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ヒレイスト物語  作者: 瑛
第2部 第3章 ”変化”と
55/176

13-2

そして俺は今モーヴェ王国の外にいた。

 モーヴェ王国の周りにいる魔物どもの討伐を行っている。

 俺はそれを行いながらタドへの手がかりが

 見つけられるのではないかと思いこの仕事に志願した。


 その願いは簡単に通った。

 なぜなら、この仕事を志願する者は数える程度しかいなかったからだ。

 この仕事を志願する者は裏では変人扱いされている。

 そんな危険な仕事を自ら志願するなんて、と。





 そしてもう一人、自らこの仕事を志願した数少ない変人が木の陰から姿を現す。





「おう、モルテ。北の方はどうだった。」



「ええ、それはもうたくさんの魔物がうじゃうじゃいましたよ。

 さすがに一人では太刀打ちできません。」


 そうもう一人の変人とはモルテのことだ。ハウとリベの子のあのモルテである。

 直接見たわけではないが、ハウとリベに猛反対を受けたに違いない。

 特にリベは泣きながら訴えていただろう。それでも、モルテはここにいる。

 説得できたのかはわからないが。




「そうか。それにしてもまた魔物の数が増えたな。

 人間よりも多いんじゃないか。」



「怖いこと言わないでくださいよ、ビスさん。

 ・・・でも、その通りかもしれませんね。」



 モルテは肩をすくめ、おどけて見せた。

 ただそれは一瞬ですぐに真顔に戻っている。



「それじゃ。少し休憩したら倒しに行きますか。」



「はい。ビスさん。」



 ああ、それとモルテは俺が魔法を使えることを知っている数少ない一人だ。

 この決断は俺自身がした。モルテに話しても構わないと。

 最初の頃は黙っていたが、一緒に戦うに連れ話しても大丈夫と思い、

 思い切って話してみた。



 モルテの反応は”ああ、そうですか。”という薄い反応であった。

 もうちょっと驚くものだと思っていたが、

 蓋を開けてみればこうもあっさり受け入れていた。



 それが良いことなのか悪いことなのかわからない。それでも、俺は安堵した。

 それに戦いが楽になった。モルテが来る前は別の人と組んでいた。

 その時は片手剣で倒していた。慣れないったらありゃしない。



 レーグル王国でのシェーンとの稽古がなければすぐにやられていただろう。

 そう思ってからはシェーンと時々稽古をするようになった。

 まだまだ、シェーンには敵わないだけど。

 というより強さが化け物じみてきている。


 この間なんて大きな岩をあのレイピアで粉々にしていた。

 驚きで声も出なかった。

 もう、シェーンを怒らせることはできないと思ってしまう。

 下手なことは言わないようにしよう、そう決意した。







 ――――――――



「モルテ突然だけど、聞いてもいい?」


「なんですか?変なことだったらぶっ叩きますよ。」


 恐ろしいことを言う。

 5年前あった時もうちょっと可愛げあったような気がしたが。


 まあ、今のこの態度は少しだけだが5年前も見て取れる瞬間はなくはなかった。

 もしかすると、これがモルテの素なのかもしれない。


 そうだとしたら、ここまでさらけ出してくれていることに喜ぶべきか。

 それとも舐められているのかどっちかだ。


「いや、それは勘弁して欲しい。

 ああ、その、なんだ。なぜこの仕事に志願したんだ?」


 モルテは、伏し目になった。ありゃこれはまずいことを聞いたか。

 ぶっ叩かれることを覚悟した。しかし、そうなることはなかった。


「そのことですか。そりゃ国民を守りたいからに決まってるじゃないですか。」


 当たり障りない答え。嘘だとわかる。

 ただ、これ以上問い詰めたところで本当の答えは返ってこないだろう。

 むしろ俺たちの仲に亀裂が入ること必須だ。問い詰めることにメリットがない。



「そうか。いい理由だな。」


「ええ、そうでしょう。」


 そういうモルテは、遠くを見つめているようで、近くを見ているようだった。


「そういうビスさんはどうなんです。」


「ん。俺か。俺はな・・・モルテと同じ理由だよ。」


「ずるいですね。ビスさんは。」


 モルテは何とも言えない表情をしていた。

 怒っているわけでもなく、けなしているでもない。

 ましてや納得しているわけでもない。ただ、空虚を見つめている。


「それは、お前も同じだろ。」


 俺はニヤっとニヒルに笑ったつもりだった。

 その俺の表情を見てモルテは言い放つ。


「気持ち悪いです。というかそういうのはビスさんには似合わないですよ。」


「う、うるせー。それよりそろそろ討伐に行くぞ。」


 今の表情をモルテに見られたくなく、背中を向ける。



「はい。僕はいつでも大丈夫ですよ。」




 そうして俺たちは敵の討伐へと向かっていった。


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