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*華麗なる姉妹の特別なジジョウ*  作者: 六軒さくみ(咲海)


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34/50

プリンセスの偉大なるみち4

 

 キラには数々の武勇伝がある。


 言わずもがなだが、豪傑で豪快で豪胆な人であるので当然である。

 豪傑・豪快・豪胆と並べると、強面の猛者を想像しがちだが、キラ嬢は得てして清楚で可憐な容姿の持ち主である。 

 彼女は独特の価値観を持っていて、時としてそれが一般人とは相容れない場合もある。


 たとえば男性の好みを聞かれたのなら「もちろん強い人よ」と答える。

 世の中で彼女より強い男を捜すのは、宇宙に散ったゴミを回収するより至難の業である。


 大の男を顔色ひとつ変えず高笑いしながら、時には可愛らしく微笑みながら投げ飛ばし、ましてやそれが悪人(キラから見たら)であったのなら、理性のストッパーや程度という言葉すらも吹っ飛んでしまいがちで、というよりも、自分から放棄して吹っ飛ばしてしまうので普通の男にはまず手に負えない。

 その上、ためらいや躊躇なんて単語を有しない人でもあるので、辺り一面に死体の山が出来てもおかしくない。

 そもそもキラの言うところの強い人は、何も体力や腕力の事ではなく生き抜く強さを指すらしい。

 確かに生き抜く強さは大切だが、この世界においてキラほど生き抜く強さを持った人などいるのだろうか?


 というサラの疑問はもっともなのだが、逆を言えばキラのその信条のおかげで、自分達が今まで生きているのだと思えば、それを完全に否定することも出来ない。


 さて、そんな彼女の求婚者に対する対応はこれまた、情けも容赦もない、あげくに可愛げもへったくれもない。


 とあるパーティーでの事であるが、キラには愚者として映り、セレスには別な意味で勇者に見えたその青年がいる。

 アンタレスの卿の親類筋に当たる青年で、見栄えのいい堂々とした体躯に、爽やかさを売りに自身を演じていた。

 このような男にありがちな傲慢さも兼ね揃え、女性に対してセックスアピールすることにも抜け目のない、特権階級の親の威光を振りかざすことになんの抵抗も感じない類の人物で、キラが鼻で嘲笑う分類の人間でもあった。

 その青年は最初、ディナルの姉妹を紹介され、長女や次女には差し障りのない挨拶と態度で接していたものの、キラを紹介された瞬間、明らかに目の色が変わった。

 いうなければ野生動物が久しぶりの獲物を見つけたような感じで、猛烈に自分をアピールし出したのだ。


 一般的にキャルローラ嬢は美しく可憐で清楚である。普通の男性ならば惹かれて当然の容姿を持っている。

 コノヨで美しい女性を見てお近づきになりたくないという男性はいないだろうし、美少女が鳥肌が立つほど嫌いだという男も居ないだろう。

 まあ、悪いたとえではあるが少女とも言えないような年齢の女の子であるとか、妙齢を過ぎすぎた女性が生理的に好みだと言うなら別ではあるが、彼は所謂ところのそれには該当しない人物だったので、キャルローラ嬢に多大な好奇心と、たらし根性が刺激されたのだ。


 目の前には無防備な(と彼の目には映った)美少女が、自分の毒牙(と彼は感じた)にかけられるのを待っているのだと勝手に解釈したのだ。

 それが大間違いだが、得てして自分に自信のある男というのは勘違いしながら生きている動物である。

 式典の儀式が終わりフリースタイルのパーティーに移行した時、彼はサラと話をしていたキラに話しかけたのだ。

 キャルローラ嬢として演技していたキラは、心の中では悪態をつきつつも、穏やかな微笑みを浮かべて挨拶を返し、彼からの祝杯を受け取った。が、キラがキャルローラ嬢として大人しくしていたのはここまでだった。

 自分の手をなれなれしく触ったあげく、手の甲に口づけをしようとしたその男を綺麗に身をかわして投げ飛ばした。 彼は何が起こったのか分からないうちに、今度は腹部に美しい足首が見えた。

 その後、彼がどのような命運を辿ったのかは想像に難くない。


 また別の男性は花束を送ってきた。来たのだがその花束の数が尋常ではない。

 百本の薔薇とか、千本の薔薇ではなく、地球上の総ての薔薇を買い占めたのはないのかという程の数で、送られたキラはそのおびただしい花束を見て、ウンザリとばかりにため息をつくと


「この薔薇のトゲでケツを刺してやろうかしら。刺激したら血の巡りが良くなって、少しは贈られた側の人の迷惑とか考えるようになるんじゃないの。でも花には罪がないから国内の保護施設に分けてあげて」と、感慨もなく呟いた。 大体、迷惑うんぬんとキラに言われるようでは終わっているのだ。


