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わたしを見つける物語  作者: なづなゆめか
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あたしは、まだ見ぬ世界へ あいなストーリー

あたしは、まだ見ぬ世界へ あいなストーリー


あの日。いおりんは冷たかった。


『いおりんはなんでもできて凄いね』

『別に。こんなの、大したことないでしょ』

『そんなことないよ』

あたしは、たーくさんの折り鶴を手のひらに置いて、いおりんに見せた。失敗作ばかりが溢れていて、見ていると嫌になっちゃう。

『ほら。あたしのはボロボロでしょ』

『なら、やり直せばいいじゃん』

『何回もやったもん。でも、くしゃくしゃー』

『もう、いいじゃん。終わり終わり』

いおりんが、面倒くさそうにその場を去っていく。

『えー』

プクッと頬を膨らませても、いおりんはあたしの顔を見ようとしなかった。いつもの教室の端っこでゲームをする体制に戻った。あたしは折り紙を数枚持って、いおりんの方へ駆け寄った。いおりんは横目であたしを見た。

『朝からずっとやってたでしょ。ランチタイム始まるし。先生、来ちゃうよ』

いおりんが嫌そうにあたしを払い除けた。それがあたしの手に当たって、手のひらに乗せていた折り鶴が床に散らばる。……悲しい気持ちになった。ほら、やっぱり、面倒くさいんじゃん。あたしは黙って折り鶴達を拾い上げる。その様子を見て、いおりんはご、ごめんと気まづそうに謝ってきた。私は何も言わなかった。

黙っているあたしのことが心配だったのか、暫くしてゲームのリモコンを地面に置いて、あたしの方へ駆け寄ってきた。そして優しくこう言ったのだ。

『今日はやめよう。ね?上手くできない日だってあるし』

『やーだ』

はなび先生の誕生日はもうすぐなんだもん。もう時間がない。あたしはいおりんの肩に手を置いてブルブルって動かした。

『なんで!なんでいおりんは協力してくれないの』

そう言って、いおりんを睨みつけた。すると、いおりんはあたしの持っている折り紙を強引に奪い取った。……ビックリした。

『協力してるでしょ。なんなら、これ。殆ど私が作ってるし』

『あたしはまだ綺麗だなって思うもの、完成できてないんだけど』

「はいはい。だから明日やろうね。教えてあげるから』

いおりんの上からな態度に、心がムカムカってしてきた。あたしはいおりんのこういう所が苦手。全然協力的じゃなくて、やってくれたと思ったら、こうなるんだ。自分ができるからって、偉そうにして。

そんないおりんを見て、誰もいい気がしないはずだよ。

こんなんだから……教室に入れないんでしょ?いおりんが周りと馴染めるわけないよ。

……おっと。

頭の中でそんな風に思ってしまった。いけないいけない。こんなこと、本人の前で言わないようにしなきゃ。

『……なんで、分からないのよ』

『だーかーらっ。あたしが分かるように教えてよー』

あたしは、手を合わせて、お願いのポーズをした。だけど、いおりんは笑ってはくれなかった。

『私、結構丁寧に教えてるよね?あいなの理解が遅いだけなんじゃないの』

あたしの……りかい?その瞬間、あたしの心に何かが刺さった。

『それ、どういう意味?』

『言ってる通りだよ』

冷たくて苦しくて……痛い。

そんなの……分かってるよ。でも、なんでいおりんにそんなことを言われなくちゃいけないの?自然と目が地面を見つめていた。あたしは必死で泣くのを、堪えている。泣き虫だから、酷い言い方をされたら、直ぐに泣いてしまうけど、あたしはもう、泣かないって決めてるんだもん。笑わなきゃ、だよね。

いおりんは、吐き捨てるようにそう言って、ゲームに戻っちゃった。あたしは、何も言えずに立ち止まることしか出来ない。

理解が遅い……なにそれ。あたしが、遅いから何?あたしがいい加減なことをしたら、みーんな嫌な顔をするくせに。みんながあたしを……馬鹿にして……分からないことがあるなら聞きなさいってママは言うのに、どうしていおりんも……って……そっか。きっとみんなそうなんだ。こんな出来損ないに、初めから教えたくないんだ。理解が遅い人に、教えたって無駄って思うのかな。あたしは時間がかかっても、頑張ろうって思うものがたくさんあるのに。そんなふうに言ってくる人がいるから、自信がなくなっちゃうんだよ。

