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賭けと論理性について

作者: メロディー

拙作ですが、よろしくお願いします。

 

 ある日、カジノで莫大なチップを儲けている男がいた。


「今日はツイてる!ボロ儲けだ!」



 チップの量を見た女達も男に侍る。


「お化粧直してくるわ」


 1人の女が席を離れた。


 男が勝ち過ぎたため同席する者は侍らせた女達だけだった。


「相手がいないなら私とは、どうですか?」


 ディーラーが男を誘う。


「そうだな!ツイてる内にパパーッと稼いどくか!」


「よろしいですね?」


「ああ!」


「では、こういうのはどうですか?黒か赤、どちらかにあなたと私がそれぞれ賭けるというのは?」


「乗った!俺は赤に全チップを賭ける!」


 ディーラーはニヤリと不敵に笑う。


「それでは私は黒に」


 ルーレットが回り出す。


 先程から勝ちっぱなしだった男は勝利を確信していた。


 玉が転がり段々と勢いを失っていく。


 ゆっくりと玉が向かう先は赤だった。


 しかし、赤にとまると思われた玉は吸い寄せられるように隣の黒に入る。


「私の勝ちです」




 男は一瞬感情をなくした。


 ツカツカツカ。

 女が化粧室から戻ってくる


 次の瞬間。


「イカサマだ!!」


 男は激情しディーラーに掴みかかる。


 ディーラーは事前に台の下にある警戒を告げるボタンを押し、警備員が来るよう手配していた。


 すぐにガタイのいい大男が来て取り押さえる。


「ふざけるなっ!!」


「連れて行け」

 と、ディーラーが言う。


 男は横から身体を掴まれ、半ば宙吊りになって運ばれて行った。


「くそっ!何しやがるっ!」



 男は連れて行かれ、裏口から放り出される。


「良い夢見せてもらって良かったな」


 大男は薄く笑う。


「くそ!イカサマだろ……」


 大男は、殴る姿勢をみせるが男がうなだれ抵抗を見せなくなると、突き飛ばした。


「そういうもんだ」


「汚ねぇぞ……」


「そういう世界だろう?」


「こんなもん……賭け事じゃねぇ……」




 男が演じたのは古典的なワンシーンであった。

 幾度も何に賭けるかを決断して勝ちに勝ち、やがて気が大きくなりすぎ周りが見えなくなっての大負け。


 最後には賭けではないと。


 たしかに必然ではあった。

 だが男は勝っていた時にやめる、という決断に至らなかった。

 その賭けには完全に負けていたのだった。





 そして、場所は変わり……。





「この商品は期待できる!これで行こう!」


 誰もが賛同していた。


「よし!これ以上ないならこれを量産する体制を整えておけ」




 この会社を大きくしてくれた飲料水、カケコーラを改良し最近完成したニューカケコーラ。


 これが市場に出回ればまた大きな利益を生み、いきなり大企業になることも夢ではない。


 カケコーラを真似て作ったライバル会社の飲料水は散々でとんでもない損失になり、その影響でカケコーラはまた一段と売れていた。


 そこで、そのブランド力を利用し、少し甘さが足りないという統計データから甘味を多くその他も改良し全ての層を取り込もうと会社を上げてニューカケコーラを開発していた。


 次の成功を持って、先の失敗で体力を失ったライバル会社を吸収してシェア率を延ばし、ゆくゆくはシェア率第1位の大企業に……。


 足取りは軽く、次なる一手を考えながら社長室へと戻っていった。




 そして、ついにニューカケコーラの発売が始まる。



 社内は活気に溢れ誰もが目を輝かせて仕事に邁進していた。


 カケコーラの売れ行きにあやかり大量に生産して各地域に行き渡らせていた。


 初週の売上は良かった。


 社内でパーティーを開き盛大に祝っていたのも束の間。


 すぐにニューカケコーラの売上は落ち、カケコーラも売れ行きが芳しくなくなった。



「……広告費は多く出しているよな?」


「指示通りカケコーラの倍は出しましたが……」


「……そうだよな」


 地方のマーケットにも出荷しているはず、味も統計データから研究所で最適なものにした。

 今は冬。

 清涼飲料水は売れ行きが落ちるか。




「季節的なものかもしれん。……様子を見よう」


「……はい」






 そして、数ヶ月がたち。



「ニューカケコーラの失敗は私の責任です……」


「責任はとるおつもりですか?」


 記者が言う。


「今回の責任は私にあり、社長の職を辞することとします」


 カシャッ!カシャッ!

 フラッシュがたかれ、男は俯く。


「後任はお決まりでしょうか?」


 カシャッ!カシャッ!





 謝罪会見をしたしばらく後、男は社長の職を辞することになり会社を去る日。


「お疲れ様でした。」


「私のミスで……すまない。」


「あの時は、皆んなおかしくなっていました。成功させ会社を大きくした社長、いまでも私にとっては社長です!」

「社長がやることを信じて、売れると確信していましたから。成功した時の事はまだ目に焼きついていますし、ついて行って良かったと思います」


「ありがとう……感謝する」


「あの決断は論理的で皆信じていましたよ……」



「決断とは、賭けでしかないなぁ……」



 ある男は、決断をし大きな成功を収めるも次の決断では大きく失敗する事になった。

 皆が信じたその論理とはいったい。


 決断は賭けでしかない……とは?





