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「喧嘩を売ってるんですか?」
フロワはジト目で俺を見てくる。やっぱりまずいことを聞いてしまった。
「い、いえ。そういうわけではなく単純に気になっただけです。それに今後いい店を探す参考にしようと思いまして・・・」
苦し紛れに出てきた言葉。おそらくフロワも気付いているだろう。だが、それ以上は追及してこなかった。
「はあ。まあいいです。・・・休みの日は時々リベがお出かけに誘ってくれるんです。いつも周るところはリベに任せっきりでしたからね。だから私も色々調べてるんです。これで満足ですか?」
驚きだった。何かあるとは思っていたが、そこまで仲がいいとは。それにしてもフロワからは想像できない店のチョイスだった。
「そうだったんですね。」
「まだ何か言いたい感じですね。・・・言っときますが、これはリベが喜んでくれそうなところを選んだだけですからね。」
俺の心を読まれてしまったらしい。
「いや、別に俺は何も思ってないですよ。」
「別にいいですよ。私はリベみたいに女性らしいお店とか似合わないですよね。自分でもわかっていますよ。」
俺から目線を外し、遠くを見つめている。何を言っているんだと思ってしまった。想像できなかったのは仕事一筋の人だと思っていたからだ。
「そんなことないです。フロワさんも女性らしいですよ。凛々しくてかっこよくて。それでいて可愛さもある。あーうまく言えないですけど、その大人の女性って感じです。だからフロワさんが行ってもおかしくないですよ。」
そう言うとフロワはプルプル震えていた。あれ?まずいこと言っちゃったかな。
「ビス、あなた誰にでもそんなこと言ってないでしょうね。」
何か疑われているようだ。俺はじっとフロワの目を見て真剣さを訴える。
「言いませんよ。可愛いと思ってない人に可愛いだなんて。」
フロワは顔を手で隠した。それに震えが大きくなったように感じる。これはまずいか。俺の気持ちが伝わらなかったのだろうかと思いもう一回言おうとする。だが、寸でのところで止められた。
「わ、わかりました。わかりましたからもうやめてください。」
「そうですか。伝ってよかったです。」
「ええ、あなたが天然の女たらしだと言うことがわかりました。・・・シェーン様も大変ですね。」
これは伝わったと思っていいのだろうか。それになぜシェーンの名前が出てくるのか。疑問に思っているとフロワが口を開いた。
「すみません。そろそろ戻らないといけないので失礼しますね。」
疑問を問い詰めたかったが、時間がないなら仕方がない。
「わかりました。フロワさんありがとうございます。参考になりました。後は自分で考えます。」
「お役に立てたみたいで良かったです。それにあなたどこを選ぼうかシェーン様は喜んでくれると思いますよ。それでは。」
まあ、怒っている様子もないし、これでよかったことにしよう。それにしても、シェーンと行くとフロワに言っただろうか。問おうとしたがすでにフロワの姿は見えなくなっていた。




