17-2
「ごめん。お待たせ。」
俺はリベが階段を降りてくる。やっと来てくれた。危うく声をあげてしまうところだった。それに体の力が抜けてしまう所だったのを必死にこらえる。この迫力に負けてしまえばその空気に飲み込まれてしまうと思ったのだ。それに今は柔らかい表情だが、リベもハウのようになるかもしれないので、気を引き締める。リベが席についたのを見計らって話を始めた。
「ええ、時間を割いていただきありがとうございます。」
「何よ、そんなに改まっちゃって。こっちまで緊張するじゃない。」
思った以上に緊張していたようだ。いつもどんな風に話していたか一瞬忘れてしまった。
「んっんっ。二人にお願いがあります。モルテをしばらくの間預けていただけませんか?」
その後、ディグニのところは隠して、概要を話す。危険性は十分に伝わるように話したつもりだ。そのところはちゃんと話さなくてはいけないと思う。
全部話終わって、リベの方を見ると表情は変わっていなかった。
「いいんじゃない。私は反対しないわよ。ただ、モルテが嫌だって言ったら別だけどね。」
俺の予想は大きく外れた。リベはあっさり了承してくれる。拍子抜けしてしまい逆に質問してしまう。
「本当にいいんですね?危険な旅になることはさっきお話した通りですよ?」
「ビスが連れて行きたいっていったのに、何でそう動揺しているのよ。もしかして私が反対するとでも思った?」
何も言えなかった。その通りだったから。
それをリベは察したらしい。
「はあ、やっぱりね。私ってそんな頑固者に見える?」
今度は笑うしかなかった。悉くあてられる。
「あはははっ。」
「はあ、まあいいわ。それにモルテが危ない目にあったらビスが守ってくれるんでしょ。」
それは自信を持って答えられる。謎の自信があった。
「ええ、それはもう。それにモルテは俺が守らなくたって自分でどうにか出来ますよ。」
リベの表情が少し柔らかくなった気がする。
「嬉しいこと言うわね。今のビスになら任せられるわ。」
リベは隣を一瞥して続ける。
「それに、今のモルテには少しここを離れさせた方がいいと思うの。だから私は賛成よ。まあ、大賛成とまでは言えないけどね。」
よかった。一つの壁はあっさり乗り越えることができた。ただ、次の壁は頂上が見えない。予想外だった。逆だと思っていたからな。さっきから直視できないのだ。襲る襲るハウに視線をやるとワナワナと身体を震わせコップを割らんばかりに手に力が入っている。そして顔は力が入りあちこちに皺ができていた。酒で赤くなったのと相まって鬼のような形相をしている。
魔王はハウの方だった。




