優雅に勝利のダンスを2
「嫌ですわお姉様。盗み見などではございませんわ、堂々と、のぞき見をしただけですわ」
(それを覗き見っていうんだよ、キラ!)
というリィの言葉は賢くも喉の奥に押し込められた。
どこの言葉だったかに素晴らしい言葉がある
「触らぬ神に祟りなし」今のキラを言い表すのにこれ程ピタリとはまる言葉はないだろうと思う。
その場にいた父、母、レン、リィが同時に心で呟いた言葉はも奇しくも同じであった。
────神アンタレスよ。
あなたはコノヨでもっとも最恐な女神を創造したのです
キラによるサラを連れての突発的な家出事件だけならば、いつものことで、ほとぼりが冷めれば大抵、何事もなかったかのもように、戻ってくる。
時には派手な火遊びをしても、キラは一度として火傷を負ったこともないから、ブチ切れ家出騒動事態は、特別目くじらを立てて怒ることでも(キラに怒ったところで微笑みながらやり返されるのは分かっているし)取り立てて大げさに騒ぐ程のことでも(それこそ天地がひっくり返ってもキラがどうにかなるというのが、想像もつかない)なかった。
レンもリィも両親も、そして邸の者達もキラとサラを存分に甘やかしてその行動を容認していた節もある。
それにともなう損害であるとか、迷惑は一切蚊帳の外に放り投げてしまえば、気に止めるほどの事でもない、というのが家族の一致した見解だった。
目を背けてはダメだ、現実をという心の声もいつしか聞こえなくなった。
と、いうのも、二人の火遊びの大半は自分たちの身を守るためであり、父の命を守るためであるという、大儀名分が必ずついて回っていた事もある。
その大儀がなければキラとサラのやっていることなど、犯罪行為の何者でもない。
さて、そんな好き勝手なことをやっていながら、今まで世間様をだませていたのは、キラのしたたかさがなさせる技だ。
それは群を抜いていて、サラを要しての偽装工作や隠蔽工作はまさに、神の領域と化している。
神の領域に存在した2人も、キラの「見られちゃったかも?」という一言で今回だけは一挙に人間世界に落ちてきたわけだが、そこはキラの演技力で凌ぎ、二人だけの秘密として棺桶艦に置いてきた。
その2人でもどんなに手を回し、どんなに小細工を労したとしても誤魔化しきれないプチ家出騒動となってしまった。
キラは父から伝えられたお見合いが、気に入らなかっただけで(それが重要なのだが)別に、大騒動を起こそうなど微塵も思っていなかった(思っていなかっただけでトラブルを好んでいる質なのは否定できない)。
一体何処で狂ったのかと言えば、本家が本腰を入れて、キラとサラをトッツカマエテ(そう簡単にとっ捕まってくれるようなご令嬢達ではないが)カルロ公とアンタレスに対していろいろな意味の牽制をするつもりだったのだろう。
それは邸に帰還後、サラが笑顔を貼り付けて調べ上げたのだから間違いがない。
余談だが、本家の行動を知り得たサラが笑顔で罵声を吐きつつ、捕まえた手駒を、これまた笑顔のまま闇に葬った
(方法はこの際、伏せておくが)
キラのお嬢様ばなれした(人間離れした)行動力と言動に隠れがちだが、サラもキラとは血を分けた、しかも双子の弟なのだから、その容赦の無さは対を張っていた。
初めてそれを目の当たりにしたレンとリィは、必死に平然を装っていたが、肝を冷やしたのは言うまでもない。
今までキラとサラの火遊びを間近で見たことも、触れたこともなかった二人には、驚愕とか愕然とか阿鼻叫喚(かなり意味がかけはなれるが)ものだった。
アンタレスがサラを望んでいると、父から聞かされた時、キラならばまだしも(逆にキラが男でアンタレスに望まれたのだとしたら、それはそれでとんでもない事になりそう)サラのように優しくて穏やかな人間が、あの魑魅魍魎の巣窟たるアンタレスでやっていけるかと心配したのが、それはどうやら、いらぬ心配だったようで、この時に二人は改めて心に刻みつけたのだ。
キラとサラが「天使の容姿に神の名を持つ双子の悪魔」であると。
