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*華麗なる姉妹の特別なジジョウ*  作者: 六軒さくみ(咲海)


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37/50

小さな親切、余計な計画3


 ディナル公カルロと言えば、

 カーディナルフェル家の当主であり、宗教本国アンタレスの出先機関もしくは支部とも言われる、宗教市国ディナル公国の公主でもあり、本国に置いては、法主を筆頭とするピラミッドの上位に位置する人間でもある。



 一族の紛争が華やかに行われていた頃(その紛争の方法ときたら華やかどころではない)カルロ公は前公主であり父であるアンジェロ公の急死を受けて弱冠25歳で公主となった。

 当時、コクーンと地球側の関係は緊張状態で(現在も同様ではあるが)月と地球の関係も緊迫した状態であったから、アンジェロ公の死亡原因については、様々な憶測が飛び交ったのだ。


 暗殺であったとも噂されたが、新公主のカルロ公が凛然として沈黙を貫き、伝えられていた本家デュオン家との確執にも黙秘を貫いた。

 彼の就任式には、本家の当主で実質上地球圏の経済を握り、国連に対して強い力を持っていた人物が参列し、その彼にカルロ公が公の場で分家として膝を付いたこともあり、人の噂もなんとやらとばかりに謀殺説に関しては次第に収束していった。


 カルロ公は就任と同時に、婚約状態にあったマリアリリーナ・フィーラ嬢と結婚したこともあり、カーディナルフェル家とデュオン家の確執は密やかに囁かれてはいたが、この一連の出来事により表面上は消息していた。


 あまり評判がいいとは言い難いデュオン家の当主と違い、カルロ公の一般的な評判といえばすこぶる良好で穏和・温厚とアンタレスに属する者はこうあるべきだ、としばしば引き合いに出される程の人格者でもある。


 ひとまわり以上も年下の人間と比べられている本家当主の心情は一言では言いがたいものの、一部の人間の間では、カルロ公の評判が腰抜けであるとかアンタレスの腰巾着と囁かれているのも事実である。

 万人に評判のいい人間など存在するはずもないので、当然であると言えば当然である。


 だが決して一筋縄ではいかない人物であるという見方もある。

 カルロが公主となったばかり頃から悪化の一途を辿りつつあるコクーンと地球圏国際連合両者の間を取り持ち、時に調停役として、時に意見する立場として、活躍していた人でもある。

 その上、一ヶ月ほど前まで地球圏国際連合の議長でもあった。


 カルロ公が議長の席についたのは、悪化の一途を辿る地球とコクーンの間を取りなすのに最適な人物であると同時に、アンタレスが圧力をかけた結果でもあり、今やアンタレス自体をも脅かす程の存在となったデュオンを牽制する意味合いも含まれていたこともある。  


 そこにコクーンの独立問題や経済問題、軍備における地球圏側のコクーンに対する抑圧など様々な要因が絡み合って、普通の人間であったのなら一日で投げ出すか暗殺されるか、はたまたと言うような重要で困難極まる役職を、微笑み絶やさずやってのけていたのだからその手腕は、ばず抜けていると言っても過言ではない。


 政治家としてはある程度の評価を受けているカルロ公だが、突如として爆弾を落としたのだ。


 先にも触れたように、デュオン家とカーディナルフェル家の確執は一部の人達の間ではかなり以前から囁かれていた公然の出来事で、何があったのか様々な憶測が飛び交ってはいたが誰の目にも出来事として思い出されたのは20年前と16年前の事件だった。

 20年前と言えば前公主アンジェロ公夫妻の突然の死、16年前には地球とコクーンとの対立が激化し、そのあおりでアンタレス三軸のひとつであったカーディナル家一族が全員、生死不明となった時期でもある。

 カルロ公の長女と言われた次期公主のレリファン卿の年齢は本年で24歳、四女と言われたサラディーラ卿の年齢は20歳、ピタリとマッチする数字がそれを裏付け、今や天も地も上へ下への大騒ぎで、内紛すら起きそうな(一部ではすでに起きている)状況にある。

 

 そんな中、登場したのがミカエル5世の死を受けて新たにアンタレスの最高責任者となったガブリエル10世で(ミカエル5世の暗殺事件はまた別の話)で、彼は「神の宣司によりディナル公の男を女として育てなさいと言いました」と宣言、また誘拐の事に関してはデュオン家の一部の心のない人間が起こした事件であり、デュオン本家自体に責はないとも宣言した。

 その宣言に「そうですか」と納得なんて出来るわけがないのが世間というものだが、カーディナルフェル家とデュオン家の双方がともに矛を収めて静観している以上は、外野が口を出せない状態で、カルロ公の発言や国連の情勢など、裏でどのような取引が行われているのか、どのような取り決めが行われているのか嵐の前の静けさのようなこの日々に人々が恐怖と不安を感じていたのだけは確かだった。


 その政治的手腕を高く評価されつつも、狡猾であるとかしたたかであるとか、強引であるという言葉で賛美されたことのないカルロ公が、一族間にあった確執を語り、混乱に陥れたのは事実で、それと同時期に、カルロ公は地球圏国際連合議会の議長提案として、一発の核にも勝る核弾頭を議会に落としたのだ


 核弾頭は確実に議会にそして地球圏に命中した。


 直接的に手を下さないまでも、それが要因となり、今まさにコクーンと地球圏の間で武力による解決が行われようとしている。




「ただいま、戻りました…お父様」


 一部では戦争が始まったと伝えられているのに、ここは穏やかだ。


「……月の様子はどうだった、キラ?」

「あと、ひと月もあればというところでした。ですが、そのひと月をコクーンがしのげるかどうかは……五分というところだと思います」


 大きな窓からは、沈みゆく太陽のオレンジ色した光が差し込み始め、空の色が徐々に変わろうとしている。


「……月の女神が身まかったそうだな」

「……」

「マルスと同じ日にとは……これも定めなのかね」


 カルロ公は一つため息をつくと、再び口を噤んだ。 

 いかにお転婆で傍若無人なキラであろうとも、父のこの様な姿を見て追い打ちを掛ける性格の持ち主ではなく、又、キラ自身も思うところがあり、日頃のキラには本当に珍しく父の傍らに歩み寄ると、静かにその場に佇んだ。



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