あたしは、ゆっくり顔を上げて、いおりんを見つめる。いおりんは、ゲームに夢中だった。……笑わないと。あたしは、悲しんじゃダメなの。泣いちゃ、ダメなの。

キュッと力を入れたら、持っていた折り鶴が床にバラバラ落ちた。気が付かないうちにぐちゃぐちゃになっていたみたい。その音に、いおりんが反応した。

『また落としちゃったぁー』

『何やってんの』

引き気味でこっちを見ているいおりん。……笑わなきゃ。笑わなきゃ笑わなきゃ笑わなきゃ……あれ。笑顔ってどうやってやるんだっけ。表情が、笑えない。……まぁ、いいか。

もう、いいよね。

心のどこかがプチッと切れたみたい。

あたしは、そのまま、こっちを見つめるいおりんに素直な気持ちを伝えた。

『本当は面倒くさいんじゃないの?』

『……へ?』

いおりんはすこーしビックリしているような、すこーし怖がっているような顔をしていた。あたしは今、どんな顔をしているんだろうね。自分でも分からないや。

『そ、そんな……そんなこと、ひ、ひとことも言ってないでしょ』

あたしは、続けた。

『いおりんも、あたしが病気だって言いたいの?』

『……は?』

『あたしはねー、いおりんとは違うからね。檻に閉じこもってないし、明るくて前向きなんだからっ』

『え?あいな、どうしたの?』

『何が?』

いおりんは何に驚いているのだろう。あたし、泣いてないよ?素直な気持ち、ちゃーんと伝えてるだけだよ?それなのに、なんで素っ気なくないの?顔、強ばってるからビックリしてるのかな。これがあたしなのにな。

不思議なまま、あたしは続けた。

『いおりんは、逃げすぎだと思うよ』

ハッキリと口を開けて、言ったから、いおりんは、

『は?どういう事よ』

と急に怒りをあらわにした。けど、あたしは何も、悪くなんてない。悪いのは、教えてくれないいおりんだ。あたしの言ってほしくない言葉だって普通に言ったんだもん。だから、あたしも言うの。

『いおりんって虐められてたんでしょ』

『そ、その話は……』

後のことなんて、考えなかった。考えられなかった。

『そんなの、我慢すればいいだけ』

いおりんはまた悲しそうな顔をし始めた。そして、最悪なタイミングではなび先生が教室に入ってきた。

『二人とも、どうしたの?』

だけど、あたしはそれをやめなかった。先生がいようがいなかろうが、今のあたしはなんでも話せるよ。

『虐めなんて、環境が変われば無くなるじゃんか。どうしてまだ逃げ回ってるの?勉強ができて、授業も普通に受けれて幸せじゃんか。あたしは、いおりんと同じ檻になんて入ってたくないよっ』

強く、言い過ぎちゃったかもしれない、なんて思ったのは、遅かった。いおりんはまた怒っていた。ゲームなんてやめて、あたしのことをじっと見ていた。あたしを睨みつけているような、怖い顔をしていた。そして、教室の机を思い切り蹴った。バン!と鳴った音は、耳の奥まで響いて、とても煩かった。あたしはその場で耳を塞いだ。

『……何よ!同じ思い、した事ないくせに!』

いおりんは、泣きながら、あたしに向かって叫んだ。

『待って。イオリちゃん、落ち着いて』

先生が、いおりんの傍に駆け寄った。直ぐにおさまったけど、まだ、あたしの方を見て睨んでいた。さっきの恐怖が中々離れられず、身体中がブルブル震えて、だんだん息が、苦しくなっていた。ごめんねって、そこで謝るべきだったと思う。だけど、唇が上手く動かなくって、声が、出なかった。

いおりんは落ち着いた声で、こう言った。あいなって、可哀想だよねって。

先生は、どうしようもできない様子であたし達を見ていた。

『人の苦しみを分からない、可哀想な人間だね』

いおりんは、吐き捨てるように、あたしにそう言った。

そんなの、分かってる。

『そうだよ』

可哀想。可哀想。可哀想。可哀想。可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想。頭の中に浮かぶのは、かわいそうという言葉だけ。

いおりん、態々言ってくれてありがとうね。

これで改めてわかったよ。あたしは、可哀想な人間なんだって。でも。

『いおりんも、かわいそうだね』

同じ檻に入っていて、可哀想なあたしたち。とってもとっても惨めだね。

……もう。

もう、やだな。

こんなこと、言ったらいけないってわかってるのに。あたしは、こうやって人を傷つけることしかできないよ。あたしにできることって、人の悪い所を探すことだけだよ。

その時だけは、本当のあたしで居られるね。

でも、こんなの、誰も嬉しくないよね。

あたしだって、辛いんだから。

だから、目から涙が出てくるんでしょ?溢れて溢れて止まらないんでしょう?

ここでも、あたしは上手くやっていけないの?

