21-2
それは俺にましてやモルテに向けられたものではなかった。扉が開く音がする。その言葉は隣室で待っていた人に向けられた言葉だったのだ。
「だから言ったでしょう。あなたは負けると。フロワあなたの敗因は部下と深く関わらなかったことそして、その優しさです。」
隣室にいたのは、ルトさんだった。それにしても、いつもルトさんの言葉はきついな。
「はははっ。出る言葉もないです。」
「それにいくらでも聞き出す手はあったでしょうに。それを真っ向からぶつかって。あなたは”手加減しない”と言って思いっきり手加減しているじゃないですか。絶対にやりたいのであれば、なりふり構ってはいられませんよ。」
ルトさんからフロワに説教じみた言葉が投げかけられる。
「そう、ですね。私の気持ちが足りなかったかもしれません。」
「これを画策したのはルトさんですか?」
間髪入れずに答えが返ってくる。
「ち、違いますよ。お願いしたのは私です。チャンスが欲しいと。」
答えたのはフロワだった。こんなに慌てているフロワは初めて見た。というよりこっちが素なのだろうかと思ってしまう。
「ビスが聞いたことを王様から聞いたのは本当です。そして立場を弁えずお願いしたのです。ビスが私にそのことを話したら、私がビスと一緒に行くことを許して欲しいと。そして今に至るのです。・・・結果ダメでしたが。モルテもごめんなさいね。」
「いえ、僕は・・・」
モルテが何か言おうとしたところ、腕を掴んで止める。それ以上言ってはいけないと思ったからだ。言ってしまえばフロワに申し訳ないし、何よりその言葉をルトさんが見逃すわけがない。連れて行くのを止められてしまうだろう。モルテはそれを読み取ってくれたのかわからないが、寸でのところで口を閉ざした。
「それでは、用も終わったようなので俺たちは王様のところに向かおうと思いますが宜しいですか?」
「ああ、構わないですよ。引き留めてすみませんでした。・・・ただ、これだけ言わせてくれ。あのバカのこと頼みました。」
「ええ、必ず。ルトさん、王様は?」
「玉座であなたたちを待っていますよ。」
フロワは下を向いていて表情を読み取れないが、おそらく力の抜けた表情をしていただろう。それを尻目に俺たちは部屋の外に出た。すると、フロワとルトさんの会話が聞こえてきて足を止めてしまった。ダメな行為だとわかっていても。
「いつになっても、大切な人の危機に何もできないもどかしさは慣れないですよ。」
「それに慣れる人などどこにもいません。それを何十年もやってきたのです。信じなさい。・・・私はそれで一番苦しんでいる人を近くで見てきました。少しなら役に立てるかもしれませんよ。」
「・・・じゃあお言葉に甘えさせていただきます。」
「ええ。でも今回だけですよ。」




