【EP2】シンク・テスト
人と機械が、心を繋ぐ時代。
パートナーは感情を持ち、意思を持ち、共に戦う存在——。
だが、“心を通わせる”ということが、これほどまでに生々しいとは思わなかった。
リンクの瞬間、俺は確かに感じた。
アークゼロの中にある“想い”と、“何か別の記憶”のざわめきを。
——この絆は、ただのシステムじゃない。
ここから、本当の「共鳴」が始まる。
「大田カケル、機体との初期リンク試験を開始する」
訓練室に響いた教官の声は、金属質な壁に反響していた。
真っ白な試験区画。中央にはアークゼロが鎮座し、その周囲に円状の制御装置が並んでいる。
「緊張してるか?」
隣で整備士の青年が笑う。
「まあ、ちょっとな。」
俺は深呼吸をして、リンク用ヘルメットを頭に装着した。
内部は想像以上に静かだった。
脳波を機体に直接同期させるシステム、“シンクモード”に入る準備が整う。
「準備はできた、マスター?」
通信越しにアークゼロの声が響く。
先ほどよりも柔らかく、少しだけ人間的に感じる。
「おう。こっちはいつでもいける。」
教官のカウントが始まる。
「——リンク開始、3…2…1」
視界が一瞬、光に包まれた。
次の瞬間、世界が変わる。
頭の中に、膨大な情報が流れ込んできた。
外気温、風速、重力バランス、心拍数——
それらが俺の意識に直接重なり、機体の感覚がまるで自分の体の一部のように感じられる。
そして、俺の思考のすぐ隣に、別の“声”が現れた。
「……聞こえる? マスター。」
「ああ、聞こえる。これが“シンク”か。」
「あなたの脳波、思ったより荒いね。まるで嵐の中みたい。」
「悪かったな。新品みたいに綺麗じゃないんだよ。」
アークゼロが沈黙する。
その瞬間、心の奥に、微かな“笑い”のような感情が伝わってきた。
——感情? まさか。
リンクを通じて、相手の意思が直に伝わる感覚。
理論では知っていたが、実際に体験すると、まるで心を覗かれているようだった。
「大丈夫。調整は私がやる。……あなたと私、きっと合うと思う。」
「そうかよ。頼りにしてるぜ、相棒。」
教官の声が響く。
「シンク率、87%……安定している! 新記録だ!」
室内に歓声が上がる。
俺は思わず笑った。
アークゼロも、青い光を柔らかく瞬かせている。
——そのとき。
頭の奥で、誰かの“声”が囁いた。
『……また、あなたなの?』
一瞬で視界が暗転した。
ノイズが走り、警告音が鳴る。
「カケル! シンクを切れ!」
「……ま、待て……今、何かが——」
強烈な閃光。
リンクが強制遮断され、意識が遠のいていく。
最後に聞こえたのは、アークゼロの声だった。
「マスター……大丈夫? ……あなた、泣いてる?」
——闇の中で、確かに頬を伝う温もりを感じた。
お読み頂きありがとうございます!
今回は「心を繋ぐテスト」と「謎の記憶の片鱗」を書かせて頂きました。
初めての作品で、自分の妄想を文章にするのに悪戦苦闘しております。
次話完成次第投稿していきますので宜しくお願い致します!
YouTubeにて本話の紙芝居動画を投稿しております。視覚聴覚でもお楽しみ頂ければと思います!
https://youtu.be/dYWwECAV0bA




