高校生ぐらいの時が一番大人だった気がする。
小学生のころに、2泊3日のスノーボードスクールに参加したことがあった。詳しく覚えていないが、低学年ごろだったと思う。私は参加者の中で、一番小さかったことを覚えている。スノーボードスクールの参加者の年齢層のメインは中学生から高校生あたりであった。小さいころの私は怖いもの知らずだったので、見知らぬお兄さん、お姉さんにどんどん話しかけた。中には、いやな顔をするお兄さんもいた気がするが、小学生の私からしたら大人なお兄さん、お姉さんたちはすごく優しく、かっこよく見えた。
ピラティスの体験教室に行ってみた。すごく、よかった。仕事をしていないと、人間は思った以上に動かないことが分かったので、運動する場所を探していた。しかし、ランニングなんかは続かない気がした。やはり、見てもらう人がいないと私はすぐにサボってしまう。 ジムやフィットネスに行くっていう方法もあったのだが、私にはあってない気がした。あの欧米のなんでも科学と効率を最優先させる方式が、体に合っていないと思った。
別に、ジムに行っている人を馬鹿にしているとかではなく、合う合わないの話である。体験教室に行った先生の話はとても面白かった。アーユルヴェーダを個人的に研究している人らしく、人間の体の動きとして自然な流れに逆らわないことに重きを置いて、メニューを作っているらしい。私はその先生の人柄や考え方にずっぽりはまり、体験が終わった時にそのまま入室の契約をした。
月謝もそれほど高くなく、たくわえもまだまだ余裕があったので、三カ月をめどに通ってみることにする。感謝するのは嫌なのだが、前の職場は給料だけは、そこそこであったし、使う暇は全くなかったので、節約すれば、まだまだ無職ライフを味わえる。
ピラティスの帰りに公園に立ち寄ってみる。そこには少年とジャッキーがいた。
「やぁ少年。ひまかい?」
「どうも。」
「BOWBOW!」
吠えられてしまった。ついに、ジャッキーに吠えられてしまった。唸るまではあったが、吠えられることはなかったのに。私がチェンを名乗ったあたりから、ジャッキーにものすごく嫌われている気がする。
というか、吠え方が欧米風な気がするな。
「どうしたんですか?」
「いや、見かけたから、声をかけただけだが。」
「そうですか。
お姉さんって趣味とかありますか?」
「おや?今更ながら、踏み込んだ質問だねぇ。」
「趣味は踏み込んだ話なんですか?」
「そりゃ、踏み込んだ話さ。それを言ってしまえば、私たちは知り合いから、そこそこの友達に格上げじゃないか。」
「公園で、見かけて、声をかけるのは、そこそこの友達じゃないんですか?」
「うん?
確かに。それもそうだ。」
「それで、趣味とかないんですか?」
「少年は、私に興味深々だなぁ」
「まぁ、それなりには」
「おお、正直だな。しかし、私に趣味といえるほどのものはあったかな?
バスケは部活でやってただけだし、小さいころからスノボーもやっていたが、最近はいけてないしなぁ。あれ?私楽しいことあんまり知らないな。」
「さみしい人ですね。」
「まて。少年。今出すから少し待ってくれ。
あーーー・・・・
あれだ。呂布カルマのパンチライン集づくり。」
「あれチェンさんが作ってたですか。」
「いや、作ってパソコンにおいてあるだけだ。少年は何か趣味はあるのかい?」
「岡田斗司夫の切り抜き動画づくりですかね。」
「ほう、儲かりそうな趣味だね。」
「いや、切り抜いてスマホに入ったままですね。」
「お互い変わった趣味持ってて、誇らしいねぇ。」
「こういうときって、読書とか音楽とかいうもんじゃないですか?」
「そういうのはあれだ。生活の一部だから、趣味といえるほどのものじゃないよ。」
「チェンさんが持っているピラティスのパンフレットも生活の一部ですか?」
「これはこれから生活の一部にしていくのだよ。少年。」
「太ったんですか?」
「違う。」
「多少、肉がついてる方が健康的でいいと思いますよ。」
「君の意見かい?」
「一般論です。」
「気分を害した。帰る。」
私は翻って帰る。やられた。やり返されてしまった。少年に引っ張られて、高校生時代に戻ったみたいになっている。少年のしてやったりの顔が、すごくいい感じに、私のおなかのあたりをとらえてしまった。
公園を出る間際に、少年の方をちらりと見るとジャッキーがにしゃにしゃ笑ってるような気がした。今日は帰ったら、朝倉海さんの動画を見ながら腹筋して、さっさと寝よう。今日はピラティスで体を動かしたので、ねむい。眠いから早く布団に入ろう。
私は足早に家に帰った。
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