表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもりの彼と無職の私  作者: 梅丘泰芽
好きなものを好きという。
7/21

高校生ぐらいの時が一番大人だった気がする。

 小学生のころに、2泊3日のスノーボードスクールに参加したことがあった。詳しく覚えていないが、低学年ごろだったと思う。私は参加者の中で、一番小さかったことを覚えている。スノーボードスクールの参加者の年齢層のメインは中学生から高校生あたりであった。小さいころの私は怖いもの知らずだったので、見知らぬお兄さん、お姉さんにどんどん話しかけた。中には、いやな顔をするお兄さんもいた気がするが、小学生の私からしたら大人なお兄さん、お姉さんたちはすごく優しく、かっこよく見えた。




 ピラティスの体験教室に行ってみた。すごく、よかった。仕事をしていないと、人間は思った以上に動かないことが分かったので、運動する場所を探していた。しかし、ランニングなんかは続かない気がした。やはり、見てもらう人がいないと私はすぐにサボってしまう。  ジムやフィットネスに行くっていう方法もあったのだが、私にはあってない気がした。あの欧米のなんでも科学と効率を最優先させる方式が、体に合っていないと思った。

別に、ジムに行っている人を馬鹿にしているとかではなく、合う合わないの話である。体験教室に行った先生の話はとても面白かった。アーユルヴェーダを個人的に研究している人らしく、人間の体の動きとして自然な流れに逆らわないことに重きを置いて、メニューを作っているらしい。私はその先生の人柄や考え方にずっぽりはまり、体験が終わった時にそのまま入室の契約をした。

月謝もそれほど高くなく、たくわえもまだまだ余裕があったので、三カ月をめどに通ってみることにする。感謝するのは嫌なのだが、前の職場は給料だけは、そこそこであったし、使う暇は全くなかったので、節約すれば、まだまだ無職ライフを味わえる。


ピラティスの帰りに公園に立ち寄ってみる。そこには少年とジャッキーがいた。

「やぁ少年。ひまかい?」

「どうも。」

「BOWBOW!」

 吠えられてしまった。ついに、ジャッキーに吠えられてしまった。唸るまではあったが、吠えられることはなかったのに。私がチェンを名乗ったあたりから、ジャッキーにものすごく嫌われている気がする。

 というか、吠え方が欧米風な気がするな。

「どうしたんですか?」

「いや、見かけたから、声をかけただけだが。」

「そうですか。

 お姉さんって趣味とかありますか?」

「おや?今更ながら、踏み込んだ質問だねぇ。」

「趣味は踏み込んだ話なんですか?」

「そりゃ、踏み込んだ話さ。それを言ってしまえば、私たちは知り合いから、そこそこの友達に格上げじゃないか。」

「公園で、見かけて、声をかけるのは、そこそこの友達じゃないんですか?」

「うん?

 確かに。それもそうだ。」

「それで、趣味とかないんですか?」

「少年は、私に興味深々だなぁ」

「まぁ、それなりには」

「おお、正直だな。しかし、私に趣味といえるほどのものはあったかな?

 バスケは部活でやってただけだし、小さいころからスノボーもやっていたが、最近はいけてないしなぁ。あれ?私楽しいことあんまり知らないな。」

「さみしい人ですね。」

「まて。少年。今出すから少し待ってくれ。

 あーーー・・・・

 あれだ。呂布カルマのパンチライン集づくり。」

「あれチェンさんが作ってたですか。」

「いや、作ってパソコンにおいてあるだけだ。少年は何か趣味はあるのかい?」

「岡田斗司夫の切り抜き動画づくりですかね。」

「ほう、儲かりそうな趣味だね。」

「いや、切り抜いてスマホに入ったままですね。」

「お互い変わった趣味持ってて、誇らしいねぇ。」

「こういうときって、読書とか音楽とかいうもんじゃないですか?」

「そういうのはあれだ。生活の一部だから、趣味といえるほどのものじゃないよ。」

「チェンさんが持っているピラティスのパンフレットも生活の一部ですか?」


「これはこれから生活の一部にしていくのだよ。少年。」

「太ったんですか?」


「違う。」


「多少、肉がついてる方が健康的でいいと思いますよ。」

「君の意見かい?」

「一般論です。」


「気分を害した。帰る。」


 私は翻って帰る。やられた。やり返されてしまった。少年に引っ張られて、高校生時代に戻ったみたいになっている。少年のしてやったりの顔が、すごくいい感じに、私のおなかのあたりをとらえてしまった。


公園を出る間際に、少年の方をちらりと見るとジャッキーがにしゃにしゃ笑ってるような気がした。今日は帰ったら、朝倉海さんの動画を見ながら腹筋して、さっさと寝よう。今日はピラティスで体を動かしたので、ねむい。眠いから早く布団に入ろう。

私は足早に家に帰った。


読んでいただき、ありがとうございます。

感想などいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