4.女神さま!!
翌朝。
朝練の最中にリリアーナさんの部屋の窓を見てみてもカーテンはぴっちり閉まっていてまだ起きていないご様子。
朝から女性の部屋へ突撃するのは良くないだろうし、マリーに様子を見てきてもらおうかな〜
リリアーナさんが居るだけで俺の人生が5万倍くらい楽しい!まじで!!
「ユリウスさま、おはようございます」
鍛錬のあと軽く汗を流して、朝ごはんを食べようかと思っていたらリリアーナさんが来てくれて、超嬉しい。
しかも、昨日よりちょっと元気になってるみたいだし、朝日に照らされてキラキラ輝いてる!
女神さまみたい!
「リリアーナさん、おはようございます。
よく眠れましたか?」
「はい、おかげさまで。昨日は大変ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありませんでした。
正直なところ、あまり覚えていないのですが……」
「いえいえ! 疲れてるのに無理に誘った俺が悪かったので!
今から朝ごはんですか?」
「はい。ご一緒出来ないかな、と思って来てみたのですが、ご迷惑ですか?」
超絶美人な女神さまが、ちょっと小首を傾げて俺を食事に誘ってくれるんだぜ!?
「もちろん、一緒に食べたいです! というか誘いに行きたいなーって思ってました!」
「それはとても嬉しいですわ」
一緒に朝ごはん食べるだけで、ひまわりみたいな満面の笑みを向けてもらえるなんて!
めちゃくちゃしあわせだ!!
我が家はそれぞれ忙しいので朝と昼は基本バラバラに食べる。
昨日の夜と同じようにリリアーナさんのお部屋にお邪魔することになった。
「美味しそうですわね!」
今日のメニューはパンとジャム、ゆで卵、ハムだ。
王宮での豪華な食事に慣れているだろうに、田舎のシンプルな朝ごはんにも目を輝かせてくれる素直さも可愛いんだよなぁ。
もはや彼女のことなら何だって可愛いんだけど。
二人で朝食を食べながら、彼女がぽつりと呟いた。
「ユリウスさまは、私を軽蔑なさいませんのね」
「えっ? する訳ないですよ? 何でまたそんなこと言うんですか?」
「いえ、私はとっても嬉しいんですよ。
色々ありましたから、面白がって騒いでいる人たちもいましたし」
「ここは田舎ですからねぇ。王都で何があったのか、本当のことは知らないんですよ」
「そんなもの、王都の貴族たちだって、本当のことなど知りはしませんわ」
暗い表情で、振る舞いが美しく丁寧な彼女からは意外なくらい荒く吐き捨てた。
「何も知らずに好き勝手に騒ぐ方々はたくさんいらっしゃいますのよ?
でも、ユリウスさまはそうせずに居てくださったから」
「うーん、俺はあんまり貴族の難しいこととか得意じゃないんですよね。
そう言うことは兄上二人にぜーんぶお任せして生きてきたので。
だけど、リリアーナさんのことは素敵だなあと思うし、昨日は本当に疲れてるみたいだったから、大丈夫かな、って思って」
「私、そうして真っ直ぐにものを見られる方と出会ったことなど無かったのです」
「真っ直ぐかなぁ。いや、そうでもないですよ?
だって、女王陛下とか王太子殿下のことはまあまあ軽蔑してますし」
「あら、そんなことおっしゃって大丈夫ですか?
不敬罪ですよ?」
言葉上ではそう言いつつも、彼女はとっても嬉しそう。
「まあ、この場でくらいは不敬でもいいでしょう?」
ちょっと冗談めかして言うと、彼女はふふふ、と楽しげに笑ってくれた。
「あの、ユリウスさま?」
食事が終わって、そろそろ仕事へ行こうかという時間。
立ち上がったところを呼び止められた。
「はい、どうしました?」
頭の回転の早い彼女は、淀みなくはっきりとものを言う。
それはこの短い時間の会話でも感じていたのに、なんだか妙に間が空いた。
まるで、何かを恐れるように。
「……あの、ユーリさま、と……お呼びしても、よろしいでしょうか?」
ためらいがちに、俺の様子を窺いながら。
頬だけじゃなくて耳の端まで真っ赤に染めて、そう聞いてくれたんだ。
「はいっ! もちろんですっ!」
もはや考える前に答えを叫んでいた。
騎士団仕込みの返事は室内には大きかったかもしれないけど、それ以上に言いたいことが。
「あの、俺もリリィさんって呼んでいいですかっ!?」
「ええ、もちろん。嬉しいですわ。ユーリさま」
にっこり微笑んでくれたリリィさんはマジで女神さまだと思うんだ!!!