くしゃみをしたらゲズンドハイト
「クシュン!」
今日は日曜日。アタシは1人家にいる。パパ、ママ、エリクは今、ダム周りの森に散歩に出かけてる。アタシだけは家にいる、っていうのもーー、
「クシュン!」
「ゲズンドハイトッ!」
「あ、ありがとう…」
今、外に出たら花粉症すごくて…。また鼻がムズムズしてきたー!
「クシュン!」
「ゲズンドハイト!」
「…ありがとう…」
周りでくしゃみをした人がいたら、ゲズンドハイト、と声をかける。お大事に、みたいな意味で、そして言ってもらったら礼をする…。
これはドイツではよくある場面で電車やら学校やらあらゆる場面で目にする。
けどーー、
「クシュン!」
「ゲズンドハイトッ!」
「……」
朝からずーーーっとコボルトが後ろに待機しててくしゃみした後に健康願ってくれんのはありがたいんだけど、ちょっと、良い加減鬱陶しくなってきたーーっ!またーー、
「ハックション!」
「ゲズンドハイトッ!」
言った後の、ドヤ顔して目を見て頷く、それなんなの。
いや有難いんだけど、ちょっと腹立ってきたーーっ、
「ハッハッ….ハックッショーーンッ」
しまった!今日一の大きなくしゃみが出てしまった!
またあいつがアタシの健康を願ってしまうっーー、
大きく息を吸うコボルト。悪い予感がする。
「ちょ、待てよ」
日本の某有名俳優のモノマネみたいになってしまった。
「ゲズンドハイトーーー!!」
うっさーーーーいっ!今まで聞いたことのない声量で返してきやがった!!
「ちょっとアンタ!!!!おっきなくしゃみしたから、おっきなゲズンドハイトをしろなんてそんなルールは無いのよ?!なんで声出しちゃったの?!アタシしか聞こえてないからってやめてもらえる?!」
「…大きなくしゃみには大きな願いを…」
「いやありがとうだけど?!もう良いよ、今日一日だけで100回は聞いたよッ!どんなドイツ人でも100回とも返すやつはいないよ?!ありがとうだけど、もう十分なの!」
「え…そ、そう…」
え、なんか落ち込んでるんですけど。
純粋な優しさで言ってくれてたからうるさいって断った私が悪いみたいじゃない。
いやだって、どんなことにも限度ってもんがあるでしょ?
コボルトは項垂れてそのまま定位置の暖炉の中に入っていく、おいおいおい、ちょっと待ってよ。
あーもう!
アタシは暖炉の奥でひざを抱える緑の奴の為に市販って売ってる、オーブンで焼くタイプのパンを焼いてあげて、ミルクと一緒に暖炉の前に置いてあげた。
「悪かったわよ。お詫びにパンとミルク置いとくから、好きに食べなさい」
そう言ってアタシは自分の部屋に戻った。
しばらくして家族が帰ってきた。
「アンナ〜今帰ったぞ〜!」
「アンナちゃんも一緒に来れば良かったのに〜」
「オレも家でゲームすれば良かった〜!」
おかえりを言いながらアタシは階段を降りて皆を迎える。
皆の近くにいると、やばい、また鼻がムズムズしてきてーー、
「クシュン!」
「「「「ゲズンドハイト!」」」」
「…ありがとう」
4人分のゲズンドハイトを頂いた。
リビングに出て暖炉の前を見るともう皿の上は空っぽだった。
くしゃみ→ゲズンドハイト→ダンケ
は一連の流れだね。
初めて見ると、日本には無いから最初はとても新鮮に感じるかもですね。