サラによる本家手駒に対する公演が終わり、したくもない興奮が冷めやらぬまま二人はキラとサラ、そして父の間で交わされた会話を聞かされ、再び愕然したのは言うまでもない。
ひいては父の壮絶な覚悟にも仰天した。
父のカルロは子煩悩で家庭的な人間である。
確かに政治的な顔を持っているが、アンタレスや本家に対を張れるほどの気概や気骨、全てを犠牲にして何かを得ようとする冷酷な事など出来るような人ではないと思っていた。
しかも犠牲たるものには誰よりも溺愛している一人娘のキラ。
その愛娘に戦争で人を殺せと命令し、あまつさえそれを利用して本家を亡き者にしようとしていると打ち明けられれば仰天もする。
それも何故、キラなのかの理由を聞かされたときには、リィの思考回路は一連の出来事で完全にショートしてしまい理解するまでに何度、聞き返したかわからない。
いずれはこの宗教市国ディナル公国の公主として君臨し三家の掟を託されるレンは、ある程度の事情を知り得ていた節もあり、特段に驚いた様子はなかった。
こうなると、四兄妹の中で一番、お気楽に生きてきて、程よく自由に甘やかされたのはキラとサラではなく、自分であったとリィが思うのは至極もっともな事だった。
サラは生まれたときからアンタレスに望まれ、アンタレスに入る。
この世に生まれ落ちたその瞬間から18年後の未来が決定してしまっている。
アンタレスに入れば二度と自由な生活は認められず、家族とすら逢えない。
入るまでの18年間を自由に過ごしたとしたって誰もトガメダテ出来ない筈だ。
キラも本来なら、ディナル公国のたった一人のご令嬢として、本人の持って生まれた性格や性質を別にしたとしても、これだけの美しい容姿に恵まれているのだから、両親に溺愛され本国から祝福を受け、屋敷うちで静かに健やかに暮らし、いずれ望まれてどこぞの金持ちなり権力者なり、キラが好きだと思える人間に嫁ぐことが出来たはずなのに(政治的要素の強い結婚を勧められる可能性も否定は出来ないが)三家の掟の前に、それはすべて露と消えつつある。
詳しい事はしらなくても、レンとリィが女として育てられたことを考えれば、サラとサラが生を受けた受けたときには、すでに本家の暴走は始まっていたのだ。
近い将来、三家の掟が発動される事は、父は理解出来ていたはずで、生まれたときには間違いなく天使であったキラが後に戦争をすることになると思えば、それまでの時間を奔放に過ごして自由に暴れたからといって誰もトメダテもトガメダテも出来ない。
子は親を選んで生まれることも、家を選んで生まれることも出来ないとは正にこのことだと、リィは心からキラとサラに同情し涙まで流した。
2人の境遇と運命を思って。
そして市国に属する人間であるにも関わらず、キラとサラの身を思って神アンタレスに悪態を付いたのだ。
そんなリィの哀しみを一瞬にして吹き飛ばしたのは、やっぱりというかキラであった。
「お姉様、そんなに悲しまないでください、私なら大丈夫です。最後まで生き残りアンタレスの古狸どもを棺桶に入れてやります。その棺桶の真上で優雅にサラと祝福と勝利のワルツを踊るつもりです。最後にはピンヒールで頭を踏みつけて勝利の刻印を残して差し上げるつものです。本家もお覚悟をなされての狼藉でしょうから、思い知らせて差し上げるわ、誰を敵に回したのか。この際ですから私の信条である恩義は二倍にして返せ、恨み辛みは心ゆくまで存分にを実行するつもりですのよ」
「じゃあ、僕はアンタレスに行ったら祝福のワルツを踊る練習しておくね、キラ」
にこやかに天使の笑顔で悪魔が頷きあっていた。
棺桶をダンスが踊れるくらい並べるということは、現在アンタレスにいるキラの言うところの古狸、概算でも五〇人近くはいるのだが、棺桶に送くるつもりなのだろう、生死関わらずに。
通常ならそのようなことをすれば大量殺人者だし、猟奇殺人だし、大殺戮者の烙印が押されるが「戦争」と「三家の掟」を利用してそれを実行しようと暗に言っているのだ、キラとサラは。
その対象は何もアンタレスだけではなく、本家のデュオンも指している。
