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ヒレイスト物語  作者: 瑛
第2部 第3章 ”変化”と
60/176

14-2

 用意を終わらせ宿の外に出る。

 するとすでにモルテが外に出ていた。



「遅いですよ、ビスさん。待ちくたびれました。」



 俺が出てくるのを待っていたらしい。

 しかし、どこから出てきたのか不思議である。

 外に出る道はいつも食事をしているところを通る道1つだけなのにあっていない。


 まあ、部屋にいる時間にすれ違ったってこともあるだろうが、

 部屋の入り口に荷物を置いていたのでそれもない。


 上の方を見る。

 すると、部屋の窓が開いていて、カーテンが窓枠から出たり入ったりしている。



「モルテ、お前どこから出てきたんだ?・・・まさかな。」



 俺は一つの答えを叩き出した。

 ただ、そんなことをするようなやつではないと思っていたのでまだ半信半疑だ。



「ええ、そうですよ。あそこから出てきました。

 絶対に会いたくありませんでしたから。」


 どうやら正しかったらしい。

 口があんぐり開いて塞がらない。頭を抱え込む。



「はあ、お前なぁ。後でリベさんにどやされるぞ。」



「別に構いません。」



 あのリベに怒られるよりも嫌なのか、これは思ったより溝が深い。

 ハウ一人ではどうしようもないように感じる。


 そうはいっても俺が何か言ってどうにかなるわけもないだろうが。

 こんな時どうすればいいんだよ。ねえ、教えてよ・・



「・・・行くぞ。」



「はい。」



「ああ、それと済まないが討伐は昼までだ。

 午後から城に呼ばれていてな。お前はどうする?一緒にくるか。」



「いえ、邪魔してはいけないので遠慮しておきます。」



 いや、別に邪魔ではないが。何を気にしているのだろう。

 それと、一つ言っておかなければいけないことがある。



「一人で外に出ることは禁止だからな。」



「・・・わかってますよ。」



 モルテは俺から目線をはずし、呟くように言い放つ。

 やっぱり言って来たかと、そんな風に見えた。



「いや、わかってないね。俺はハウさんとリベさんからお前を頼まれている。

それが分かった瞬間、俺は王様に報告して、お前をこの仕事から外してもらう。」



 モルテは鼻で笑った。含みのある笑いが出る理由は、俺にもわかる。

 ただ、こればっかりは譲れない。



「高々一傭兵の言葉を王様が聞き入れるなんてさすが英雄ですね。」



「何とでも言え。それともいっそのことハウさんと同じ仕事をするか。」



「・・・ビスさんあなたは嫌な人です。・・・わかりましたよ。」



 これだけ言わないとわかってくれないとは。

 でも、嫌われようがこれだけは言っておかないと駄目だと思ったのだ。

 それに今の状態のモルテを一人にするのはまずいと思った。



「はあ。」



 そのあとは無言で外に向かっていく。外に出ると空気が纏わりついてくる。

 暖かくそれでいて、鋭い空気が。それともう一つ冷たく刺すような空気が。






 午前中の仕事を終え、モルテと別れた。

まあ、あれだけ言えば一人で出ていかないだろう。

モルテは宿とは反対の方向に向かっていく。どこかで時間を潰すのだろう。



「はあ、どうしようか。なあセフォン。」



 私に聞かないでと言わんばかりに顔を背ける。



「ははっ。そうだよな。ごめん。ごめん。」




 セフォンの背に乗って城へと向かう。


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