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*華麗なる姉妹の特別なジジョウ*  作者: 六軒さくみ(咲海)


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プリンセスの偉大なるみち5


  ────さて、話は翌日。



 世の中には悪運の強い人間というのは確かに存在する。


 かくゆうサラの双子の姉であるキラはその見本のような人物であるというのが、家族そして本国アンタレスのセレスの一致した意見である。

 アンタレスを神と崇め崇拝する神職にあるガブリエル10世が率先して、キラ嬢の悪運説に納得するなど言語道断なのではあるが、だがしかし、どう見ても、どう考えても、どう否定しても悪運に恵まれた人としか判断出来ないのがキラであった。


 悪運の強い人というのは大抵、悪いことやそれに類することをしても報いを受けず、下手をすればそれすらも利用して上昇気流に乗ったり、道が開けたりする。

 必死に神の加護を祈り日々、努力を重ねている人間からは、悪魔の生まれ変わりと言っても過言ではなく、天敵にもカウントされる。 

 そして、その悪運なるものが強い場合、とばっちりを喰うのは周囲の人間であり、サラなどは最たる者かと思いきゃ、キラの陰に隠れがちだが実は悪運ならぬ強運の持ち主である。


 つい最近まで双子の妹だと信じられていたサラが、実は男であったという事実は、キラの二人の姉も実は男であったという事実とともに地球上ひいては地球圏を駆けめぐり、それこそ驚天動地、上へ下への大騒ぎとなったわけだが、それはまた別な話である。

 サラは、姉と比べても遜色のない見事な美少女であったのだから実は男です、息子です、と言ったところでにわかに信じがたい事実であった。

 姉とは対照的に肩で切りそろえられた青みがかった黒髪は艶やかで美しく、陶磁を思わせる肌はシミ一つ見当たらない。

 大きな瞳は蒼い海とも、突き抜けるほどの蒼天ともたとえられた人物である。

 体つき一つとっても男としての要素は全くもって見当たらないのだが、無理矢理にでも探し出そうとするのであればその思考回路だとの話もある。


 確かにキラはしたたか娘である。


 表向きはしとやかで清楚な深窓の令嬢を演じているが、実は即断・即決・即実行をモットーとする可憐で過激で手加減というものを知らないご令嬢で、また何をやるにも大胆不敵なうえ大雑把な所があるのだ。

 あげく口が達者で感情の起伏は激しいときているのだから始末に負えない。

 そのキラのストッパーであると豪語しているサラも、実はキラよりもしたたかだった。

 同じ双子で、どうしてここまで違うのかと、父親を嘆かせるキラとは違い、サラは何事もそつなくこなす優等生である。

 別にキラが不器用であると言う訳ではないが、概出のとおりとにかく何事に置いても大雑把な所があるだけなのだ。 その大雑把さが災いして、キラは一度として学業においていい成績を収めたことがない。

 特段、頭が悪いわけではない。


 下手をすればとんでもない天才児であるはずなのだ、特に毒舌に関しては。


 大概、毒舌の持ち主というのは頭の回転の速い人物であり天性の素質でもあり頭の悪い人間は存在しない。

 何故なら頭の中に流れる血の巡りが悪ければ、そうそう次から次へと言葉が思いつかないからだ。 

 そういう意味を問われたのなら、サラは完全にキラに呑まれているように見えるが、侮ってはいけない。

 常日頃、キラが先に発言をしてストレスを発散させているから気が付かないが、サラの毒舌はキラの上を行く。

 ただ、それを本人が毒を吐いているという認識がないからなおタチが悪いのだ。


 キラは自分の発言している言葉が毒であることを理解しているし、理解しながらも量産体制に入いるのは相手を怒らせたいときや挑発したいとき、明らかに自分が怒っていることを伝えたいためだ。が、サラはその意識が本当にないのだ。

