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ヒレイスト物語  作者: 瑛
第2部 第3章 ”変化”と
93/176

25-3

手を翳すと臓器がいくつか破裂していた。僕は無我夢中で治療した。なんとか一命は取りとめた。ただ、数時間シェーンは動けないでいたのだ。僕は一人ではどうしようもないと思い誰かを呼びに行こうとしてが、シェーンに止められてしまった。



「や、やめて。誰も呼ばないで。誰にも話さないって約束したでしょ。」



「で、でも・・・」



シェーンは青白い顔をこちらに向けてくる。今にも気を失いそうな感じではあったが、顔には生気で溢れていた。



「わ、わかったから。大人しくしてて。」



僕の腕を握る力は徐々に落ちていく。一瞬嫌な想像をしてしまった。ただ、それは杞憂であった。俺の言葉を聞いて安心したのか寝息を立てて寝ていた。僕は全身の力が抜けその場にへたり込んだ。



「はあ、そんな安心しきった表情しちゃって。こっちの気も知らないで。こんなんじゃ、心臓がいくつあっても足りないよ。」




その後もシェーンの実験は続いた。徐々にではあるが、血を吐くことはなくなっていった。何かコツでも掴んだのかそれは俺にはわからない。それでも僕は気が気ではなかった。いつまた最初の頃と同じことが起こるのではないかと。


だから僕は何度も言ってやった。”もうやめよう”と。それでも、シェーンは諦めずに何度も行った。ある時、僕が何度もいうものだから嫌気が差したのか、それとももう一人で大丈夫と判断したのか、僕にも内緒でやろうとしていたのだ。その時何だかコソコソしていて怪しかったから後を追ったら、いつもの場所に着いた。



「何やってるの?」



「ビ、ビス⁉あなたこそ何でここにいるのよ。」



「そんなのどうでもいいから、答えてよ。」



いつもはシェーンに怒りが出てこないが、この時ばかりは体中の血液が沸騰しているのではないかと思うぐらい熱が放出していた。それぐらい怒りを感じていたのだ。



「何って。いつものことよ。」



シェーンはそう言うだけだった。



「なんで僕を置いてったの?」



「別に。ただの気まぐれよ。今日は一人でしたい気分だったの。深い意味はないわ。」



シェーンの意志は固いようでそれ以上は何も言わない雰囲気であった。僕はそこで悟った。この件に関しては何を言っても聞いてくれないと。ただ、僕にも譲れないものはあった。





「わかりました。もう何も言いません。ただ、一人でするのはやめてください。それと一回試すたびに異常がないか確認させてください。・・・お願いします。」





深々と頭を下げ、その時できる精一杯の敬語でそうお願いした。



「わ、わかったわよ。頭をあげて。」



その時俺はどんな顔をしていたのか思い出せない。ただ、これだけは思い出せる。俺が顔をあげた時のシェーンの顔。目は伏し目がちで視線は合わず、薄っすら開いた口から覗かせている歯はがっちりと閉じていた。


その後何を思ったのかシェーンは俺を抱きしめた。それは力強く、骨が折れてしまうのではないかと思った。それでも俺は何も言えず、顔すら見られなかった。


しばらく沈黙が続いたあと、シェーンは俺から離れていった。そして何事もなかったかのように話しかけてきた。”ほら、何やってるの。早くやるわよ”と。





その時以来、シェーンがこっそりやろうとはしなかった。それにその時からだろう。敬語を使うようになったのは。

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