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第二章:土の匂いの秘密特訓!

挿絵(By みてみん)



キャロ太郎は、ケンタの顔の前に、いきなり自分の緑の葉っぱを突き出した。「へなちょこケンタ、お主は全く元気がないニン! その心の畑はカラカラに乾いてるキャロ!」キャロ太郎は、そう言い放つと、ケンタの部屋を探索し始めた。忍者のように素早い動きで、あっという間に本棚の裏やベッドの下を調べ尽くす。「ふむ、どうやらこの家には、真の勇気を育てるための栄養が足りないニン!」キャロ太郎は、残念そうに首を振った。


ケンタは混乱した。「ニンジンさんが、僕の部屋を…?」彼は、まだ状況が全く掴めていなかった。キャロ太郎はそんなケンタにお構いなしに、窓の外を指差した。「お主、明日から拙者の特訓を受けるキャロ! 真の勇気を育てるには、まず、この体から変わるニン!」特訓という言葉に、ケンタはぞっとした。体育の時間が苦手なへなちょこケンタにとって、それは悪夢のようだった。


翌朝、まだ太陽が眠っているような薄暗い時間、ケンタはキャロ太郎に起こされた。キャロ太郎は、いつの間にかケンタの部屋の隅に置いてあった、ひいおばあちゃんの古びたガーデニング用品一式を背負っていた。それは、錆びついたシャベルや、使い込まれた熊手、そして何年も使われていないであろう水やり用のジョウロだった。「さあ、ケンタ、行くニン!」キャロ太郎は、嬉しそうに葉っぱを揺らした。


キャロ太郎がケンタを連れてきたのは、団地の裏にある、使われなくなった小さな畑だった。雑草が生い茂り、土はカチカチに固まっている。そこは、まるでケンタの心のように、荒れ果てていた。キャロ太郎はシャベルをケンタに渡し、言った。「今日の特訓は、この畑を耕すことニン! 土を耕すことは、心を耕すことにも繋がるキャロ!」


ケンタは、戸惑いながらもシャベルを握った。固い土は、シャベルの先を跳ね返す。何度試しても、なかなか土は掘り起こせない。そのたびに、ケンタの心は折れそうになった。しかし、キャロ太郎は決して諦めない。「もっと深く! もっと心を込めるニン! 根を張る野菜のように、お主も心を強くするキャロ!」キャロ太郎の励ましは、時に厳しく、時にユーモラスで、ケンタの心にじんわりと染み込んでいく。


汗だくになりながら、ケンタは必死にシャベルを動かした。すると、不思議なことに、土の奥から、かすかに甘く、懐かしい匂いがしてきた。それは、ひいおばあちゃんの庭で、収穫したばかりのニンジンの匂いに似ていた。そして、カチカチだった土が、少しずつ柔らかく、ふかふかになっていく。土の匂いが、ケンタの心に、じんわりと温かい何かを灯し始めた。


その日の夜、ぐっすり眠りについたケンタの夢の中に、遠い昔の光景が広がった。そこは、緑豊かな畑がどこまでも広がる、美しい里だった。そして、畑の真ん中に、一際大きく、堂々としたニンジンが立っていた。そのニンジンは、ケンタに向かって優しく語りかけていた。「この土は、多くの命を育む。そして、その命は、また新たな命へと繋がっていくのだよ…。」


ケンタは目を覚ました。夢で見た光景と、土の匂いが、鮮やかに記憶に残っている。彼は、今まで全く気にしていなかった、ひいおばあちゃんのガーデニング用品をじっと見つめた。その中に、埃をかぶった古い地図が挟まっていることに、ケンタは気づいていなかった。その地図には、消えかかった文字で、「幻の忍術書、土の奥深く、魂の根源に眠る」と記されていた。

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