『あいなちゃん……!』

あたしは、先生の言葉を無視して、走って旧校舎を出た。

『待って、あいなちゃん』

先生が、あたしを追いかけてくる。……どうして。どうして、あたしなんかに。

あたしは、全力で走った。先生の足が遅いお陰で、なんとか走りきることが出来た。

るーりーらしき人とすれ違った気がしたけれど、そんなことはもうどうでも良かった。

……痛くない。辛くなんて、ない。あたしは、もう、大丈夫だから。心でそう唱えながら、キュッと手を握って歩いた。だけど、今日みたいな日、もういらない。いおりんにも、酷いことを言ってしまったから。あたしはもう、学校へ行ったらダメだ。……限界なんだ。

あたしはいつも通りの笑顔で、ママにただいまを言って、家に入った。

あたしの心には、ふかーい傷が、残った。


あーあ。もう、あたしは、学校に行かなくていいんだ。だって、あたしがいたら、厄介で迷惑なんだから。それなら、大人しくお家に居るべきなの。

夜は中々眠れなくて、結局朝まで起きていた。ベットに寝転がって天井を見上げ、考え事ばかりしていた。カーテンの隙間からピカッて朝の光が差し込んでくるけれど、もう、開けなくてもいい。あたしに、光なんて、似合わないんだもん。

いつもの時間になった。

「あいなー。朝だよ」

と、ママの声がした。起こしに来たけど、今日は無視した。それに心配したのか、暫くするとママが部屋に入ってきた。足音に気がついて、あたしは急いで布団を被る。

「今日しんどいからお休みする」

布団を被ったまま、そう言った。

「どこの辺がしんどいの?」

「うーん全部!」

「最近は、ずっと保健室に居たんでしょう?保健室のベットで休んでいたら?出席だけでも取っておいた方がいいわよ」

ママは適応教室の存在を知らない。だから、授業に出ない日はいつも保健室に居るのだと思い込んでいる。それは、はなび先生といおりんから内緒にしてと言われていて、あたしがお口チャックをしているだけ。もしこれが内緒じゃなかったら、直ぐに言っていたと思う。まぁ、どっちにしろ、あたしは教室に行く回数はみんなより少なくて、別の場所へいる時間の方が多いって言うことは同じだけど。

「いいの」

保健室に居たとしても、はなび先生がいることには変わりない。今は、誰にも会いたくないもん。

「そっか。なら、担任の先生に電話しておくね」

ママはそう言ってスマホを取り出して、学校に電話を繋げた。

「もしもし。埴生です」

ママの姿を布団の隙間からジッと見つめながら、思った。ママは、優しい。あたしのことを一番にわかってくれている。今の学校へ通い始めたのは、ママがこの学校が大好きだったからなのと、るーりーがこの学校にいたからだ。るーりーがいると聞いた瞬間に、あたしはここへ入りたいって思った。本当は難しいお勉強をして、入らないといけないのだけれど、ママがとある事情を話したら、しっかりと学校が対応してくれた。お陰であたしだけ難しいテストを受けなくても入ることが出来た。本当はいけないことだけれど、卒業に必要な大事なこともあたしのは甘めにしてくれたり、授業も無理に全部は出なくても大丈夫だよって校長先生が教えてくれた。そのタイミングではなび先生といおりんと知り合って、るーりーともまた一緒に居られるようになった。この学校に入学ができたのは、色々な人のお陰だけれど、一番にありがとうって思うのはママだ。

……でも、あたしはもう学校には行けない。ママをまた、困らせるようなことをしたら、ママが大変だもん。学校へ行かないことも、困らせてることかもだけど……でも、学校に行かない方がまだいいよ。だって、誰も巻き込まないんだもん。家でじっとしてた方がいいの。

この暗闇で、中学生の頃みたいに、引きこもるの。あたしだって、それを望んでいたはずだったんだから。あたしはその日、一日中部屋に篭もり続けた。

次の日もその次の日も、あたしは学校を休んだ。だけど、ずーっと家にいるのが申し訳なくて、お昼は探検に行ってくる!と行って外へ行ったり、お家のお手伝いをした。ママは、あたしの好きなことをしたらいいと言ってくれた。学校を休んでいて苦しい思いをしていないのに、家にいても心から楽しいって思うことが無くて、本当にこれで良いのか、分からなかった。


ある日の朝。

「あいな」

「うわっ」

目を開けたら、天井と、ママがドーンと見えた。ママが、勢いよくお布団を上げてきたのだ。ビックリして、心臓が止まりそうになった。

「もーう。急すぎるよぉ」

声を上げて笑うと、ママがおはよと元気よく言った。そして

「久しぶりにドライブでもしよっか」

と急なお誘いをされた。戸惑う。

「……眠いー」

パンダのぬいぐるみをギューって抱きしめながら、あたしはママにそう訴えた。

「でも、車の中で座るだけならいけるでしょ。パジャマのままでもいいからさ。ママのお話に付き合ってよー」

ママの甘々な声は、幼い子供みたい。一体ママはいくつなの?って思っちゃう。ママはママだけど、時々ママって感じがしない時がある。

……部屋に居たら、辛くなっちゃうだけかもしれない。ママは、あたしのために、誘ってくれてるのかな。……ごめんって断ったらもっと心配させちゃうよね。

「しょうがないなぁ。行くー」

あたしはママのお誘いに乗った。学校であったことは辛いけれど、今は、ゴックンするしかない。そう思いながら、渋々と布団から出た。

ママは、車の運転が得意。パパは下手っぴ。ママの運転が好き。ママのお隣はあたしの特等席。ママは、お出かけが大好きだから、いつも色々な所へ連れて行ってくれるんだ。平日のお昼に出かけるのは、いつもと違って少しだけ緊張するけど、ママが隣にいるってだけで安心する。あたしは、車のドアを開けて、いつもの席に座った。いつもは、マップの画面を付けているのに、ママは付けようとしない。