 とある男性は豪華なドレスやら宝石やらを大量に送ってきた。所謂、プレゼント大作戦で気を引こうとしたらしい。

 使用人達はそれを半ば呆然としながらキラの部屋に広げたのだが、それを見たキラは手にした宝石に値札を付けていくと「この値段で引き取ってくれるはずだから、現金に換えて保護施設に寄付して。まったくそんな金があるなら現金でアンタレスにでも寄附してやればいいのに」と、またもや感慨もなく呟いた。



「いつまでも、あると思うな寄附と信仰心」と日頃暴言をいってる口から予想も付かない言葉であった。



 それからまた別の男性は、恋文と呼ばれるものを送ってきた。

 電子等でやりとりするこのご時世に、丁寧にも紙とペンを使った手紙だった。キラはそれを中味も読まずに燃やしてしまった。

「私に手紙を読んで欲しければ、ディナルの公用語を使いなさいよ。血統がよくても脳みそが良くない男じゃ意味ないでしゃない。それに紙とペンですって? 怨念がこもってそうで気持ち悪い」と、鼻で笑って呟いた。

 直筆の手紙に対して怨念などとは大変失礼な言いぐさである。


 このようにして、キラ嬢は自分に言い寄る男に対して容赦がないのだが、その割には実体がばれないのは、やはりアンタレスの行き届いた情報操作の賜で、後は家族の涙ぐましい努力のおかげなのだ。


 そんな何から何までも規格外のキラのお見合い相手兼婚約者が、これまた規格外だったからサラの疑問ももっともだった。


「確かにキラのお見合だから何か裏は絶対にあると思っていたけど、これは裏がありすぎじゃないの? 月の女神の息子? 信じられない…」

「ことをやってのけるからセレスなのよ! お見合いして婚約して結婚した次にセレスが求めるのは、絶対に三人の男の子を産めよ」

「……それもありえそうだね……」

「でしょう? だから気になるじゃない相手が」


 満面の笑みで告げられてさすがのサラも一瞬言葉が詰まる。


「でも、相手を見たじゃない棺桶艦で。僕は結構いい感じの人だったと思ってたけど……礼儀正しいし、爽やかな感じがして。それに身長だってキラより上だったし、なんとなく頼りがいもあったじゃない」

「身長なんて、ないよりあった方がいいに決まってるけど、それだけで優越なんて決められないわよ、サラ。別に私は相手が私より身長が低くても気にならないわよ、身長なんていくらでもごまかせるんだし、顔だって整形すればいくらでもごまかせるわ。私が相手に望むことはただ一つよ。強いことよ!」

「キラより強い男の人を捜す方が難しい気がするんだけど……キラの言ってる強いって意味は、別な意味の強いだよね?」

「そうよ。金持ちじゃなくてもいいの、私が腐るほどもってるから。地位も名誉もいらないわ、そんなものじゃ腹が膨れないし。生活力も経済力も無いよりあった方がいいけど、私がなんとか出来るからそれも求めないわ、というより端から女にあてにするような男はこっちから願い下げ。生き抜く強さのある人がいいのよ。お前のために死ねるという男もいらないわ。死なれちゃ困るのよ、一緒に生き抜いてくれる人じゃないと。それに後追いもいや、目覚めが悪くて。だからね、あらゆる意味で強い人がいいの。一緒に添い遂げられる強さのある人。一緒に前に向かって歩ける人。そんな男なら私は無条件でその男を好きになるわ」


 去年、パーティーで語った男に求める理想像はもちろんキラの冗談だ。

 世界中どこを探したって絶対にいるわけがないのだから。それはサラもよく分かっていた。


「勇者がそれだけの人だといいね、キラ……」

「鍛えてやるわよ! 私の一生をかけて!」

「……気に入ってるの? 勇者のこと?」

「気に入ってるんじゃなくて、鍛えてモノになるなら考えるって事。セレスに生殺与奪権をもらったから、好きにするわ」

(お祖父様! なんでそんな権限をキラに託すんですか!バカ! 相手の人に死ねって言ってるのと同じじゃないですか!バカ!)


 アンタレスの後継者候補としてはあるまじき行為であるが、心の中でめい一杯悪態をサラが叫ぶ。

 セレスの名誉のために言えば、セレスは生殺与奪権をキラに託してはいないのだが、この場にいないセレスには弁明する余地すら与えられていない。


「キラ……相手の人が気の毒だよ」

「失礼ねサラ、気の毒なのは私でしょ! 人生なんの楽しみもないまま伴侶を決められて、あげくの果てに子供を産まなきゃなんないのよ。でもね、サラ。一つだけ勇者を気に入ってる所があるの」


 そういって、微笑む顔はいつも見慣れているサラですら面を喰らうほどの優しさで内心、跳び上がりそうな程に驚いたのだ。


「彼の瞳の色!」



 遠く離れた空域の戦艦の中で、マルスがくしゃみとともに感じた背中の悪寒。キャルローラ嬢に恋いこがれた体を一瞬にして凍らせる威力を持っていた……。



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