16-2
朝起きると、カーテンから光が漏れている。それに違うものも漏れていた。
そういえば、昨日疲れて風呂に入らなかったんだ。俺は急いでシャワーに向かう。
入らないで言ったら、シェーンにどんな小言を言われるか。それに王様がいたらもっとまずい。
食堂に着くとシェーンが食べずに待っていた。王様はいなかった。安堵と申し訳なさでいっぱいになる。情報集めに奔走しているのだろう。
「やっと来た。早く食べるわよ。」
「先に食べていてくれてよろしかったのに。」
「そうもいかないわよ。ほら座って。・・・それと食べ終わったら私の部屋に来て。」
俺何かしてしまったかな。そう思ってしまうほど珍しいことだった。というか誰も部屋に入れないようにしているらしい。使用人たちがぼやいていた。
「わかりました。」
食事が終わり、シェーンの部屋に向かう。シェーンは先に食事を終え一足先に戻ってしまったので、一人で向かっている。何かすることでもあるのか。
部屋の前についたので、ノックする。
「シェーン様。ビスです。今来ました。」
扉越しに声が聞こえる。
「早いわね。もう少しそこで待っててちょうだい。すぐ終わるから。」
何か慌てている様子だった。しょうがなくシェーンの言う通り扉の前で待つ。
しばらく待っていると扉がゆっくりと開く。それも開いている隙間は少し。
「何してんの。早く入って。」
「は、はい。」
俺は急いで部屋に入る。なぜ待たせたのかすぐにわかった。
いろんなモノが散らばっている。よく見ると見覚えがあるものばかりだった。
誰も部屋に入れない理由もわかる。
「こ、これでも片付けたほうなのよ。そんな目で見ないでよ。」
そんなにひどい目で見ていただろうか。自分ではわからなかった。
「もう、いいからそこ座って。」
そことは?と問いたかったが、おそらくあの椅子のことだろう。その周辺だけ綺麗になっていた。俺は気をつけながら目的地まで進む。シェーンは慣れているからかスタスタ進みベッドに腰掛けていた。それから少しして俺も辿りつき、椅子に腰かけた。
シェーンはなんだか切り出しづらそうにしている。まあ、なんとなく言おうとしていることは予想がつくが。このまま見つめ合っていても拉致が明かないので、自分から切り出す。
「で、どうしたんですか?」
「ディグニの話聞いたわ。・・・その大丈夫?」
やはり。おそらくルトさんから聞いたのだろう。話さないと余計ややこしくなるという判断でそうしたはずだ。王様は自分で伝えようとしたが、ルトさんに“これ以上溝を深くしないでください”とでも言われたのだろう。言った直後どうなるか火を見るより明らかだ。
「ああ、まあ、聞いた時動揺しましたよ。今は不思議と落ち着いています。ディグニのことです、どっかでしぶとく生きてるはずですよ。」
自分に言い聞かせる言葉。そう吐き出すことでそれが真実だと思い込ませる。
そうして落ち着かせるのだ。
「そう、それならいいのだけれど。・・・言いにくいんだけど私は行けないわ。」
シェーンは申し訳なさそうにそう告げた。
「それはわかっています。」
シェーンはもう簡単に感情で動いてはいけない立場になった。あんなことがあってモーヴェ王国を継ぐ可能性が現実のものになっているからだ。まあ、城内には冷ややかな目も存在しているが。不幸中の幸いというべきか国民の支持は多い。国民の前だと猫被ってるからな、シェーンは。
「やらなくちゃいけないことがあるしね。」
辺りを見回している。すると、何を思ったのか俺を見つめてニヤっとしていた。
「それに、あなたにも激励されちゃったし、ね。忙しいったらありゃしない。」
「あはははっ。」
あれを激励と捉えるか。いや、まあ間違いではないのだけれど。なんだか一本取られた気分になる。
「そういうことだから。・・・ディグニのこと頼んだわよ。つべこべ言うようなら、引きずってでも連れ戻しなさい。私が許可する。」
シェーンのそうであって欲しいという願いのような言葉に俺は答える。
「ええ、シェーン様。承知しました。」
そう答えると間髪入れずにシェーンが吐き捨てる。
「うん。あなたにはやっぱり敬語は似合わないわ。溜口に戻しなさい。」
今それを言わなくたっていいじゃないか。俺だってシェーンに敬語を使うのは慣れないのだ。必死で取り繕っているのに。無意識に頭を掻いてしまう。
「わかったよ。死ぬ気で連れ戻すよ。絶対に。それに一言言ってやらないと気が済まないからね。」
無邪気な笑顔を僕に向け、”頼むわね。”そう呟いた。