「ママ、今日は何処へ行くの?」

「今日は、只管話すだけ~」

そう言いながら、ブーンと車を走らせた。

「だから、話しまくろっか」

ママは、ハンドルを持って、運転しながら話し始めた。

「あ、見て。今日の雲、なんか綺麗じゃない?美味しそー」

あたしはママの視線に目を向けた。今日の雲は真っ白な雲、というよりも、鼠色みたいでわたあめという感じはしない。

「……そうかなぁ。美味しくなさそうだよ」

「そっかー。私は美味しそうに見えたけどなー」

ママは、少し残念そうな顔をした。ママもママで思うことがあるみたい。

「ねぇ。ママはいつから自分の世界があるの?」

あたしは、ママに似てるのかなって、時々思う。

「生まれてから、ずっとあるよ」

やっぱり。あたしと一緒だ。

「だから空想ばっかりしているの?」

「まぁねー。友達からは呆れられることもあるけど」

「それ、辛くないの?」

「うん。何だかんだ話聞いてくれるしねー」

「それでも。馬鹿にされて嫌じゃないの?」

「うーん。今は嫌じゃないかなー」

ママはハンドルを左右に握りながら話を続けた。

「昔はね、からかってくる子もいたかな。それが凄く辛くて、自分の世界を隠しながら生きてた。だけどね、ある友達は、私の個性を凄く大事にしてくれたの」

「そのお友達ってるーりーのママでしょ」

「正解!るーりーママとの時間は、とっても楽しかったなー」

ママはとっても嬉しそうに昔のことを語った。ママはるーりーママの話をすると、いつもおめめがキラキラってなる。

ママはあたしに似ているけど、似てるってだけであたしとは違うな。

「ママ……あたし、"見えない何か"のお話を書きたいって思ったんだよ。だけどあたし、漢字とかわからないし、言葉も難しくて上手く書けない気がするの」

「それならこれから勉強すればいいじゃない。学校でも、頑張ってたでしょ」

「……でも」

ふとももに乗せてある手がブルブルと震えている。

「最近、花丸のドリルを見ていないけど、やってないの?」

「……うん」

「そっか。まぁ、焦らなくていいんじゃない」

ママは怒らなかった。ママはあたしに甘い気がする。

「でも、やらないと夢に近づけられないよね」

「そんなに重たく考えなくてもいいのよ」

……そんな風に、言われても、な。心のどこかがギュッと締め付けられる。

……また、あの時みたいに、笑えない。

黒い自分が、また出てきちゃう。

……怖いよ。

黙って真っ直ぐに前を向いていたら、ママから視線を感じた。丁度、信号待ちで車が止まったみたいだ。

「やっぱり。学校で何かあったのね」

そう言われて、あたしはビュンビュンと首を横に振ったけど……ママはまだあたしに視線を向けていた。

……やめてよ、ママ。心配そうな顔で、見ないでよ。

ママは呟くようにこう言ったのだ。

「昨日も、一昨日も、一昨昨日も、瑠璃ちゃんが来てくれたのよ」

……るーりー。


るーりーは、小学生の時に救ってくれたヒーローなんだから。そしてそれは、中学生の時も同じ。

中学の時の運動会の出来事があってから、あたしの心はドロドロだった。あの時も学校へ通うことが出来なくなって、今みたいな状況にだったっけ……いや、あの頃の方がかなり心は苦しかったと思う。るーりーとは学校も違うくて、はなび先生みたいな優しい先生なんていなくて、しんどい授業も毎日受けていたから、完全に疲れ果てていたんだ。

中学三年生の受験シーズン。その時に、るーりーと同じ高校へ行かないかという話をママがしてきた。ネットだけの学校とか、年に数回だけしか通わなくてもいい学校もあるから、あいなの行きたい所でいいのよとママは言っていたけど……

『……あたし、るーりーとおんなじがいい。るーりーがいたら、大丈夫な気がする』

そう言って、あたしはこの学校へ入学したのだ。

中学校を卒業して、高校の見学へ行くことになった。久しぶりに外へ出る時は不安でいっぱいだった。でも、るーりーのお陰でその不安が一気に消えたんだ。玄関を出ると、るーりーがあたしの家で待っていてくれていて、ビックリした。ハッキリとした顔立ち、スラッとした体型。トレードマークのポニーテール。久しぶりに顔を見て、最初は少しだけ緊張したけど、あたしの思っていたそのまんまのるーりーだった。あたしは、泣きながらるーりーの元へ行った。るーりーはあたしを優しく受け止めてくれた。そして、ギュッと抱きしめてくれた。

