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何だこれは。ディグニに「着いたぞ。」と言われるまで城があることさえわからなかった。城は、背景に同化している。なぜこんな造りになっているのか不思議でしょうがなかった。
「ねえ、ディグニ。こんな風になってるの?」
「はははっ。これを始めて見たら、そりゃ驚くよな。俺もそうだった。これはな、この王国に敵が攻め込んできた時に城の位置を簡単には把握できないようにこういう風にしているんだ。この国の王様は用心深いからな。こういう造りにしたんだろう。」
「へぇー。」
そういうことなら、この城までの道のりも納得できる。道は登ったり下ったりと入り組んでいて、
簡単には越えられそうにない道のりだった。馬は息を切らしているようだった。よく頑張ったと思う。
城門が自動的に開き、男性の声が聞こえてくる。
「お待ちしておりました。ディグニ様。ビス様。」
名前を言われた瞬間鳥肌が立った。目の前の男性は身なりの整った格好をしており、声も低いが恐怖を感じるようなものではない。むしろ聞きやすい声で安心感がある。彼にじっと見られると、ズシッと大きな岩が頭の上にのっけられているような感覚になる。
「ははは。ルトさん。遅くなってすみません。その、王様の要件というのは・・・。」
ディグニの顔には、汗がつたっている。城門に着くまでの道のりで掻いたものではない。
「これは失礼致しました。要件は王が直接話したいとのことです。おそらくビス様の件とは別件だと思われます。ただ、ビス様のことも把握しておきたいとのことでしたのでお二人を玉座まで私がお連れします。それと馬は預かりますのでこちらに。」
ルトさんは淡々と言う。
「わかりました。」
馬から降りる時、ディグニが「大丈夫か。」と声をかけてくれた。正直気圧されていたが、あまり心配をかけたくなかったから「うん。」と答えた。しかし、疑問が残る。なんで僕のこと知っていたのだろうか。
「多分ハウだろう。ったく、そういうところはしっかりしてるんだよな。」
僕の心を見透かしたようにディグニは言う。後半小声でうまく聞き取れなかったけど、多分ハウに対して悪態をついてるんだろう。
「ビス様。疲れたらおっしゃってください。城まで少々距離がありますので。」
「はい!」
声が裏返ってしまった。
「ふふっ。懐かしいですね。昔のことを思い出します。あまり子どもには好かれない性分なんでしょうね。そんなに怖いですか。」
「はあ、ルトさん。あまりいじめてやらないでください。」
僕が答えられないでいるとディグニが割って入ってきた。正直何を言っていいかわからなかったから助かった。
「おやおや。いじめているつもりはないのですが。私でこれでは、王の御前に立ったらどうなるやら。」
ルトさんの物言いは僕を子ども扱いしておらず一人の大人として扱っているように思う。
誰に対してもそう接しているのだろう。あまり悪い気はしないが、ただ余計自分が子どもであることを突き付けられる。手に力が入る。
「ビス。気にするな。ルトさんは、悪気はないんだ。あの人は誰に対しても平等なんだ。良くも悪くも。ただ、王様の件に関してはどう感だ。俺もいるから大丈夫だ。俺も来る前にちょっと脅すような言い方をしちゃったが、基本王様は優しい。聞かれたことに対して正直に答えれば大丈夫。」
ディグニは、ルトさんには聞こえない声量で僕に言う。
「うん。不安だけど、なんとか頑張る。」
その言葉にディグニがニコッと笑う。なぜか緊張が少しほぐれた。
そうこうしているうちに城の入り口に立っていた。