3-1 始まり
扉のところに一人の長髪の少女が立っていた。さっきの行動が嘘ではないかと思うほど整った容姿をしている。首がもとに戻らない。
「おう、シェーンか。どうかしたのか。」
何か違和感がする。こんな声を発する人がこの場にいただろうか。首を元に戻すと今までの威厳がなかったかのようにデレッとしている顔がある。正直開いた口が塞がらない。ただ、その声の主には目もくれず、こちらに向かってくる。
「ごきげんよう。ディグニ。プロウバの森に行ってきたのでしょう。私の部屋でお話きかせてくれないかしら。」
どうやら、ディグニ目当てだったらしい。ディグニは青白い顔をして困惑している。
「シェーン様。申し訳ありません。まだ、王様との要件が終わってませんので・・・また今度お時間のある時に。」
「あら、そうなの。でもさっき「終わりだ。とおっしゃるお父様の声が聞こえたからてっきり終わったものだと。邪魔をしてしまったかしら。」
ドアの前で終わるのを待っていたのだろう。最初のイメージは間違いではなかった。
「んっ。んっ。」と王様が咳払いをする。
「あっ。お父様、邪魔をしてしまって申し訳ありません。すぐ出ていきますね。」
心がこもっていない気がする。悪いことをしたなんで微塵も思っていないようである。
「いや、話は一区切りしていたから大丈夫だ。ただ、ディグニとはまだ話がある。我慢してくれ。」
甘い。娘に甘すぎるのではないか。さっきの僕への対応と違いすぎやしないか。ディグニの方を見ると、苦笑いをしている。
「おう、そうだ。シェーンよ。ビスに城を案内してくれないか。年もそれほど離れていないだろうし、話やすかろう。」
「ビス?」とシェーンは辺りを見渡して僕を見つけジッと見てくる。ディグニの隣にいたのに僕には気づいていなかったらしい。シェーンは不満そうな顔をしながら、「畏まりましたわ。お父様。」と答える。
「ははは・・・。ペルフェットよ。二人を頼むぞ。」
いつの間にかシェーンの隣にセミロングで耳が尖っている女性が立っていた。
見た目は清楚だが、先ほどのことがある。騙されないぞと心の中で決意する。
「はい。王様。」
声も仕草もおっとりした、物静かそうな感じであった。さっきした決意が揺らぐ。
ただ、ペルフェットの眼を見た時恐怖じみたものを感じた。光を失いかけている眼に。
今にでも真っ黒に染まってしまいそうだった。