キラが言うピンヒールの刻印を押す時は、きっとキラの高笑いが辺りに響き渡るに違いない。
その刻印は皮膚を突き抜けて頭蓋骨にまで達するであろう。
その姿が容易に想像が出来てしまい、その場にいた人間達はみんな一様に同じ表情を浮かべた。
最初に我に返ったのは、脳みそが一番にオーバーヒートを起こしたリィで、動きの止まった脳みそを必死に動かす。
そしていつも周りから、迷惑な程の肺活量と言われている立派な肺を利用して一気に言い放った、と言うより怒鳴りつけた。
隣に陣取っていたレンが両の耳をふさぐ。
「お前ら、事の重大性を理解してるのか!」
叫びと同時に立ち上がると、その拍子にイスが後ろに倒れて派手な音がした。
倒れたイスを見つめていたキラが再び優雅に笑う。
怒声に怯んだ様子もなく、その大きさに驚いた様子もなく優雅に笑っている。
「理解しておりましてよ、お兄様」
お姉様ではなく、お兄様と呼ぶのが嫌な感じだ。
可愛らしい口唇で一度、優雅に微笑むとキラが瞬時に表情を変えた。
「ご理解をしていないのは、アンタレスと本家でしてよ。お家騒動を人類存亡をかけた大決戦にすり替えようとしているのはアンタレスですし、アンタレスの権力を我が者にしたくて暗躍しているのは本家。ですから、人類の味方のキラとサラが鉄槌を下しに行くと、話しているのです」
「お前らはいつから正義の味方になったんだよ、それに人類存亡とはなんだよ、キラ。ふざけるな。戦争だぞ、戦うんだぞ、分かってるのか」
「分かっておりましてよ。でも私は一度も正義の味方などと申してはおりません。人類の味方と申しましたのよ。戦争に絶対的な正義などございません。人類の味方をすると申しましたの」
「リィ兄様、話を聞いていて分かると思うけど、これしか方法はないんだよ。アンタレスがデュオンの手に落ちたら、僕たちは怪物を生み出すことになる。確かに極端な言い方かも知れないけど、デュオンが暴走したら地球の人たちにも宇宙の人たちも害は及ぶんだ。ひいては未来はお先真っ暗になるんだよ」
「だけど、お前ら!」
リィが自分の両手を握りしめた。
怒鳴りたい訳ではない、説教をしたい訳でもない。
ただ、キラとサラが背負わされた過酷とも言える何かに憤りを感じるのだ。
確かにハチャメチャで手を焼く妹と弟であるが、大切な家族であることは変わりがない。
だからリィは憤りと怒りを感じるのだ。本家にもアンタレスにも、そして何も変わってやれない自分にも。
「ご安心なさいませお兄様。私は死ぬつもりはございません。なんであんな姑息で阿漕な奴らに私の命をくれてやらなければなりませんの?」
「だけど、お前、戦争だぞ?」
「生き残るためでしたら何をもしようと思います。本家に鉄槌を喰らわせてアンタレスにアワを吹かせて、私の長年の夢を叶えてみせますわ」
「夢?」
突然、繰り出されたキラの脈絡のない単語にリィが静かになる。
これには、沈黙を貫いていた父も、余りの出来事に内心では動揺して言葉が浮かんでこなかったレンもそして、一挙に頭が活性化しだしたリィも反応した。
娘の夢ときけば大概の父は、笑顔で聞き返せすだろうが相手は絶好調に機嫌(不機嫌)なキラなのだから、警戒して当然といえば当然だった。
「……キラ、お前の夢なんて、父は今まで聞いたことがなかったが」
「まあ、お父様まで何をおっしゃっていますの。私の夢は平凡ですわ。女の子でしたら誰もが憧れるものですもの」
ついぞキラの口から聞けば、どうしても首をひねざる得ない。
辞書で調べて再度単語の意味を確認したくなる平凡の二文字に、女の子。
キラから繰り出されたからには、言葉の裏になにかしらの意味がありそうで三人が三様に首をひねる。
ところがこの場にいて、ただ静かに鎮座していた母が珍しく「ふふ」と笑い微笑みを浮かべたのだ。
常々、レンとリィは思わずにいられないのは、このマリアリリーナという母の気質だ。
深窓のご令嬢として育ち、持ち蝶よ花よと大切に慈しまれたせいなのかは謎だが、ことある事に気を失うのだ。
