16-3
「それにしても、私がいけないとなると、誰を連れて行くの?」
不思議そうに俺を見つめてくる。
「モルテを連れて行こうと思っています。」
「モルテって最近あなたとバディを組み始めたあの子?」
「ええ、そうです。」
「大丈夫なの?あの子あなたより年下でしょ?それに親はなんて言っているの?」
心配そうに聞いてくる。シェーンが言うかとちょっと思ってしまった。あの時のシェーンよりも今のモルテの方が年上だ。
「シェーン様が言いますか。まあ、大丈夫ですよ。腕も立ちますし、それに冷静な判断もできます。たまにそれに助けられるところもありますので。」
モルテは年不相応の落ち着きがある。それに何度助けられたことか。
一緒に旅をするならあいつしかいないとそう思えた。
「まあ、親の了承はまだですけど。それが最難関なんですよね。モルテ自身は二つ返事で了承すると思うんですが。」
「それは大変そうね。」
「ええそうなんですよ。それに今モルテは親と絶賛喧嘩中でして離した方が何か見えてくるものがあるんじゃないかと思いましてね。いやー。本当に大変ですよ。他人の親子のことなのにこっちが気を使わなくちゃいけないんですから。何かアドバイスでもないですか?」
俺は今しかないと思い、思いの丈をぶつける。ストレート、剛速球で。
しかしシェーンはそれすら気にする素振りをする。
「うーん。私にはわからないわ。他をあたってちょうだい。」
でしょうね。そんなこと分かり切ったことだ。それよりも、少しでも気にして欲しくて言ったのに全然ダメージを受けていない。手強すぎるよ。・・
「そうですか。それなら大丈夫です。こっちでどうにかします。」
諦めるしかない。残念だけど。何か色々なものが纏わりついた腰をあげた。
「じゃあ、そろそろ説得に向かわないといけないので、失礼しますね。」
「ええ、応援しているわ。まあ、頑張りなさい。」
はあ、他人事だと思っているのだろう。まあ、最初から覚悟して決めていたことだ。言われなくても頑張るしかない。シェーンに背を向け扉に向かっていく途中、シェーンが何かブツブツ呟いているのを感じた。そしてシェーンの部屋をあとにした。
部屋を出ると、何人か使用人がいた。まずい。用心すべきだった。明日には変な噂が城内中に流れていることは間違いないだろう。はあ。最近こんなことばかりだ。ようやく治まってきていたところだったのに。気休めにしかならないと思うが話駆けてみる。不安材料は少しでも潰しておかなければ。
「おはよう。シェーン様に荷物を運んでくれと頼まれてね。今運び終わったところなんだ。」
「おはようございます。ビス様。そうなんですね。お疲れ様です。」
使用人が会釈をしてそそくさと去っていく。・・・ダメだった。表情は信じている風を装っていたが、あの反応絶対に信じていない。それに背中を向けていても、わかる。使用人たちが内緒話をしながら歩いていく。それも、とても楽しそうに。明日から気を引き締めて城にこなければならない。はあ、王様に事の次第を報告する時覚悟しなければならないだろう。
ああ、そうだ。フロワに会わないように気をつけなければ。言っても言わなくてもうるさいのであれば言わないに限る。もうこれ以上面倒ごとは抱え込みたくない。