 そしてまた、場所は変わり。




「今日も製造系は下落か」


「しかし、決断は賭けだ」


「だから前もって理論を作ってはいるがどうだかな」


「半導体系は軒並み上昇」


「上がる前に買っとけば良かったなー」



 男は、中小企業に勤め、株の売買を趣味としていた。

 もちろん財産を増やす事が目的だが一喜一憂する、それを楽しみとしていた。

 男は、自分の中で分かっていた。

 将来の予測で市場が先んじて反応する事が、自分にはついていけないということに。


「半導体かー」


「たしかオンとオフのスイッチになっていて、電気を通せばONで、電気を通さなければOFFになる。そのスイッチにより0と1で様々な計算が出来るんだっけかなー?」


「このPCも半導体で動いてるんだよな」



「うむむ、コンピューターは頭脳では1か0で考えていてスイッチがONかOFFかで計算している。論理的だと言っても所詮は1と0のどっちかなんだな」


「なんだろうなあ、どっちを買うか売るか。半導体も株と一緒で賭けみたいだな!」


「賭けでしかないんじゃ分からないよな」


「いっそ未来が見えたらなあ。それが本当の論理なんじゃないか?」



「未来を見てコントロール出来れば本当の論理性が手に入る。将来の予測が出来れば、俺でも株にも勝って働かなくても生きていける。不労所得者……」


「ぐふふふ」



 妄想は膨らむ。

 だが男は何か真実をかすめたような感じもしていた。

 株と半導体の関連性。

 1か0どちらかを複雑に重ねることでの論理性と買うか売るか情報をもとに予測する株式。

 本当にそれは賭けなのか?

 それは、誰にも分からない。


「安いときに買い、高いときに売る!」


「それが出来れば確実に勝てる……」


「未来が見えれば……」


「不正取引だよな。やめやめ」


「次は何に賭けるかなー」






 そして、場所は変わり。

 何百年も時を遡り、むかしむかしあるところに老人がいた。



 いつものように家の前の椅子に座り、茶をすすっていた。


 そこへ、2人の男がやって来た。


「長老!ちょっと困っていることがあるんだが、いつものように教えて下さい」


 長老と呼ばれた男は、いつも村人の諍いを諌め、村を安定させてきた。

 村長でもあったが、一番の長老なので村人は皆、長老と呼ぶ。


「よかろう。申してみよ」


「まず、俺は畑を新しく作りたい。そうすればこの村の食糧も多くなり豊かになる。だから畑に川から水を引きたいんだが良いだろうか?」


「ふむ、でそっちはなんじゃ?」


「はい、僕は川はそのままにして魚たちのために自然を守りたいです。村の教えにも自然を敬い感謝しなさいってありましたよね?」


「そうじゃな」


「それじゃあ、村はいつまでも貧しいままじゃないですか?俺はもっとお腹いっぱい食べられるようにしたい」


「でも、村の教えでは質素倹約、植物であれ生命、命を頂くのは生きるためのみ。でしたよね?」


「ふむ、言いたい事は分かった。しかし、物事には色々角度があり、どちらの意見が正しいかは立場の違いにより相対的に正解も不正解も異なるんじゃ。本当に論理的に正解を求められるかと言えば、どちらかを選択しなければならない場合その決断は賭けでしかないんじゃ。」


「「!?」」


「「えっ」」



「決断は常に賭けであり論理的なものはある意味論理的ではないんじゃ。中途半端な物事にしか論理は通用しないから論理からは正しさを導けない。」


「事象は陰と陽、どちらも打ち消し、補い合い混ざりあって現れているから、正しさと間違いどちらも混ざり合い調和しているのが世界であるから一方を決める賭けは、新たな虚を創りそれを補う混沌により変化してしまい、また調和し分別され陰と陽、2極に分かたれる」


「であるから論理も分別されたものであり、調和という無極ではないため、正しさという分別されたものでは答えが2つ以上に別れてしまうんじゃな。ゆえに、論理は本当の正しさ、皆が思う調和の正しさを導く事は出来ないのである。

 だから人間は分別の中にしか居られないから間違いながら暮らしていくしかない。」


「「???」」


「なんじゃ?」



「多分……答えになってませんよね?」


「だから、どちらも考え続けることが大切じゃ」



「長老!それはないぜ!早く畑を作りたいのに!」


「考えろと言うたじゃろ?」


「畑を作れば食糧は増えてより豊かになる。だが、自然を少なからず壊す事になる……でもやっぱり食糧を増やした方が村のためになるだろ」


「木々を伐採してしまったら森に生きる動物にも影響が出てしまいます。自然を敬う事は大切だと思います」


「開墾するのは悪くはない。じゃが自然に対しての尊敬を忘れれば自分達の首が締まる。小鮮を煮るが如しというがここは村、小国寡民が一番治まる。豊かになり人が増えれば問題が増え、自分達ではコントロールが効かなくなり崩壊してしまうんじゃ。今までにも人間は発展の功罪は受けて来た。先人達からの教えは悪いものではないぞ」


「うーむ、だけど……」


「この諍いがコントロールが効かなくなると証言しておるじゃろう?」


「!?」


「足るを知る者となれ。村の教えを守れ。それが村の人々のためとなる。」



「……この場は分かりました。いつか考えが変わったら言って下さいよ」



「言うておるじゃろ!この場合は、村の教えを守れ。以上じゃ!」


「「ありがとうございました」」




 一方の男は渋々去り。

 もう一方の男は満足気に去って行った。


「茶が冷めてしもうたわ」


そして、

 真実に目覚めている老人は茶をすするのだった。



最後までお読み下さり、有難うございました。

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