にもかかわらず、ここぞの時には肝が据わるのだから、不思議な女性である。
しかも的確な判断力は家族で一番の持っている。
このような場に置いて、母ならば哀しそうにキラの手を握るのが常なのに「ふふ」と微笑みを浮かべたのだから、レンとリィは、うさんくさい者でもみるような視線を投げかけた。
「まあ、あなた達はやっぱりダメね。女の子の普通の夢は一つしかありませんわよ」
「そうですわよね、お母様。お父様とお兄様も本当にわかりませんの?」
キラがくすくすと珍しくも年相応の笑顔を見せて笑う。
それは本当に可愛いとしか形容が出来ない表情なのだが、ありとあらゆる意味でキラの笑顔に騙され続けている父と兄が、目を細めて警戒しても仕方のない事ではあったのだが。
「キラの夢って、もしかして」
「そうよ、サラ」
頷き合う双子を前に母が微笑みを浮かべている。
多数決では互角なはずであるのに(多数決の問題ではないのだが)どうも嫌な感じがすると、父が再びキラに視線を移すと朗らかに微笑んだ。
「本当におわかりになりませんの? 女の子の夢は幸せな花嫁になることですわ」
「はあ?」
男三人の見事な調和を前に、サラがあげた乾いた笑い声はかき消されてしまった。
「お前、今なんて言った?」
「リィお兄様。私だって女の子ですもの。普通の幸せな花嫁を夢見ますわ」
「まあ、なら私、今からどんな衣装をきるか考えないと行けないわね、キラ」
この母にしてこの娘ありだとばかりに、リィは目眩を覚えた。
キラのどこをどう押して、どこをどうこうしたら「幸せな花嫁」などという単語がその艶やかで美しい口唇から出てくるのだろうか。
少なくとも容姿は抜群によく、それは文句の付け所などまったく持って存在しない。
だから純白のドレスだろうと、深紅のドレスだろうと、漆黒のドレスだろうと間違いなく着こなし、映えるだろう。
けれど、どう間違っても普通のというのはかけ離れている気がしてならない。
キラが普通の花嫁になれるなど、どんなに卓越した想像力をもってしても誰も思いつかないのだ。
「私の夢は普通の花嫁になって、普通の生活をして、普通の人生を歩むことなんです」と、言われても、その場にいた人間達に出来るのは、一瞬にして凍り付くことだけだった
例外なのは、娘の「普通にありえない」(キラの結婚式が絶対に普通であるわけがない)結婚式に何を着ていこうかと思いを馳せている母親。
(これだって実は現実逃避ではないかと疑いたくなるほどの浮かれっぷり)
キラの突拍子もない、言動に慣れ親しんでいるサラ(いや一説にはキラとサラは共通した嗜好ではなく思考の持ち主であるからだとも言えるが)だけで、キラと日々上品かつ派手な喧嘩を繰り返す父も、なんだかんだとキラを甘やかし続けている長レンも、そして気が付けばいつもキラの悪事に加担して、心のどこかでは楽しんでいるリィも、二の句が告げられないほど驚愕した。
花嫁にはなれるだう、嫁にさえいけばいいのだから。
キラならば引く手あまたなのは誰しもが断言が出来る。
ただし、キラの考える普通とはかけ離れた結婚になるに違いないのだ。
そもそも普通の生活なんて、キラの辞書に存在していたほうが驚愕だ。
生まれだって育ちだって日頃の行動だって、どう考えても普通とはかけ離れている。
ましてや普通の人生なんて送れるはずもない。今だって十分異常と分類される生活をしているのだ。
キラの言うところの波瀾万丈とされる人生。
「キラ、普通って言葉をきちんと正しく理解しているか」
「当然です。私のどこが普通じゃないとおっしゃいますの」
と、不思議そうな表情でキラが言い返すと、リィは二の句が告げられないまま、口をあんぐりとあけてしまった。
「お兄様、誤解をなさっておいてですわ。私は別に波乱に満ちた生活など送りたいわけではありませんのよ。ただ、あたらの方々が許してくださらないから、多少、波乱に満ちた生活になってしまっているだけです。問題が起きなければ特に何かを起こそうとは、まったく思いおりませんわ」
(─────嘘だ!)
