引っ越したら根暗なハウスコボルトが暖炉の中にいました。①
あらすじはノリでハードル上げて書いてしまい、これまた軽ーく勢いで書いたので、軽ーく、読んでへ〜そ〜なんだ〜と思ってゆる〜く読んで貰えると嬉しいです。
アタシは大学生のアンナ。今まで大都市のケルンに住んでたんだけど両親の夢だった一軒家に家族で移り住む事になったの。
そして、今、ここは山の上にある小さな街。森も近くて自然豊かなのは良いんだけど、大学からも離れるし、店も少ないし…。
正直あんまり乗り気じゃなかったんだけど一度住んで、気に入らなければ一人暮らしなりシェアハウスなり探せって言われて、仕方なくアタシも引っ越すことにした。
新しい家は築250年のドイツによくある古い家で、地下がある二階建ての外装が白い家。屋根はえんじ色の瓦屋根で煙突が一本突き出てる。傾斜のある屋根には2つ窓がついていて、あそこが2階のアタシと弟の2部屋みたい。
一階は広い庭が隣接していて見晴らしもいい。
もちろん両親主導ですでにリノベーション済み。
古いけど手入れの行き届いた家みたい。
建設当時からありそうな凝った木彫りのドアをあけると、中にはなかなか綺麗な室内が広がってる。
床板や壁も板が張り替えられてるし、塗り直されてる。キッチンも、トイレも新しくしたみたいね。
引越し当日の今日初めて見たけど、なかなかいいじゃない。
アタシは自慢の長い金髪をポニーテールに結んで引っ越しの準備をする。今日は小春日和でいい天気。動きやすいジーンズと汚れてもいい黒Tシャツで準備万端。
アタシの部屋は2階だけど、まずは家族の荷物を奥のリビングに運び入れる。
玄関を入ってたらまっすぐな廊下があって左にトイレ、右手に二階への階段、突き当たりがリビングね。
廊下を抜けてリビングに出ると広々としたリビングが広がる。左手には大通りが見える小窓、右手には中庭に面した大きな窓ガラスがあって、そこからママが欲しがってた念願の中庭が見える。
広くて見晴らしも良くて、なかなかいい部屋ね。
そして、今入ってきた入口の方の左手には暖炉があるのね。ちょうどリビングの真ん中の位置ね。
この暖炉も古いけどレンガ造りでなかなか良いじゃないーー、
え、誰か居るんだけど…。
ーー暖炉の中に誰か居るんだけど?!
なに、誰これ、体育座りしてるわ。
この服装見たことあるわ。白いシャツに黒いベスト。ベストには八つのボタン。下のズボンは黒い昔の職人なんかが着てるやつ。クルフト…だったかしら…顔は黒いハットで見えないわ。
ってか、なに人の家に、しかも暖炉の中に入ってんの?!完全なる不審者じゃないっ!
顔でも見てやる!
アタシは暖炉の前に行って屈んで顔を見る。
するとーー、
顔は薄緑、メガネはしてるけど、瞳は青い炎が燃えてるみたい。それだけじゃない。耳が、大きくて尖ってる。よく見たら、膝を抱えてる手からはながーい爪が伸びてる。
一目でわかる、人じゃない。
顔を見ようとしたアタシは当然この男(人外)と目が合う。
だけど、アタシはとっさに見えないフリをする。
「…と、暖炉も煉瓦造りの昔ながらの作りね〜」
なんて言いながら、本当は男で見えない暖炉の中を見渡してるフリをする。内心ドキドキよ。
私が覗き込んだ時、一瞬目が合っただけで、特に動きもなく、私が見えることに気づいてないみたい。良かったわ。
アタシは逃げるようにして車にある荷物を取りに戻る。
車にはママとパパ、弟のエリクがいる。ペットのゴールデンレトリバーのジョンは庭で走り回っている。
今、ママはパパと一緒に椅子をリビングに運んでる。エリクは車で満点堂のスマッチで遊んでる。
絶対手伝わせるわよ。
まずは、2人に言わないと、変な奴がいるって。
「ママ、パパ。暖炉の中にさ、変なのいない?」
「なに、行っているんだい?虫でもいたのかい?」
「ママもあなたの言ってることわからないわぁ」
パパは車に頭を突っ込んで物を取り出しているのか、まんまるな体型のまんまるお尻をこちらに向けたまま返事をした。
ママはパパの横に立って、くるくるは短い金髪のパーマが気になるのかずっと髪を触っている。
「いや、ちょっと見てきてくれない?いるから」