 だから本当にタチが悪い。


 世にこれを天然という。


 その天然を武器に相手を殺すのはお手の物で、相手に与える精神的ダメージはキラよりも上だ。

 幸にしてキラが先陣をきり突撃をかまし撲滅するので、サラの出番はまったくと言っていいほどだが、時としてそれに触れた人間は、サラと再び相まみえたくないという。

 そしてもう一つ見過ごせない事がある。

 キラのしている行為が危ないと知りつつも、キラにだけは甘いサラは止められないで居る。


「危なくてキラを一人に出来ない」とかなんとか理由をつけては、キラと行動を共にして巻き沿いを喰らっている節もあるが、サラはこれでなかなかな策士であり、時に発案や立案、あげく尻ぬぐいから後始末までを、爽やかな笑顔とともにやってのけるキラの運命共同体なのだ。


 サポートどころか下手をしたらキラの考えに率先して賛同してしまう所だって持っている。


 家出騒動から一連の出来事で見え隠れしたサラの本質を考えれば、ある意味ではキラよりも手のつけようがない人物に成り得る危険性を孕んでいる、

 それがサラディーラ・カイトである。


 ではどこが強運なのかと問われたのなら、サラは一度として怪我をしたことがない。

 大抵の場合においてキラと行動している割にこれは奇跡に近い。

 お世辞にもサラの運動神経は良くない。人並みとの意見もあるし、逆に言えばキラの運動神経が人外だとも言われているのは確かではあるが、それでも怪我の一つも負ったことがないというのはとんでもない奇跡である。


 しっぽを掴まれたこともない。

 何もサラに悪魔の尻尾が生えているわけではない。

 キラに無いかと言われれば否定の限りではないが、サラには絶対にそんなものがない。が、自分の敵に対する報復方法については、サラは人外ではないかと思わせる節があるのだ。

 そして、今まで傍若無人の限りを尽くしてきたキラの後始末を綺麗にしていたのがこのサラなのだ。

 アンタレスのガブリエルや、父もそれなりの手を尽くしてはいるが、陰で暗躍し自分達に手が回らないように取りはからっているのはサラである。 

 一説にはガブリエル10世の弱みすらも握りしめて、その数は十本の指にも余るほどだと言われている。

 大体、キラの悪運に巻き込まれて怪我もしなければ、とばっちりも受けない、という段階でサラには人並み以上の強運が備わっていると考えるのが普通なのだ。

 では何故、悪運ではないかと言えばキラの悪運、サラの悪運は相乗効果で、もっととんでもない事が起きていても不思議ではない。


 そう考えれば、どちらかが強運で、悪運との相殺効果で現状があると考えるのが妥当だからだ。


 ならばどう考えても、まわり巻き込み型核弾頭娘であるキラが強運の持ち主であることはまずあり得ないので、サラが強運の持ち主である。

 だから、このときも、その方式に則ってキラは悪運を発揮し、サラは強運を発揮して、コクーンのひとつの都市の、とある場所で、警備員、警護官、軍人、一般人を巻き込むだけ巻き込んで起きた大乱闘から、二人は誰に見咎められることもなく無事に脱出して、今はすでにシャトルの中だ。



「本当に…いいの?」

「あら、何が?」


 サラの問いかけに満面の笑みで答えているのは、言わずと知れた悪運の女神だ。

 どこなく機嫌がいいのはサラの気のせいではないだろう。


「後始末をしなくてもいいのかって、聞いてるの」

「あら、後始末なら、あのエリートくん達がなんとかしてくれるんじゃなぁい」


 訂正、至極ご機嫌だ。


「乱闘騒ぎを起こしたのは彼らじゃなくてキラでしょ?」

「私は巻き込まれただけよ」

「あれはどう見ても、キラが巻き込んだんだよ」

「私とのお見合いの前にあんなところで遊んでいた方が悪いのよ。いいじゃない、天罰のかわりに私がお仕置きしたたけだもん」


 巻き込まれた三人の哀れな子羊たちの受難も知らず、キラはその後アンタレスに到着しても至極ご満悦であった。


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