誰の心の声であったのかはこの際、明記することは差し控えるものの、とにもかくにもこの場に置いてキラとの優雅な押し問答に勝てるような強者は家族に内に存在するはずもなく、一家の柱である父は話題を変えることにした。
その話題が再び嵐を呼ぶなどと、このときには誰も思っていなかったのだが。
「父上、前々から伺いたかったのですが、キラのルークス、そして月の大聖堂研究所にある例のあれは、どうしたのですか。てっきりアンタレスかとも思っていたが、あれは…」
父が口を開くより早くキラが告げた。
「あれはデュオンの技術ですわ」
「デュオンのって、お前、あれ」
「元はデュオンの開発したものです」
「デュオンがね、設計の段階で放置したらしいんだ。技術的に無理だって判断して。だから、その設計を元に僕が組み直してアンタレスのセレスに持ち込んだの」
その上でサラが「勿体ないよね、あんなに高性能な戦闘機なのに」と告げキラが「でも宝の持ち腐れになるから、丁度いいかもね」なんぞと会話したあげく「こんな時にこそアンタレスは利用しないとね」「そうだね」と頷き合ってる。
─────目の前で悪魔が天使の姿で笑っている。
たわいもない会話でもしているような二人の姿。
言ってる内容は背筋が凍るほどの威力を持っていた。
暖かなこの地方で、今すぐ白い物体がふわふわと降りてくるのではないかと心配するほどの、冷気が家族を包む。
「その設計をどうやって手に入れたんだ? お前達」
聞きたくない、聞いちゃイケナイ、そう思いつつも聞かすにいられないのは人間の性なのか。
言った途端にリィが自分の言葉に激しく後悔したことは言うまでもないが、言葉にした以上は、返事を聞かなければならないのだ。
サラが誤魔化しにかかるが、キラが紅茶に口を付けつつ笑う。
その笑顔は「何かをタクランダ」時や何か「よからぬ計画」を立てたときに見せる笑顔。
「お聞きになりたいの? お兄様」
「き、聞きたくない、聞きたくないが、この際、聞くしかないだろう! 気になってるんだから」
「あれは私がデュオンからのぞき見をして手に入れたものです。まあ、ちょっとばかり手違えてバレたあげくに、今回の騒動の発端になったことは否定できませんけれど」
「そうだったの? 処分しちゃったよ僕」
─────騒動の原因は今回も、お前か、キラ
心の中で呟いたレンの言葉はかろうじて喉で止まった。
「まあ、本家も確証がないからスパイを送り込んで来たんです。私とサラを捕まえて、その辺りの事情をお父様から聞くおつもりだったんでしょうけど。随分と甘く見られたものですわ」
「甘いとかなんとかじゃなくて、原因はお前だろ、キラ。お前が盗んだりしなければ!」
「嫌ですわお姉様。盗みなどではございませんわ。堂々とのぞき見をさせて頂いただけですのよ」
(それを覗き見っていうんだよ、キラ!)
というリィの言葉は賢くも喉の奥で封印された。
「お言葉を返すようですが、ルークスはどうしても必要なものです。先日、試験稼働させましたが、これが大層優れものでした。それにお父様がこれからなさろうとしている事には、必要不可欠です。褒められてこそ、文句を言われる筋合いはございません」
──── ああ、神アンタレスよ
あなたはコノヨでもっとも最恐な女神を創造したのです