『これからは小学校の時みたいにずっと一緒だからね』

そう言ってくれたのは、嬉しかった……けど、その言葉が少しだけ引っかかっていたんだ。

今まで、色々な人に迷惑をかけてきたからこそ、大好きなるーりーには、心配させたらいけない。るーりーを悲しませるような行動は、絶対にしちゃダメだ。だからあたしは、るーりーを困らせるようなことはしないこと。そして、ずっと笑顔でいることを心がけていたのだ。それが、気がつけば本当の自分じゃないみたいになってたっけ。それは、るーりーだけじゃない、みんなに。

……けど、あたしは、この前の運動会でるーりーに断った時、凄くるーりーを困らせちゃったと思う。

だから尚更、今の私はあたしは笑わなきゃいけない、けど……もうるーりーと会うつもりはないから、別にいいよね……


「瑠璃ちゃん。あいなのこと、物凄く心配してたわよ」

「……」

あたしは、一日たりとも、るーりーを忘れたことなんてない。だから、るーりーには本当にたっくさん謝りたいことがある。でも、謝ったって……あたしは。

「……ママ。あたしってなんでこんな人間になったの」

微妙な笑顔を零しながら、あたしはそう言った。

「あたしも、普通になりたかったな」

黒いのか白いのか、よくわからない。でも、この気持ちは、本物だと思う。

「あいなは、あいなで良いんだよ」

「ダメだよ」

「どうしてそう思うの」

「どうしてでもっ」

あたしとなんて誰も関わらない方がいいの。あたしが居たら、ママとパパも困っちゃうし………先生だって困っちゃうの。あたしはペラペラと口を開いて素直な気持ちを零していた。そして……

「もう!嫌なの!」

あたしの心の叫びが思った以上に車の中で響いた。こんなの、あたしの、我儘じゃん。駄々をこねてる子供みたい。……恥ずかしくなってくる。

どうして。どうして、あたし……。あたし、思ったこと、言っちゃった。ママを、困らせた。あたしはママの方を見た。ママは、ハンドルを持って、いつも通りの、運転をしていた。あたしの知らない未知の世界へと、どんどん進んでいっている。ママは、黙っていた。気まづい空気が流れている中で、ママはとある場所に車を置いた。

「着いたよ」

只管に話すだけだと言っていたのに、ママは計画を立てていたようだ。

そこは緑のいっぱいなひっろーい場所だった。車から降りて、少し歩いた先には、あおみどり公園と書かれた看板が貼ってあった。風が吹くと、同時に草木がユラユラと元気よく揺れて、凄く気持がいい。だけど、心はまだ引っかかったままだった。

「ここね、よく遊びに来てたんだよー。凄く綺麗な所でしょ」

ママが明るい声で、あたしに言ったから、さっきの話をまるで忘れているみたいだった。ママは辺りの景色をスマホで撮り始めて楽しんでいる。あたしはそれを静かに見ていた。確かに、自然もいっぱいだから沢山の想像が膨らむかもけど……

