、ゼロッ!」
拳が閃き、ビームマントを弾き飛ばす。
光が弾け、アカリのロボットが一瞬体勢を崩した。
「……へえ。やるじゃない。」
アカリの声がわずかに揺れる。だが、すぐに立て直した。
マントのエネルギーが渦を巻き、空気が震える。
防御も攻撃も兼ねたその一撃は、まさに嵐のようだった。
「マスター、被弾すれば大破します!」
「わかってる、だから——避ける!」
アークゼロがギリギリの距離で反転、マントの渦の中を滑り抜ける。
そして、渦の中心。ほんの一瞬、防御の穴が開いた。
「今だ、ゼロ!」
連撃が炸裂する。
拳、肘、膝、そして回し蹴り。
光と砂煙が爆ぜ、相手のロボットが膝をついた。
「……ターゲット停止確認。勝者、アークゼロ。」
教官の声が響く。
静寂。
砂煙の向こうで、アカリのロボットが静かに頭を下げた。
アークゼロが俺を見上げる。
「マスター……私、勝ちました。」
「おう、よくやった。完璧だ、ゼロ。」
胸部の青い光が柔らかく瞬く。
その輝きに、俺も自然と笑みを返した。
——そして、通信が再び入る。
今度はアカリ本人の声だった。
「……大田カケル。まさか接近戦で私に勝つなんてね。」
声にはまだ余裕があったが、どこか楽しそうでもある。
「偶然だよ。運がよかっただけだ。」
「ふん……素直に喜べばいいのに。」
短い沈黙。
アカリは視線を逸らさずに言った。
「でも、あんた……悪くない。
そのロボット、私の“リヴェルタ”と違って直感的。
……ちょっと、気に入ったかも。」
「気に入った?」
「な、なんでもない! 次は本気出すから!」
通信が途切れる。
その瞬間、アークゼロが静かに言った。
「マスター、彼女……興味深いです。」
「……ああ、同感だよ。次は負けないって顔してたな。」
砂煙の向こうで、ツンとした背中が去っていく。
それが、俺と羽賀アカリ——
そして、アークゼロと“リヴェルタ”の物語の始まりだった。
お読み頂きありがとうございます!
今回は「羽賀アカリ」との出会いを書かせて頂きました。
初めての作品で、自分の妄想を文章にするのに悪戦苦闘しております。
次話完成次第投稿していきますので宜しくお願い致します!
YouTubeにて本話の紙芝居動画を投稿しております。視覚聴覚でもお楽しみ頂ければと思います!
https://youtu.be/syagO3NAG3o