2人は頭に疑問符を出しながら椅子を持って家に入っていく。
待ってる間にエリクのスマッチを取り上げる。
「12にもなって何してんのよホント。手伝えっての」
エリクは車の座席に横たわっていたけど、不満げな顔で起き上がる。
「なにすんだよーっ!ねーちゃんがもっとやれば良いじゃん!最近ポメスばっか食ってるから太ってきたって言ってただろ〜良い運動じゃん。オレのも頼むよ〜」
「なーんでアタシがあんたの荷物運ぶのよ。自分でやんなさいよ、だから万年成績ビミョーなのよっ」
「は?!それは関係ないだろー?!」
兄弟2人でいがみ合っていると、ママとパパが戻ってきた。
アタシは思わず2人に駆け寄る。
「ねっ、いたでしょ?変なやつ」
アタシこの目でしっかり見たんだから。
「僕たちには、何も見えなかったよ?アンナは何をみたんだい?ネズミでもいたのかい?」
「えっ?!嘘でしょ?!見てないの?!居たわよ!」
「いないよ、それよりこれを運んでくれ」
パパからリビングに置く大きいスタンドライトを手渡たされた。
あり得ない、絶対いたのにどうして。
ランプを起きがてらもう一度見てみるわ。
今度はママが小さな棚を持って後ろからついてくる。ママもリビングに来るのね。
ちゃんと証明できるわ。
アタシは入ってすぐに見ずにランプをリビングの端に置きつつ、視界の端で暖炉を見る。
やっぱりいる。いるじゃない!
どうしよう、ママもわかるでしょ?
「マ、ママ、このランプってちょっと壊れてない?見て欲しいんだけど…」
さりげなくママを暖炉の中が見える位置に誘導してみる。これでママも気づくはず!
「ん〜?アンナちゃん、少し傷があるけどこれくらいどうってことないわよぉ」
え?ほぼ正面にいるのに、あの暖炉の男が見えない?暖炉の中いっぱいになって座ってるのに?気づかないなんてあり得ない。ってことはーー
見えてない?
嘘でしょ?!
「アンナー!手伝ってくれ!」
パパに呼ばれて、車に一度向かう。
今度はパパとソファーを運ぶのね。いいわ、これはパパのことも確認しなくちゃ。
2人してソファーを暖炉の目の前に置いた。パパの位置、暖炉の中は絶対に見える。人がいたら気づかないわけない!
でも、反応がない…あり得ない、やっぱり見えていないんだわ…。
その後、アタシたちはテーブルやキッチン用品、その他の小さな小物をリビングに置いて、みんなで休憩がてら昼食をとっている。
今皆んなの座るテーブルは暖炉の右側にあって、暖炉の中は見えない。
エリクも何一つ暖炉のことは気にならないみたいだから、コイツも見えていない。
なんなのこの緑のメガネ男。見すぎると見えてると思われるし気づいてないふりするだけで結構の労力。
これからどうしろっての?
それからは謎のこの緑のメガネ男と共同生活を送る事になった。ソファーは暖炉の前にあって、その前にテーブルとテレビがある。
ソファーに座ってテレビを見ると、後ろの暖炉から視線を感じる。
……いるわ。
ここに移って数日、この緑のメガ…いい加減長いわ、緑男は基本暖炉で膝を抱えている。
偶に暖炉でお姉さん座りになったり、立ったりしてる。立つとそれなりに普通の身長そうなのよね、この男。180cmはあるわね、脚しか見えないけど。
さらに数日。
この謎の緑男との共同生活にも慣れて気にしなくなってきた。何もしてこないなら、気にしなければ良いだけ。ソファーでくつろげるようにもなってきたわ。
テレビでモトフリでもみーようっと。さーて、どれ見ようかしら……
「…そのLove SILENTってやつみたい……」
上から声が聞こえたけど、エリクってまだ学校じゃなかったっけ?と思ってアタシは何気なく顔をソファーの背もたれに乗せて真上を見る。
って真上からあの男がこっちを覗き込んだるっ?!
「ギャーーーーーっ!!!」
「ゥオォォーーーーー!!!」
アタシも人生で1番の大声で叫んだのに覗き込んだ張本人も驚いたのか、男も大声で叫ぶ。
ーーいやでもなんでアンタも驚くのよ?!ってか、アンタしゃべんのかい!!
今回は日常ギャグっぽいの書きたくて。
ドイツのあれこれを書いてみます。
続きが気になる方は続きを読んでくださるとありがたいです。