あたしは、一体、どうなりたいんだろう。

一通り公園の中を回ったところで、木の下の茶色のベンチに座った。ママは、さっき撮った写真を静かに眺めていた。

……

車の中でたくさん気持ちを吐き出して、ママを困らせてしまったという罪悪感がずっと残っていた。だからあたしは、ママに謝った。ママはボソリとこう呟いた。

「謝る必要はないよ」

そして、スマホの電源ボタンを押して、ママがあたしの方を向いた。

「良かったよ」

「?」

ママの言っていることがよく分からなくて、首を傾げる。

「最近は、そういうの無いなって思ってたから」

「そういうのって?」

「ずっと、笑ってたからさ」

「困らせてたよ?」

「ううん。困った素振り、あんまりなかったよ」

……そう言ってママはあたしの手を急に握った。

「これがいい?」

ママは、あたしの顔を見て、確かめたかのように言う。何が何なのか、よく分からずにいたら、なら、こうだねと言って、あたしの体を包み込むように思い切り抱きしめたのだ。

「……!」

ビックリ、したと同時に、ママの、匂いが、した。暖かくて、安心できる、匂い。

「ママには、なんでも言っていいからね」

「……」

落ち着く声。あたしは、それに凄く弱い。ママにこんな風にされると、安心してなんでも言えちゃう。だから、あたしの目は、涙でいっぱいになっちゃうんだ。

「我儘も?」

「うん」

「………今までたくさん我儘言ったよ。学校お休みしたり、布団から中々出なかったり」

「でもそれは、我儘じゃなくて、あいなが選んだ道よ」

「……道?」

「うん。あいなが選んだ道を、見守るのが私の仕事だから」

「……この先も、ずっと引きこもるかもしれないよ?」

「それは困るなぁ。でも、あいなはいつか必ず羽ばたく時が来る。それまで待ってるから」

「待ってられる?」

「もっちろん!」

ママは、明るくそう言った。あたしが中々羽ばたけなかったら、ママは死ぬまであたしが飛ぶのを待ってるってことになるのに、それでも平気そう。

私はゆっくりと顔を上げた。涙でいっぱいのせいで、ママの顔が綺麗に見れないけど。ママはニコニコ笑っていた。

「やっぱりあいなは可愛いわね」

「泣いてるのに?」

「当たり前でしょ。どんなあいなも自慢の娘よ」

「……変なのっ」

泣いているのに、自然と笑っていた。暫くして、ママはあたしの身体から離れた。あたしは涙を手で拭って、再びママを見た。

「あいなのことを、待ってる人が居るよ」

「……」

「会うか会わないかは貴方が決めなさい。今日の夕方に、来てくれるみたい」

その言葉で、誰が来るのかが、直ぐに分かった。

「きっと、あの子も、あいなのことが大好きなのよ。だから」

貴方の気持ちを、知りたいと思う。ママの言葉が、グッと心に刺さった。

あたしは、るーりーに、ちゃんと話さなきゃいけない。その時が、今なのかもって、分かった気がした。


草木を眺めるだけで、気持ちが、楽になった気がした。

学校を休んでからは、一人で外へ出かけていたけれど、何処へ行っても、あたしの心は迷っていたように思う。だって、いつもなら楽しい筈のスーパーに並ぶガチャガチャも、回したいって思わなかったし、公園のブランコに乗りたいってならなかった。ただ、目に入ってきたのは、あたしと同じくらいの高校生達だった。テスト期間だったのか、お友達と楽しそうに話す子達を見て、自分もあぁなりたかったなって寂しくなった。

だから、いつもの世界じゃない、あたしの知らなかった新しい場所へ行くことも悪くないなって思った。ママが隣に居てくれるから、怖くなんてない。でも、いつかは一人で入っていかなきゃ行けないのかな。……そう考えると、怖いなぁ。

「あっ。あの雲はどう?」

ベンチに座りながら、ママが指さした。真っ白な大きな雲がモクモクと動いているように見えた。

「うん。すっごく美味しそう」


帰りの車の中で、あたしは、いおりんとの出来事を思い出した。……もう、いおりんとは顔を合わせることはできない。いおりんを傷つけてしまった以上は、あたしは学校へ行ったらダメだと思っている。

『いおりんは、逃げすぎだと思うよ』

あたしはいおりんにそう言った。……逃げすぎなのは、あたしだった。

あたしはこれまで、たくさんのことから逃げてきた。それをママは選択肢だと言ってくれた。学校の先生も、るーりーも、はなび先生も。みんな、分かってくれた。あたしの中では甘えすぎていると思っている。でも、自分だけじゃどうしようもできないことだったから、逃げた先も何もかも進められないのかもって感じた。だから、いおりんが、羨ましかった。いおりんは、虐めという心の傷が治れば前を向いていける。それに、今だって、かなり進み続けているように見えた。あたしは、違う。進めれていない。なんなら止まってる。いつまで小学生のドリルをやっているんだろう。いつになれば、理解が早くなるんだろう。いつになれば……クラスの輪に入れるのだろう。みんなみたいに、なれなくて、悔しくて、苦しくて、そんな気持ちをいおりんに全部、吐いていた。いおりんは、同じ空間にいるけど、あたしとは違うって、思ったから。いおりんは虐められていなかったら、きっと、みんなと同じ教室で勉強していた筈。

あたしも、いおりんには、酷いことを言われたけど、それは、あたしがいおりんに酷いことを言ってしまったからだ。それだけじゃなくて、あたしがいつもいおりんにしつこく話しかけに言ったから……グイグイって言っちゃうのは、あたしの悪い癖だ。

それでも最近は、はなび先生のサプライズに協力的じゃなかったのに、いおりんは、あたしのために、やってくれていた。それが凄く嬉しくて、舞い上がっちゃって……もっともっといおりんとやりたいって……

あれ。あたしはいおりんが好きだったの?よく、分からない。

けど、いおりんにも、いいところが、あった。

最近のあたしは、いおりんの悪い所ばかり見てたんだな。心の中がキュって苦しくなってくる。

いおりんに言われた言葉は、心にグサッてくるものばかりだった。けど、どれも正解なんだよ。

なんで分からないの?って言いたくなるのも分かるし、あたしが人の苦しみを分からない可哀想な人間なことに変わりはないよ。

だからいおりんには……会えない。


夕方。ピンポーンといつものインターホンが鳴った。玄関で待っていたあたしは、その音が鳴った瞬間に、ドアを思い切り開けた。目の前にはやっぱり、るーりーがいた。るーりーは、驚いた表情で、あたしを見ていた。だけど、直ぐに笑ってこう言った。

「久しぶり」

「う、うんっ」

あたしは、いつも通り、笑った。けど、いざ、目の前で話すとなると、久しぶりで、上手く笑えているのかは分からない。

「はい。これ」

おやすみ連絡と書かれてある紙と、何枚かの学校からの手紙をるーりーから受け取った。これを毎日、あたしのお家に持ってきてたんだなって思うと、色々な気持ちが込み上げてくる。

「るーりー。あたし、るーりーにね、お話したいことがあるの」

「何?」

……ちゃんと、話さなきゃ。

「えっと。……えっと」

上手く、言葉にできない。緊張してか、目も合わせられない。

「その……うーんと。るーりー。ごめんなさいっ。えっと……小学生の時から、色々、ごめんなさい。……うーんと。この前の運動会、一緒に出れなくて、ごめんね。……あと、学校お休みして……ご、ごめ……ん」

るーりーは焦らそうとせず、うんと小さく頷きながら待っていてくれた。

そして、最後に……

”るーりーは、どうして、あたしと一緒に、居てくれるの?”

……本当は、違うことが言いたかったのかもしれない。だけど、あたしの口からこう出てきたのだ。るーりーは、迷うことなく直ぐに応えてくれた。

「一緒に居たいからだよ」

あたしはるーりーの顔を見た。るーりーの瞳は真っ直ぐあたしの方を見ていた。

でも、その気持ちを簡単には受け止められない。

「あたし、これからも沢山迷惑かけちゃうよ」

「うん」

「あたしと、関わらない方が良かったって後悔しちゃう時が来るかもしれないよ」

「うん」

「それでも……あたしと一緒に、居てくれるの?」

「うん」

「本当に?」

「うん」

……なんで。

なんで、るーりーは。

……ハハ。

「あたしは、るーりーとぜんぜーん違うし、やりにくいよ。絶対に」

笑った、いっぱい、笑ってみた。だけど、るーりーは目付きを一切変えなかった。

「大丈夫だよ」

るーりーの目は、真剣だった。

「そうやって笑って誤魔化そうとしていても、私の思いは変わらない。私は、あいなをそんな目で見てないから」

……

眩しくて、明るいだけじゃない、一緒にいると本当に落ち着いていられる。るーりーはママとはまた違った安心感かある。

「あいなは、私にとって、大切な友達だから」

「……」

ともだち。

今まで色々な子に見捨てられて、呆れられてきた。なのに、るーりーは、るーりーだけは、ずっと、ずっと変わらずに、あたしのことを見ていてくれていた。それは……今も。

もし、本当に、るーりーがあたしの傍から居なくなっちゃったら。あたしは……また、ひとりぼっちになっちゃうかもしれない。……でも、このままずっとるーりーと居ると、迷惑、になる、かも。……嬉しいのに、その優しさがあたしにとっては苦しいよ。

あたしの目からは涙が出ていた。ポロポロって床に落ちて、涙の粒でるーりーの顔がよく見えない。今日は二回も泣いちゃった。涙の腺、緩いのかなぁ。

「……あいなだ」

るーりーは、そう呟いた。るーりーが、ポケットからハンカチを取り出して、頬の辺りを優しく撫でてくれた。同時にるーりーの目からも涙が出ていることがわかった。だから、あたしもるーりーの涙を拭くと、お互いに泣くって、なんだか変だね、ってるーりーがニコッと笑った。

「私の話も聞いてくれる?」

あたしはうんと頷いた。

「あいなが前に言ってくれたでしょ。るーりーの自然な所が好きだって。だから、あいなも自然でいいんだよ」

我慢しなくてもいい。辛かったら、泣いていいんだよ。苦しくなったら、ううん。苦しくなる前に、私の名前を、呼んでいいからね。

るーりーの一つ一つの言葉はとってもとっても暖かかった。

「あたし、ゆっくりだよ」

「うん」

「ノロノロだよ。本当に……あたし、変わらないかもしれないよ」

「いいよ。変わらなくても」

変わらなくても?

るーりーの言葉に、首を傾げた。

「あいなの好きに生きたらいい」

「みんなが、あたしのことを馬鹿にしてきても?」

「うん」

「みんなと、違うくても?」

「そうだよ」

……るーりーの言葉で、また、涙が溢れ出てきた。でも、それは、るーりーも同じみたい。悲しむことを必死に隠していたから、今度は涙が止まらなくなっちゃった。

……でもこれは、悲しい涙なんじゃない。あたしを、本当のあたし自身を、見つけてもらえたって言う涙だった。


その後、あたしは、学校を休んでいた時のことや、今日、ママと一緒に車でドライブへ行った話をした。

……そして。あたしから、話をもちかけた。

「ねぇ。るーりー」

「ん?」

「あたし、もう、学校には行けないと思う。だから……」

「それってイオリとのことが原因?」

るーりーは、やっぱり気がついていたみたいだ。あたしは、小さく頷く。身体が一気に重たくなった。そして、イオリとの出来事も、あたしの気持ちも全て話した。るーりーはなるほどと頷いた。

「向こうも同じ気持ちだと思うよ」

「え?」

いおりんも……?

「丁度今日、いおりんのことで色々あってね……でも、はなび先生がサポートしていたから多分大丈夫だと思うけど」

「……」

「でも、あいなから話に行ったら、きっとまた、話してくれるかもしれないね。イオリは一人で戦っていたことが多かったから」

そっか、そうだったんだ……虐められていた時も、ずっと、一人で苦しい思いをしていたのかな。本人の中でたくさん葛藤があったのかな。

……そういえば、あたしが小学校の時にされていたことも、虐め、だったのかな。その後も色々大変だったから完全に忘れちゃってたっけ。でも……いおりんの中では、忘れられずに、今でもずっと、残ってるんだろうな。

あたしは、分かってあげられないけれど。

それでも、いおりんのことを知りたいって思うのは、どうしてだろう。

重たい口を開くのには、時間がかかった。だけど、これがあたしの気持ちだった。

「……あたし、学校へ行きたい。それで、いおりんに謝りたい。……けど、いおりん、あたしと二人でお話するのは疲れちゃうかな」

「なら、私が間に入るよ」

「るーりー。ありがとう。許してもらえるかな」

「うん。大丈夫。あいなが、あいなの気持ちを、真っ直ぐに伝えられたら、きっと分かってくれるよ」

……あたしが、あたしの言葉を、真っ直ぐに……凄く難しいことだなぁって、思った。でも、あたしの隣には、頼れる存在がいる。

……なら。

「るーりー。それの、お手伝い、して、くれる?」

「もちろん」

るーりーは、明るく笑った。るーりーの手からさっきよりも強い温もりを感じた気がした。

「今日はありがとう。またね」

るーりーとバイバイして、お家の中へ入ろうとした時、あいなーという掛け声であたしはまたるーりーの方を向いた。

「どうしたの?」

「いや、まだ不安そうな顔してたから」

……不安。るーりーには、わかるんだなぁって、思った。

るーりーと話して、安心したけれど、本当にこれでいいのかって、正直心の中で沢山モヤモヤってして……。

「ちょっとおいで」

「?」

るーりーの方へ駆け寄ると、るーりーがあるものをあたしの首に掛けた。

そのあるものというのは……とっても綺麗なペンダントだった。

「これ、あげるよ」

「わーぁ」

思わず、ときめいてしまった。青色みたいな、海みたいな色がドーンってなっていて、その周りをキラキラのお星様みたいなのがかかっていて、凄く綺麗だった。

「こんなにいいもの、貰ってもいいの?」

「いいよ。このペンダントが、あいなを守ってくれるから」

「わーっ」

嬉しくて嬉しくて、声が自然と弾んだ

「なんかね、このペンダントが言ってる気がしたの。この子にあげてって」

るーりーの言葉に、えっとなって、るーりーの顔を見た。るーりーがこんなことを言い出すなんて。その言葉で、ついからかいたくなっちゃった。

「るーりーも遂に自分の世界を……」

「違うからー。あいなの方が想像力豊かでしょ。私は……その」

るーりーの頬の辺りが、すこーし赤くなる。なんだか可愛い。

「ありがとう、るーりー」

「うん!」

「……見てみたいなーっ。るーりーの世界」

「だからーそんな世界ないよー」

「あるくせにー」

「ないってばー」

るーりーの言葉が面白くって、自然と、笑顔になった。あたしに続いて、るーりーも笑った。

そして、綺麗なペンダントを眺めた。私は心で挨拶をした。

これからよろしくね。

ねぇ。あたしと一緒に、新たなスタートを、切ってもらえないかな。

あたし、これから、変わっていきたいの。

キラキラなペンダントみたいに、負けないように、頑張るね。

あたしらしさを忘れずに……

それって、どんなに小さなことでも、いいよね。

……本当の本当の本当の本当の自分を大切にしていきたいな。

「そう言えば、今日の夕日、すごく綺麗じゃない?」

るーりーはそう言って、空を見上げた。あたしもるーりーに続けて首を上に上げた。

「……本当だ。綺麗」

夕日があたし達のことを見守ってくれているように感じた。

それから少しの間、るーりーと静かに夕日を眺めていた。

今日は、ママからも、るーりーからも、夕日からも掛けているペンダントからも……たくさんたくさんパワーを貰った日になった。

まだ、迷うことも怖いこともあるけれど……あたしの道は、これからゆっくりと開けていれたらいいな。

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